2020年05月05日

最後の家族 (本 再読)    自分が決めるということ


 皆さんそれぞれの苦しい状況の中、どうぞ身体と心を大切になさってください。
各方面でご尽力くださっている方々には本当に感謝の思いです、ありがとうございます。


 今回のコロナ禍では今まで自分が知らなかったことを知り得ることも多いです。
そうかそんなところにまで弊害が出るのか…ということから始まってその世界で生きてきた人たちのこれまでの頑張りやこれからの苦難とか…。
そしてその苦境を知ってそこに役立つモノや事柄を生み出そうとしてくれる人たちの存在も。
例えば少し前のことですが、聴覚に障害を持つ方々がマスク装着のままでは相手の微妙な唇の動きが読めないということで透明なマスクが発案されて使われ始めているということとか…小さく流されていたニュースで知って心動かされたことでした。



  前回本のことを書いてから読了本は3冊。
そのうちの一冊は再読本ですが村上龍の『最後の家族』(幻冬舎)です。久々に読み返しました。

最後の家族 - コピー.JPG

引きこもりの長男を軸として父、母、妹のそれぞれの家族の思い、崩壊と再生が描かれています。
龍さんの他作品に多く描かれているヴァイオレンス色の強い世界とは一線を画す抑えられた柔らかみさえ感じる筆致の本作ですが、同じ事象が家族四人それぞれの視点で連なって描かれ続けるところには独特の執拗性、攻撃性みたいなもの(いい意味で言ってます)も感じてああやっぱり村上龍の小説だなぁって思います。

「傍にいる(ある特定の)相手を救いたいという思いが支配につながる」という一文は衝撃的です。
「自分が相手から自立することが結果的に最もその人間を救うことになるのだ」の主張は真理であると理解できても冷静に実践することは難しいことかもしれません。近しい者との関係性に於いてはともすれば相手を救いたいという思いが先行してしまうから。けれどやはりそれだけではダメなんですね、救いたいという思いは相手を対等に見ていないということになってしまう。「共依存」という言葉も登場しますがそこに陥ってしまってはいけないということなのですね。

妹の知美が自身のイタリア行きを逡巡する場面で独白のように語った「決めるのは自分自身だ」の言葉は非常に強く胸を突きます。
ラストはそれぞれがそれぞれの自立を成すのですが、それぞれの決断や変化が心地よいほど爽やかに描かれていて希望が見えるのでした。

これ、過去にドラマ化されたみたいですが私は観ていません。
どんな風に演出されているのか、もしもいつか再放送されたら観てみたいです。



空と緑 - コピー.jpg
 空の青と樹々の緑


こんな時期だからでしょうか、マンションで住人の小さな男の子と遭遇した際にマスク越しではありますがクシャっとした笑顔で「こんにちは!」って言われた時は何だか凄く嬉しかったです。私からも「こんにちは!」。 そして心の中で「ありがとう、元気でまた逢おね!」。

緊急事態宣言は5月末までの延長ですね。
京都・大阪・兵庫は特定警戒府県に該当していますので概ね変わりない今後と覚悟します。
風薫る季節ですが、少しづつでも事態が良い方へ向かうことを祈りながらその季節を静かに感じる日々です。



posted by ぺろんぱ at 19:37| Comment(2) | TrackBack(0) | 日記