2023年01月29日
雑感 2023.1月
10年に一度と言われた今回の最強寒波、いつもの景色が一変した朝でしたね。
電車が止まると心配する一方で、見慣れぬこの雪景色が何かを変えてくれるんじゃないかと窓外に向けて祈ってみたりもしました。
実家帰りの昨日、ふと見上げた空に浮かんでいた雲。
なんとなく鯨の形に似ていて、先日天に召された 淀ちゃん を思い出しました。
そういえば淀ちゃんが逝って海への埋葬が決まった翌日に友人Kちゃんから「クジラ雲をたくさん見た。空から淀ちゃんを迎えに来たんかなって思ったよ。」っていうメールが来たっけ。 淀ちゃん安らかにね。
今読んでいるのは昨年12月に刊行された、伊集院静氏による『 旅行鞄のガラクタ 』(小学館)です。
<こんな本>
伊集院静氏が旅先から持ち帰ってきた品々への思い出を綴ったエッセイ集。全日空グループの機内誌『翼の王国』誌上で連載されたスペイン、フランス、ポルトガル、スコットランド、アイルランド、ベルギー、イタリア、エジプト、ケニア、アメリカ、中国、日本など12カ国の34話を収録。 (※情報サイトより転載)
本となった形で伊集院さんの作品を読むのは私は初めてかも。
未だ読み始めたばかりですが、静謐な印象の文章の中に、唯一無二の ‘旅の手触り感’ みたいなものが感じられます。写真も素敵です。少しずつですが、何となく心を落ち着かせるためにもページを繰っています。
いろいろ思う事ばかり抱え込んでしまって(難儀な性格)、行きたいと思っているのに中々足を運べていない『 歌人 安田青風展 』(姫路文学館で開催中)。
街角の掲示板に同展の告知ポスターが貼られていて、そこに掲載されていた短歌にとても惹かれたのでした。
ー みづからの歩幅で歩くほかはない 道にさく花たんぽぽ・すみれ ― (安田青風)
会期終了までに行ければよいのですけれど。
2023年01月15日
「 無人島のふたり 120日以上生きなくちゃ日記 」に思ったこと
この本、年末に読み終えてから 中々再びは向き合えずにいました。
さりとて書棚にしまい込んでしまうこともできず、この辺りで一度きちんと思ったことを綴って改めて サヨナラ を言わせて頂こうと思いました。
<こんな本>
「お別れの言葉は、言っても言っても言い足りない。これを書くことをお別れの挨拶とさせて下さい――」思いがけない大波にさらわれ、夫とふたりだけで無人島に流されてしまったかのように、ある日突然にがんと診断され、コロナ禍の自宅でふたりきりで過ごす闘病生活が始まった。58歳で余命宣告を受け、それでも書くことを手放さなかった作家が、最期まで綴っていた日記。(※情報サイトより転載)
ハードカバーを開いて冒頭の6行で一旦めげてしまったことは昨年書いたことですが、診断時に既にステージ4bだった膵臓癌の闘病記とあって内容そのものは辛いものでありながら、読み始めると山本文緒という作家の魅力が過酷な状況描写の中にも満ち溢れていて、改めて‘読ませる作家’なのだなぁと感じました。
そうは言いつつ、完膚なきまでに叩きのめされる苦痛の日々や、自分の人生のエンドを告知されながらも調子の良い日にはその先があることを期してしまう、その両方の思いの狭間に、読んでいる自分自身も置かれてしまうことに耐え難くなった時も多かったです。
貫かれていたのは文緒さんの‘書かずにはおられなかった’思いでした。
それが作家としての性なのか、私にはどのような断言もできませんが、崖の上に立っているような状況を時にユーモアさえ滲ませて綴られている文章のどれもが、掛けがえのないものに感じられたのは確かです。
一昨年の訃報で亡くなられた日は知っているのに、、、読んでいるところが既に最終章に差し掛かってるのに、、、残るページ数もごく僅かと分かっているのに、、、まだこの日記が続くような気がしてしまいました。
だから、9月29日(水)の日記の次のページをめくった時、10月4日(月)の5行の日記のあとはそのページも次のページも全部余白で・・・その時私電車の中だったんですけれど、泣きました。 ※2021年10月13日、山本文緒さんは永眠されました。
最後に一つ言えるとしたら、無人島に「ひとり」じゃなくて「ふたり」でよかったですね、ということです。支え見守ってくれた夫氏への「ありがとう」の想いが行間にすごく感じられていましたから。
