2013年09月26日

スーサイド・ショップ


 シネリーブル神戸で『スーサイド・ショップ』(パトリス・ルコント監督)観てきました。

パトリス・ルコントがアニメを監督!?と驚いたのでしたが、監督は若き頃イラストレーターのお仕事もされていたとか。なるほど、実写のセンスが得意分野の作画にも活かされるっていうわけですね。

本作、原作はジャン・トューレの小説で、原作が発表された直後に映画化の話がルコント監督のもとに持ち込まれたものの、実写ではそのあまりにダークでリスキーな世界を表現しきれないと、ルコント監督初のアニメーション(しかもミュージカルテイスト!)で映画化が実現したようです。

story
   ジャン・トゥーレの小説「ようこそ、自殺用品専門店へ」を原作に、鬼才パトリス・ルコントがアニメに初挑戦した作品。どんよりとした雰囲気が漂い、人々が生きる意欲を持てずにいる大都市。その片隅で、首つりロープ、腹切りセット、毒リンゴといった、自殺するのに便利なアイテムを販売する自殺用品専門店を開いているトゥヴァシュ一家。そんな商売をしているせいか、父ミシマ、母ルクレス、長女マリリン、長男ヴァンサンと、家族の誰もが一度たりともほほ笑んだことがなかった。人生を楽しもうとしない彼らだったが、無邪気な赤ちゃんアランが生まれたことで家庭内の雰囲気が少しずつ変わり始め・・・。
                       
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                  ※story、画像とも、映画情報サイトより転載させて頂きました。



 なるほど、アニメでなければこの世界は画的に“危険極まりない”ですねー。
ビルから飛び降りる人間がたくさん映し出される冒頭。 スーサイド・ショップに並べられるありとあらゆる自殺アイテム。お買い上げのお客様の後を付け、願望成就?を見届けるヴァンサンとマリリン兄妹。
「PG12」の意味がこれほどダイレクトに身に沁みる作品も珍しい。
とはいえ「アニメ」「PG12」とあっても、私的にちょっと看過しがたい場面があって、正直言ってそのシーンには微かな不快感を伴わないわけではありませんでした。アランのすっとぼけた可愛さが救ってくれましたが、あの一連のシーンに付いては自分なりに納得もしたいのでいつか原作小説を読んでみたいと思う今です。

店主ミシマの「ミシマ」って「もしかして三島由紀夫?」と思っていたのですが、鑑賞後シアター内に貼り出されている資料を読んでみてなるほどと思いました。
ミシマは三島由紀夫、長男ヴァンサンはフィンセント(ヴァンサンは仏語読み)・ファン・ゴッホ、長女マリリンはマリリン・モンロー。
皆、自殺を遂げた著名人なのですね。夫人のルクレスの記載は無かったのでネットで調べてみたら、どうやらルクレスはルクレティウス(死によって人間の不幸は消滅すると説いた哲学者)らしいです。ふーん、勉強になりました。
それで、ルクレスやヴァンサン、マリリンは、アランの影響を受けて変わってゆくのが見ていてよく分かるのですが、ミシマは“さすがはミシマ”の筋金入り。その辺りは、理念に裏打ちされての自殺であった三島由紀夫のイメージが踏襲されているのでしょうか。ファミリーが笑顔と前向きな人生を取り戻しながらも、このミシマだけは最後までシニカルでブラックな一面を残していました。


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私的にはマリリンのキャラが一番好きで、人生を投げている様子が見ようによってはアンニュイな感じでもあり、情緒不安定さが愛しくも感じられました。
月灯りだけの部屋で彼女がアランからプレゼントされたピンクのスカーフで踊るシーンは、コミカルなのにそこはかとなく官能的で、ここはルコント監督らしさがいっぱいでした!(『髪結いの亭主』を思い出しましたよ。)

ファミリー4人のキャラはキョーレツですが、「アダムスファミリー」ほどに毒で満ちてはいません。
意外とアラン。彼がミシマを笑わせようとトランポリン上で繰り返したパフォーマンスは“まんまブラック”で、考えたらこのアランが実は一番毒をはらんでいたのかも・・・なんて、ちょっと曲がった視点での感想でした。


アニメーションは映像も色彩も独特の雰囲気を放ち、日本のアニメとはまた違った魅力を感じることができます。
灰色に染まっていた街が明るく変わるんだからハッピーな想いで劇場を出ればいい、とは思います。やっぱり売るなら毒りんごより出来たてアツアツの甘〜いクレープのほうがいいに決まってますし。
でも、そしたら死によって辛苦から解放されたいと願っているどん底の人たちはこれからどうしたらよいのでしょうね。私は頭が固いのかな、、、彼ら(自殺願望者)が救われたわけではないのでちょっぴりの複雑さも残りました。


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  ルコント監督は本作でとにかく「人生は美しい!」ということを伝えたかったとか。
久々のJazz Bar Wishy-Washy さんでの Wishy-Washy(オリジナルカクテル)、やっぱり美味しい!

