2019年09月13日

フリーソロ     アレックス・オノルドという人


  シネリーブルにて『フリーソロ』(エリザベス・チャイ・ヴァサルヘリ、ジミー・チン監督製作)を観ました。

高さ975m断崖絶壁。ロープなし、素手で登り切る。
フリーソロ・クライミングの若きスーパースター、アレックス・オノルドを撮ったドキュメンタリーです。
私には生涯通じて実際に体験することは「絶対ない」と言い切れる世界。本作はドキュメンタリーということで、そこに実際に生きる人を見てみたい…と思ったから。

Story っていうか 解説
  世界で著名なクライマーの1人として活躍するアレックス・オノルドには、1つの夢があった。それは、世界屈指の危険な断崖絶壁であり、これまで誰もフリーソロで登りきった者はいない、米カリフォルニア州ヨセミテ国立公園にそびえる巨岩エル・キャピタンに挑むこと。この前人未到のフリーソロのために幾度の失敗と練習を重ねてきたオノルドは、2017年6月3日、ついにエル・キャピタンへの挑戦を開始する。
   ※映画情報サイトより転載


                        フリーソロ チラシ.JPG


ドキュメンタリーということで、とにかく淡々と映像と語りが進んでいきます。

勿論ラスト20分の映像はすごいです。断崖絶壁をロープなしで登る、超人業としか言いようのない姿に間近で迫り続けるのですから。

しかし観終わって暫くして最も心に残るのはアレックス・オノルドという一人の人間への畏れに近い気持ちでした。

アレックスはいつも至極冷静でいます。
撮影クルーとの会話も、インタヴューで過去の恐怖体験を語る時も、恋人と過ごしている時でさえも。
彼自身が「登るために感情を鍛える。何事にも感情的にならないように。」と語っていますが、鍛えてきたから今の彼があるのか、彼自身の中に感情を抹殺できる素地があったのか。
とにかく私はアレックス・オノルドという人間を形成しているものに凄く興味を持ってしまいました。

「フリーソロには感情に鎧が要る」(アレックスの言葉)

親との関係が少なからず作用していたようにも感じました。
ご両親は離婚されていますが、父親は非常に気難しい人でハグの習慣の全くない家族だったとアレックスは語っています。彼の心の中にある「底知れぬ自己嫌悪がフリーソロをやる原動力にもなっている」とも言っていました。

恋人との関係性にも微妙な空気を感じました。
至極冷静に相手との距離を保っているようにみえるアレックス。クライミングを「恋人よりも優先する」と全く躊躇することなく言い切る彼は「(恋人も含め僕の周りの人間は)僕が死んでも、いっとき悲しむんことはあってもフツーに生きていくだろう」とも言っています。
そして「(滑落すれば破滅するが)いつ死ぬかわからないのは誰でも皆同じだ」とも。


とても冷静で、そしてとても強い。


表現している言葉に「きっとそうなのだろうなぁ」と私も頷きながら、それでも彼の中に人為の及ばぬ世界を感じてしまうのでした。アレックス・オノルドという人に、心的に触れたくても触れることは許されないような。

そんな彼が挑んだエル・キャピタンのフリー・ソロ。
これはもう実際に映像で観て頂くしか無いと思います。凄すぎて私は逆に恐怖を感じなかったです。それくらい、現実感を超えたものだったということです。

終始淡々と語り、ソロの最終ピッチでは撮影クルーに「よう相棒!」とまで笑顔で声をかけたアレックス。地上900mの垂直上で素手で岩につかまりながら、ですよ。

MRIによる脳検査によればアレックスは「常人よりもより強い刺激にしか反応しない脳になっている」とのことでした。それは訓練ゆえのことか否かはわかりませんが、とにかく彼の挑戦が成就したことに心から拍手を送りたいです。そしてやはり後には、畏れにも似た感情が最も強く残ったのでした。


白いエル・キャピタンの岩肌にアレックスの着る赤いTシャツの色が岩場に咲く花みたいに奇麗で不謹慎にも見とれてしまっていた自分がいました。

エンドロールで流れる楽曲が、それまでの作品のトーンと違ってやたらに“熱かった”のがちょっとしっくりこなかったです。

アレックス自身による語りが多かった本作ですが、低音の、とてもよいお声をされていました、アレックスさん。


                        Tya  生ビール小 - コピー.jpg

残暑厳しかった9月前半でした。
まだまだキンキンに冷えたジョッキで饗される生ビールが嬉しいですね。





posted by ぺろんぱ at 20:28| Comment(2) | TrackBack(0) | 日記