この映画『河童のクゥと夏休み』はずっと前に予告編で観た際、「絶対泣くから観に行かんとこ」って思っていた映画です。
動物と暮らしてる他の友人ともいつも話すことですが、物語の進行に関係ない何気ないシーンに於いても、動物がちょっとでも不遇な目にあうのを観るのは結構キツイものがあるのですよね。
だから当初はこれはリスト外でした・・・が、しかし、封切りが近づくにつれ気になって気になって・・・。
封切初日の昨日28日(土)、結局観に行ってしまいました。
先着何名かにプレゼントされるというお漬物<キューリのQちゃん>も(河童だけに、ね)しっかりもらってしまいました。
(言っときますがそれが欲しくて行ったんじゃありません。)
story
『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦』などで高い評価を受ける原恵一監督が、5年の制作期間を経て完成させたアニメ大作。児童文学作家、木暮正夫の「かっぱ大さわぎ」「かっぱびっくり旅」を原作に、現代によみがえった河童と少年のひと夏の交流を美しい日本の風景の中に描く。
夏休み前のある日、康一が学校帰りに拾った石を洗っていると、中から河童の子どもが現れた。 第一声から「クゥ」と名づけられた河童は人間と同じ言葉を話し、初めは驚いた家族もクゥのことを受け入れ、クゥと康一は仲良しになる。やがてクゥが仲間の元に帰ると言い出し、康一はクゥを連れて河童伝説の残る遠野へ旅に出る。 (シネマトゥデイより)

私みたいな「オトナ一人観」も多かったけれど子どもの姿も見かけられるいつもとは違うシアター内の雰囲気に気を緩めていたら、いきなり冒頭の「お父さん河童切られる!」のシーンで“泣き”が入ってしまった私です。
しかも心優しい上原康一(声・横川貴大)に拾われて元気を取り戻すまでのクゥが本当に衰弱し切っていて不憫で。
けれどその後は、クゥ(声・冨澤風斗)のあまりの愛らしさと康一の父・上原保雄(声・ココリコ田中)の“ちょっと気弱だけどいい人”振りに頬を緩めつつ観進んでいけます。
そして何が良かったと言って、「康一とクゥの心の触れあい」という単一的なテーマだけではなく、人同士が信頼しあうということ、相手に誠意を尽くすということ、本当の友情や愛情の形、それらが康一を取り巻く日常のシーンの中で大切に描かれていたということです。
普段は忘れてしまっているけれど本当は日常の些細な「人や動物やモノ」との触れ合いの中に大切なものがあるということを、改めて気付かせてくれたことが本当に良かったと思うのですね。
そして負の面では学校でのイジメという子どもでさえもが持つ醜い人間の姿、マスコミの暴力、マスコミが作り上げる世論に付和雷同する人間の愚かさ、そして決して大仰には語られていないながら環境破壊への警鐘も感じられ、泣いたり笑ったりする中でかなり多くの大切なことを再確認させてくれたことが良かったと・・・、「ほんま、原監督ありがとう」と・・・。

泣いたり笑ったりと書きましたが、やはり“泣き”は冒頭シーンだけではありませんでした。
もっと辛く、苦く、苦しいくらいの涙もやはり流さずにはいられませんでした。
それはクゥを助けながらも死んでいく上原家の飼い犬“オッサン”の秘話と、そのオッサンに助けられ父の腕を携え逃げるクゥの姿に、です。
クゥの父を思いやる心には一点の汚れもなく、それだけに、小さくて人間界に於いて孤独な存在でしかないクゥの姿が凄く切ないのです。
乾ききったお皿を自分の唾で濡らし衰弱していきながらも携えた父の腕だけはしっかり放そうとしない、そんなクゥの姿は涙無しには観られません。
そしてオッサン・・・オッサンの前の飼い主のキミ、キミはオッサンを痛めつけたことを今は深く悔いていて欲しい・・・そうでないならキミは地獄に落ちるしかないでしょう。
それから、同級生への理由無きイジメを当然のように繰り返し、少しも悪びれていない少女達。その隠した醜さには、いつか誰かがきっと気付くはず。その前に自分自身で気付いて欲しいと願うけれど・・・。
幾つか心に残る台詞もありました。いずれもクゥやオッサンの言葉です。
「人間は時々おっかないことをする。急に心が変わる事がある。」
「人間だけが嘘をつく。」
「人間は大地や海や風を次々に失くしていって、最後には自分達の心を失くしてしまう。」
いつまでも大自然のままでいるなら今の暮らしは出来るはずもないし、そういう自然破壊の上に成り立った世界に生きてる我々だけど、残しておかなければならないものも有るはず・・・有ったはず。
別にアニミズムを唱えるわけじゃないですが、そこ此処の川や湖、山や木々に、もしかしたら何かが宿っていて「住処を奪わんといて」と言ってるのかもしれません。
それに、最後にクゥが言ったように、住処を奪われた河童が人間に変身して何処かに居たりするのかもしれません。
取り敢えず居酒屋なんかできゅうりの丸かじりをしている人を見かけたら「貴方もしかして河童ですか?」と尋ねてみることにします(そんなメニューがあるとは思えないけど、きゅうりの丸かじりって・・・^^;)
最後になりましたがガレッジセール・ゴリが声を担当してる沖縄・ヤンバルのギムジナーは良かったです!
彼の沖縄弁っていいですねぇ。ネイティブ沖縄だし、声がいいです。
彼がガハハと大声で笑って、あぁこれで本当にHappyなエンディングが迎えられるんだなぁと安心できましたもの。
なかなかの作品でした。
初恋の切なさや、ふと触れた優しさに、本当は死にたいほど孤独だった心をさらけ出して泣いたいじらしさとか、人間の愛すべき部分も描かれていて、温かい気持ちにもさせてくれます。
私は文部科学省の人間じゃないので「夏休みに親子揃って楽しめる映画です。」なんてことは言いません。
ただ、観終わった後に心地よくビールを飲める、そんな映画であることは間違いありません!

・・・で、ビールじゃないけど、泡盛<残波>の水割り。

クゥ再出発はヤンバルの地だし、この泡盛、水で割ると仄かに麹のいい香が感じられて日本酒好きには好適のお酒かと思います。