2022年11月27日
妻への家路 ( BS.松竹東急 録画鑑賞 )
BSはNHK/プレミアム以外も時々番組欄をチェックしていて、最近 BS松竹東急の【よる8銀座シネマ】で地味に良い映画をやってくれているのに気付きました。
で、先日11月21日放送の映画『 妻への家路 』( チャン・イーモウ監督 2014年制作 )を録画して観ました。
チャン・イーモウ監督とコン・リー(主演女優)のタッグとのことで、これは観ておきたいなと。
< story >
1977年、文化大革命が終結し、収容所から解放されたルー・イエンチー(チェン・ダオミン)は、妻のフォン・ワンイー(コン・リー)と再会する。しかし、夫を待ちわびるあまり、その心労から記憶障害となっていたワンイーは、イエンチーを夫だと認識することができなかった。イエンチーは、いつか妻の記憶が戻ることを信じて、他人として向かいの家に住み始めるが……。( ※映画情報サイトよりの転載です。)
切なさがぎゅ―っとくる一方で、どこか満たされた気持ちにもなったラストでした(いきなりラストに触れてごめんなさい ですが)。
これ、もっと文化大革命の頃の状況を絡めて描かれていたら歴史大作的な映画になったのだろうと感じますが、そうじゃなくて、あくまでその後の夫婦、そして娘を含めた家族の姿を淡々と描いた作品になっていました。一度壊れた家族の、再生のあり方として。
勿論、夫、妻、娘それぞれの人生が当時の政治思想に革命終結後もずっと翻弄され続けたことは否めず、妻には望まぬ過去があった(夫が獄中にいる間に党幹部の男性と不本意な何かがあった)ことも仄めかされており、娘も母親との確執や自責の念に駆られ続け、思想家ではなかった彼女の人生も大きく変わってしまったことなどは容易に伺い知れました。
でもその動乱の様というより、動乱の後の 一つの小さな家族 の時間の経過を静かに追い続けた描き方って良いものだなぁと感じました。
※画像は映画情報サイトより
感想の冒頭で「切なさ」と書いたのは、三人の思いがいつか報われると思っていたから。
「どこか満たされた気持ち」と書いたのは、ある意味 三人が寄り添って生きてゆけている今があると思えたから。ベストではないけれど、限りなくそこに近い、互いが互いを真に思い合っている姿がそこにはあったから。
この病は、心因性のものでないものも含めてそれまでの自身の人生や家族の状況や様々な要素が症状に絡んでくるものと私は思っています。百人いれば百通りの症状がある、と。
妻フォン・ワンイーには一瞬、ほんの一瞬、微かにでも記憶が蘇った瞬間があったと信じたいです。
好天の今日、紅葉は陽の光を浴びて輝いていました、近隣の散歩コースにて。
今日は猫たちには会えず・・・。
2022年11月14日
西村賢太小説を2冊
時折前を通る、全国展開している某大手予備校が入るビル。
1Fエントランス横に立てられている大きな看板には、「 夢は逃げない。逃げるのはいつも自分だ。」と書かれています。
前を通る度その看板を眺めては、「そりゃそうだけど…そりゃそうだけど、そんなこと正面切って大上段に言われてもなぁ。」と思います。「そんなこと言われんでも分かっとるんじゃ。」とも思います。
ここにやって来る青少年たち、きっといろんな思い(例えば勉学以外の悩みも)を抱えているはずで、それでも勉強をやり続けなきゃいけないと(生きていかなきゃいけないと)このドアをくぐって来るのだと思う・・・そんな彼らの背中をそっと 頑張れよ と押してやる優しさはないのかと思ってしまうのですよね。私は独り身で子どももいないから甘いんでしょうか。
でも「 夢は逃げない。逃げるのはいつも自分だ。」って大人の我々にも、否、大人の我々だからこそ一層グサッと刃が刺さる感じのセリフですよね。
このビルの前を通るときは今まで逃げの人生だったと思う自分にはイタい瞬間です。(と言いつつ結構前を通ってますが。)
西村賢太さんの『 一私小説書きの日乗 』を読了後、やはり氏の小説を読んでみたくてこの2冊を選びました。
図書館での予約で2冊ほぼ同時に手元に届いてしまいました。
『 二度はゆけぬ町の地図 』( 2010年刊行、短編集 )と『 苦役列車 』(2011年刊行)です。
「苦役列車」は皆さんご存じの芥川受賞作品ですが、タイトルに惹かれるものがあって先ず「二度は…」から読み始めて読了し、今は「苦役列車」の序盤です。
「二度は…」に関しては、自分が勝手に想像していた氏の小説世界とは正直言って違っていました。いきなりのカウンターパンチを受けてばかりで。「苦役列車」でもそのパンチは続いていますが、私小説とされていながら主人公への 一線を画した客観的描写 があって不思議と引き込まれてしまうところがあります。
光明が見えてくるのか来ないのか、端からそんなものなんて無いのか、今はまだわかりません。でも、怒涛の勢いでページを繰らせてくれる作家氏ではありますね。とてもパワフル。
先週の日曜日の夕景。
はっと息をのむ美しさを感じて思わずスマホで撮影しました。
続けて4枚撮ったのですが、刻一刻とその様を変えるこの夕景で一枚目と四枚目のそれは全く違った表情のものでした。写真4枚撮る間のたった30秒ほどで、自然の迫力を感じてしまった私でした。