2019年06月14日

幸福なラザロ    でもあの涙は悲しみの涙だったはず… 


 シネリーブルにて『幸福なラザロ』(アリーチェ・ロルヴァケル監督)を観ました。

最近は良作との出会いが続いていて期待値が高まっていた中での鑑賞でしたが、本作も然り。
鑑賞前に抱いていた何となくのイメージが“いい意味で覆される”流れも同じ・・・というか、本作はその最たるものでした。
また一つ佳い作品に出会えました。

Story
時は20世紀後半。イタリアの小さな村で純朴なラザロと村人たちは、小作制度の廃止を隠蔽する侯爵夫人に騙され社会と隔絶した生活を強いられていた。ところが夫人の息子のタンクレディが起こした誘拐騒ぎをきっかけに村人たちは初めて外の世界へ出ていくことになる。だがラザロにある事件が起き・・・。
                                       (映画チラシより)

                      ラザロ - コピー.JPG                 

 ラストシーンでクシシュトフ・キェシロフキ監督の『デカローグ』を思い起こしました。「塵芥の中で悔い改めよ」という言葉が印象深い映画です。
神の存在を意識する本作・・・そういえば「ラザロ」とはキリストの友人の名でしたっけ。

映画の冒頭部に挿入される「ある狼のお話」はこの作品の展開に繋がっていくものでした。
ただ人を信じ人の喜びに触れたかっただけの無垢なラザロに、誰も真には寄り添うことをしなかったのですね。
搾取されることから解放されて村を出た人々にはまた別の過酷な定めが待ち受けていたという、そんな皮肉な現実が苦く描かれる後半ですが、そんな彼らにもラザロは優しい眼差しを向けます。
しかしラザロの想いは届くようで届かず、哀れなまでに愚かで悲しい村人たちの姿は今の世を生きる我々そのものだと言われているような気がして、だから最後に「塵芥の中で悔い改めよ」の神の言葉が聞こえた気がしたのかもしれません。

ラザロが月明りの下で流した一筋の涙はあまりに悲しく、しかし神々しいまでに美しかったです。最も胸を突いたシーンでした。


映画の中盤にこの作品の世界が大きく変わります。ヴェールを脱ぐようにふわりと、そして鮮やかに。
「ああ、こういう映画だったのか!」と思わず膝を打った瞬間でした。

登場するあの狼はキリストの化身?キリストの使者?なのでしょうか。
ラザロを見守りその行く末を見届けようとした狼が、ラザロの魂を神のもとに返してくれるとよいのですが。

ラザロを演じたアドリアーノ・タルディオーロのあどけなさの残る顔立ちと天使的な体躯が全編に柔和な優しさを醸し出していました。

人知を超える世界に一気に昇華したラストにはただただ静かに圧倒されました。



                        ガクアジサイ - コピー.jpg

 紫陽花が美しい季節ですね。
こんな奇麗な花を眺めながらきりりと冷えた白ワインを飲むのもいいですよね。

アルコール画は美しい花に代えて今回はお休みです。
呑むのは変わらず“毎日”呑んでいます、酔うが為に


posted by ぺろんぱ at 20:08| Comment(4) | TrackBack(0) | 日記