私は手放しで「人生は美しい」とはとても言えませんが、こうして美味しいお酒をいただいているこの一瞬は間違いなく“美しい”です。
ぴかぴか(新しい)




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2013年09月18日

橋本関雪展


  兵庫県立美術館に「橋本関雪展」を観に行きました。

マリー・アントワネット展の時にも記しましたが、県美はJR灘駅から徒歩で南へ15分(弱)と少し距離があるのですが、時々妙に懐かしくなり、また訪れてみたいと思わせてくれます。背後に広がる神戸の海景色と、コンクリートの無機質で近代的な佇まいとの“妙”がそういう想いにさせるのでしょうか。それに、思い出したように興味深い企画を掲げて下さいます。(毎回じゃないところがミソです。)

今回も開催を知ってから楽しみにしていた企画です。
兵庫県ゆかりの日本画家、橋本関雪(1883-1945)の生誕130年を記念しての開催です。


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開催初日に行きましたが、思った以上に空いていてゆっくりと楽しむことができました。

橋本関雪は漢学に造詣が深く、中国の古典文学や故事を題材にした作品が多いですが、晩年は写実主義に傾倒し意欲的に取り組んだのが動物画で、私も初めて関節の作品を知ったのが犬や猿を描いた作品だったと記憶しています。
『玄猿』などは有名で、みなさんも一度はどこかで目にされたことがあるのではないでしょうか。
また、一匹のボルゾイと、背後に牡丹の花を配した『唐犬図』(二曲一双)の右隻の画などは、「犬」を描いて溜息が出るほどの気高く清澄な美しさを感じさせて、素晴らしい画だと思います。


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展示作品の多くを占めたのは、やはり中国古典を題材にしたものと新南画といわれるジャンルのものでした。
『木蘭』(六曲一双)の画は、中国の奥深い山中の一風景を描いたものであるのに日本人の私にも郷愁を感じさせる不思議な魅力があります。
また、題材としての「故事」に改めて興味を抱いたのが、作品『邯鄲炊夢図』です。唐代小説「枕中記」のなかの「邯鄲の枕」という故事をテーマに六曲一双の屏風に描かれています。他の作品以上に物語性を感じる画です。

この故事は以下のような内容です(ウィキより転記させて頂きました)。  ご存知の方も多いと思いますが。

***** 趙の時代に「廬生」という若者が人生の目標も定まらぬまま故郷を離れ、趙の都の邯鄲に赴く。廬生はそこで呂翁という道士(日本でいう仙人)に出会い、延々と僅かな田畑を持つだけの自らの身の不平を語った。するとその道士は夢が叶うという枕を廬生に授ける。そして廬生はその枕を使ってみると、みるみる出世し嫁も貰い、時には冤罪で投獄され、名声を求めたことを後悔して自殺しようとしたり、運よく処罰を免れたり、冤罪が晴らされ信義を取り戻ししたりしながら栄旺栄華を極め、国王にも就き賢臣の誉れを恣に至る。子や孫にも恵まれ、幸福な生活を送った。しかし年齢には勝てず、多くの人々に惜しまれながら眠るように死んだ。ふと目覚めると、実は最初に呂翁に出会った当日であり、寝る前に火に掛けた粟粥がまだ煮揚がってさえいなかった。全ては夢であり束の間の出来事であったのである。廬生は枕元に居た呂翁に「人生の栄枯盛衰全てを見ました。先生は私の欲を払ってくださった」と丁寧に礼を言い、故郷へ帰って行った。*****

「邯鄲の枕」(「邯鄲の夢」とも「黄粱の夢」とも)は能の演目としても有名なようですが、たとえば、あの世から甦った故クロサワ監督がモノクロームで撮ってくれたとしたら、或いは、『ユメ十夜』の幾作品かのように若き監督さんが現代風にアレンジして演出してくださったとしたら、きっと面白い映画になるような気がしました。

