2020年01月17日

ある女優の不在     風に舞う白いチャドル    


  シネリーブルで 『ある女優の不在』(ジャファル・パナヒ監督)観ました。
チラシは持っていたのですが実はちゃんと読んでいなくて殆ど予備知識なしで鑑賞に臨みました。

ドキュメンタリータッチですがフィクション、しかし描かれている内容(イランの、しかも未だ辺境の地に生きる女性たちの苦悩)は事実なのですよね。

イランという国の、未だ深い闇のようなものに触れて、しかしそこで暮らす人々(とりわけ熟年の男性たち)にとってはそれは闇ですらない当たり前のことなのだということも知って、改めて遠い異国に生きる同性たちに思いを馳せるのでした。

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Story
  イランの人気女優ベーナーズ・ジャファリのもとに、見知らぬ少女から動画メッセージが届く。その少女マルズィエは女優を目指して芸術大学に合格したが、家族の裏切りによって夢を砕かれ自殺を決意。動画は彼女が首にロープをかけ、カメラが地面に落下したところで途切れていた。そのあまりにも深刻な内容に衝撃を受けたジャファリは、友人である映画監督ジャファル・パナヒが運転する車でマルズィエが住むイラン北西部の村を訪れる。ジャファリとパナヒは現地で調査を進めるうち、イラン革命後に演じることを禁じられた往年のスター女優シャールザードにまつわる悲劇的な真実にたどり着く。                          ※映画情報サイトより転載



何となくイメージ的にアッバス・キアロスタミ監督の世界を想起させる作品なのでしたが、イラン映画だからかなぁと思っていたらなんと、このパナヒ監督が学んだ映画の師がキアロスタミ監督だったそうです。小さな嬉しい驚きでした。


原題は「3 faces」ですが「ある女優の不在」は上手く練られた邦題だと思いました。
時代を違える3人の女優たちの、それぞれの“不在”の時が描かれています。
女優として生きたいという未来の夢を奪われた少女マルズィエ
現在に有名女優として名を馳せるジャファリ
スターでありながらイラン革命により女優人生を断たれた、慟哭の過去を持つシェールザード
3人の運命と三者三様の“不在”の意味が独特の長閑さを持つ村の空気の中で静かに交錯していきます。

村のいたるところに在る「長く曲がりくねった道」がまるで彼女たちの人生を象徴しているかのようで、自分の墓を掘って横たわる老女とか男性の性の儀式にまつわる話やシャールザードによる詩の朗読など、本作は観念的な側面を持つ作品であると至るところで感じることになりました。

権力の移行により自身の将来を断たれても一人の女性として尊厳をもって生きることを選んだシャールザードですが、本作の大きな核となっている彼女の姿がほんの一瞬、後ろ姿しか登場しないというのもミステリアスな感じでした。

三人の女性がどこへ向かうのか。
言葉では語られず終わりますが、個の信念を貫きしなやかに生きていこうという決意が希望の風と共に感じられたラストでした。


ジャファル・パナヒ監督。
彼自身、時の政府に抗う映画を作ったことで文化的活動を禁止される命令を受けながら不屈の姿勢を貫いている映画監督だそうです。本作を観るまで知りませんでした、勉強になりました。イラン革命のことも実はよく分かっていません、少し調べてみたいです。



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劇中には紅茶を飲むシーンがよく出てきました。生活に馴染んだ紅茶文化の国なのでしょうね、日が暮れた夜にも紅茶での語らいの場が映されていましたねー。
掲出画は紅茶だけでは夜を越せない呑んべえ私の「今年初のジントニック」の画です。


あの日から25年の今日。
終わったこともあり、始まることもあると思います。
祈りたいです。



posted by ぺろんぱ at 21:06| Comment(2) | TrackBack(0) | 日記