そんなことを考えながら、いつものように絵葉書を何枚か買って会場を出ました。


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  焼酎を「お湯割りで」とオーダーするのはいつ頃でしょうか。
写真のこの日はまだまだ「水割りがいい日」でした。 麦焼酎の水割り、お通しの青菜と共に。




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2013年09月14日

アップサイドダウン 重力の恋人


 劇場鑑賞は『スタンリーのお弁当箱』以来だから約2ヶ月振りです。
久々にゆっくり足を運ぶことが叶って、テアトル梅田で『アップサイドダウン 重力の恋人』(フアン・ソラナス監督)観てきました。

「二重引力」の世界という設定に興味津々だったのと、ヒロインのキルスティン・ダンストをもう一回スクリーンで観たいなぁという思いからこの作品をチョイス。この女優さんは以前は殆ど興味がなかったのですが、昨年観た『メランコリア』で一気に興味深い御方となりました。

story
   太陽を周回し、真反対に引力が作用する双子惑星で、貧困層の住む「下の世界」の少年アダムは、富裕層が暮らす「上の世界」の少女エデンに恋をする。互いの世界を行き来することは固く禁じられていたが、2人は人里離れた丘で交流を深めていた。しかしある日警備隊に見つかり、アダムはエデンを逃がそうと誤って彼女を上の世界の山頂に落としてしまう。10年後、成長したアダム(ジム・スタージェス)エデン(キルスティン・ダンスト)が生きていることを知り、2つの世界をつなぐ「トランスワールド社」に入社しエデンとの再会を試みるが・・・。

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                    ※story、画像とも、映画情報サイトより転載させて頂きました。


   何といってもやはり映像に魅せられました。
オープニングからして、二つの異なる世界(光きらめく高層ビル群が広がる世界と、廃墟のような暗い街並みが続く世界)が上下真逆の位置にスクリーンいっぱいに広がり、観る者の平衡感覚を一瞬失わせます。不可思議で幻想的なムードに期待は高まりました。

真逆の重力。
先ず物理的に相容れぬ二つの世界。加えて、富裕と貧困、支配する者とされる者、搾取する側とされる側、という隔たり。互いの世界に身を置く男女が交わることなど永遠に不可能に思えるのですが・・・出会って恋に落ちてしまうのですねー。

エデンを追い求めるアダムには文字通り“命がけ”の苦闘が続きます。上下の世界を唯一つなぐトランスワールド社に入り込むも、完璧な上下社会の隔離システムと逆引力の存在がアダムの行く手を幾重にも阻みます。

不屈のアダムがとにかく一途で可愛い。
演じるジム・スタージェスは、私的には『アクロス・ザ・ユニバース』のジュード役が印象に深く、本作でも同様に、共存する若さ(情熱)と繊細さを見せてくれていて好感が持てます。

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下の世界に生まれ家族たちを上の世界によって奪われたアダム。人生を捨てても不思議はない身の上ながら、「希望は捨てない」というシンプルだけど尊い彼の意志に素直にエールを送らずにはいられません。
「上の世界ではみんなが幸せなんだよね?」と問う下の世界の子どもたちに、上の世界を垣間見たアダムが「・・・そうでもないよ」と答えるシーンはさりげなく胸を突きます。物質的豊かさだけでは満たされぬものは確かにあるのですよね。
映像に先ず魅せられる本作ですが、ユーモラスでおとぎ話的ワールドの中にしっかりしたメッセージも織り込まれていたと感じました。
                    
ちょっと残念だったのは、終盤の展開がたたみかけるようだったこと。安易にコトが運び過ぎた感が否めず、ちょっと物足りないかなぁという消化不良感が残りました。
でも映像のファンタジーを楽しんで、そのあたりは自分なりに咀嚼すると致しましょう。(←こういう納得の仕方もかなり“たたみかける”ような感じですけど)

秘境の地に立つ丘。
二つの世界の重力が交わる無重力のような空間で、大きな月をバックにアダムとエデンがくるくる回りながら口づけを交わす画は素敵でした。

私のような「お独りさま鑑賞」でも勿論ワクワクドキドキで楽しめましたが、カップルでデート映画としてもピッタリなのではないでしょうか。かわいい



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  さてさて、独りサク呑みシリーズ(いつからシリーズになったん??)の第?弾。
新梅田食道街の某店(名物料理<エッグ>のあるお店)でのフォアローゼズのハーフロックとソーセージとキャベツの煮込み。このあと更にワングラス呑んで滞在時間は30分。
先客だった常連氏が近くで購入されたプリンを差し入れて下さったのですが、このプリンが絶品で!一口戴いて思わず「美味しい〜!」と叫んでしまったほど。ご購入されたお店は阪急百貨店内のどこかでしょうか。聞けばよかったけれど聞かず仕舞いでした。ちょっと探索してみます。

めでたく発見出来たらブログに挙げさせて頂きますね。お酒以外に、たまにはスウィーツの画像もいいかも、ですね。





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2013年09月10日

春樹インタビュー集 そして、原田宗典さんのこと


   本日10日は村上春樹・編訳の『恋しくて』(中央公論新社 9編の翻訳短編と春樹の書き下ろし短編一作『恋するザムザ』を含む)の発刊日。

ジュンク堂・堂島アバンザ店には既に昨夕から2F入口直ぐの書架に華々しくディスプレイされていました。竹久夢二の美人画による装丁があだっぽさと異色の雰囲気を書架周辺に放っていました。
そんな昨夕、私はそのディスプレイを見つつも先にこちらの一冊、『夢を見るために毎朝僕は目覚めるのです』(村上春樹 文春文庫)を購入しました。
昨秋の発売じゃないですか、これ。 知らなかった不甲斐ない私。

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※こんな内容
  村上春樹が語る村上春樹の世界。19本のインタビューで明かされる、いかに作家は生まれたのか、創作のプロセスについて―。 公の発言が決して多くない村上春樹は、ただしいったんそれに応じるや、誰にも決して真似できない誠実さ、率直さをもってどこまでも答える。2011年6月に行われた最新インタビューをオリジナル収録。(←文庫解説を転載させて頂きました。)


  結構分厚い本です。小説とはまた違ったダイレクトな春樹さんの言葉の響きを、一頁一頁楽しみに感じていきたいです。
幾つかの作品が相関する過程にも触れられているのでしょうか、そのへんも楽しみでワクワクしていますす。『恋しくて』はもう少し先の楽しみに取っておこうかな、と思います。


  さて、この本の購入と前後してショッキングなニュースをネットで知りました。
作家・原田宗典さんが覚せい剤と大麻所持で逮捕された、と。実は少し前に原田さんの『黄色いドゥカと彼女の手』を久々に読み返したところでした。
原田さんは、彼の作品について拙ブログでも過去に「牡蠣の塩辛、山本文緒、・・・そして“誰かの心の痛み”」「黄色いドゥカと・・・今宵の透明な一杯」という記事タイトルで挙げさせて頂いていて、それなりに思い入れのある作家さんでした。何冊かの短編集やエッセイも読みました。
ネットで「逮捕」の文字が目に飛び込んできた時、「何故?」という問いのあとに「もしかして」と真っ先に浮かんだのがイケナイコナとイケナイクサのことでした。原田さんの小説やエッセイを読んでいて、何となくそういう(心の)線の細さみたいなものを感じていたからです。
悲しいです、とにかく、残念です。
もしも原田さんが今いる世界が鬱屈した闇だとしたら、手足に絡みついたものを断ち切って、脱出してほしいです、そこから。 原田さんの作品に触れさせてもらった一ファンとして、今はそれを願ってやみません。



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  最近、外でワインを呑む機会が続きました。
こちらは大阪マルビル1Fの<アルバータ・アルバータ>での一景です。
タパス6種盛りでぐいぐいワインがすすみます。

お酒が合法でよかった・・・すみません、でも正直な、切実なる心のつぶやきです。





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2013年09月02日

コメント承認制導入のその後


  先日、コメント・TBを承認制にさせて頂いた拙ブログですが、何故かその承認プログラムが作動したりしなかったり・・・。何より、本来の排除目的だった商業コメントが承認プログラムをスルーして自動的にアップされてしまう状態です。改善方法を模索している今ですが、もし改善できなければブログサーバーを他社に変更することも視野に入れております。
今しばらくはこのまま不完全ながら承認制を続けていく予定ですが、皆様には何かと御面倒をお掛けすることと存じます。ご了解頂き、変わらずご投稿頂けることを切に願っております。 ぺろんぱ拝




                               
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