山本文緒さま。あらためまして、たくさんの物語を届けてくださってありがとうございました。
思うところあって 先の連休中にふらりと訪れた明石城址でのお堀の一枚。
年に二、三度訪れますが、姫路城と違って観光客はあまりいないので静かにゆっくり一人歩きができるのです。
他にたくさんいた鳥たちの中でこの二羽が、何度となく互いに行く先々ですれ違ってたので撮りました。 通じ合うものがあったのかな…。
2023年01月03日
2022年 を振り返って
2023年が明けましたね。今年もどうぞ宜しくお願い致します。
例年通り、年が明けてからの‘昨年の振り返り’とさせて頂きます。
劇場での新作映画鑑賞は本当にもうブログタイトルを変更しないといけないくらいの体たらくで(昨年も同じこと書いてましたが)3回のみ。別途、DVDやBSなどでの旧作鑑賞は(再鑑賞作品も含めて)約20作品程度でした。
体調が芳しくなかったこと(今も少し)もありますが、それについては早く忘れ去ってしまえるようにと願います。
旧作でも自分にとっては初鑑賞だった映画や、本やTVのドキュメント番組などについて書き残しておきたいことなどを記します。
■ 映画 ■
旧作映画ですが出会えて本当に良かったと思えた、昨年一番印象に深く残ったのは10月16日にブログに挙げた『 セントラル・ステーション 』です。
今日はその他に、ここに挙げていなかった他の鑑賞旧作品についてちょっとだけ書かせて頂きますね。
一つは『 帰ってきたヒトラー 』(ダーヴィト・ヴネント監督 2015年制作 BS松竹にて)で、これは公開時にドイツがヒトラーをコメディーにするなんてと物議を醸した映画でしたが、私にとってはちっともコメディーなんかじゃなく凄く怖かった作品でしたね。主演のオリヴァー・マスッチがもう途中からはヒトラーにしか見えなかった。
ヒトラーが本物であると気付いた女性の台詞「あの時と同じよ、あの時も最初はみんな笑っていた」、そしてヒトラー自身が聴衆を前にして言った「私は君たちの心の中にいる。だから消えない。」の台詞が今も忘れられません。
もう一つは『 ベンジャミン・バトン 数奇な人生 』(デヴィッド・フィンチャー監督 2008年制作 NHK・BSプレミアムにて)。
ブラッド・ピットの映画は結構見ていると思うのですが何故か拙ブログでは挙げていないみたい。
ブラピファンの某女性と『 ジョー・ブラックをよろしく 』ってイイ映画ですよねーと盛り上がる機会があって、それ以後なんとなくブラッド・ピットのことが(彼が失顔症という病をカミングアウトしたこともあって)以前にも増して気になっていたのでした。
F・スコット・フィッツジェラルドによる原作は短編ですが(未読です)、たっぷりの哀切感と短い青春の煌きとともに巨編に仕上げられた映画です。ストーリーテラーでもあるデイジーを演じたケイト・ブランシェットはさすがの存在感で、大好きなティルダ・スウィントンもとても素敵でしたが、やっぱり主演のブラッド・ピットの魅力が大きい作品だったと思います。バイクを駆るシーン(特に赤のインディアンでの)は本当にクール!
愛する人と共に老いてゆける幸せは得られず、共有できる時間のあまりの短さが悲しすぎて・・・だから妻と娘を残して姿を消したベンジャミンの行動が私としては悔やまれ、しかしそうせざるを得なかった彼の精神状態も私としては解りたいと思うのでした。
■ 本 ■
昨年ラストに読んだ故・山本文緒さんの闘病記『 無人島のふたり 』はやはり辛く、衝撃でした。
この本については改めて別の日に綴りたいと思っています。
■ 2022年の ドキュ72 ■
昨年に続いて今年もNHKの『ドキュメント72時間 』から。
恒例で12月30日には「視聴者が選ぶBEST10」発表がありました。
1位作品は、これがそうなるだろうなぁと思っていた回(「どろんこパーク 雨を走る子どもたち」)でしたが、幼い子供たちにとっても生き辛いこの世の中で、彼らなりに前を向いて行こうとしている姿が鮮烈でした。
りんたろうクンが死なないでいてくれてよかったし、ケイスケくんもケイスケくんのお母さんも‘何処かへ消えて’しまわずにいてくれてよかった。
5位だった「ゆめまぼろしのテーマパークへようこそ」は私としては‘推し回’でしたが、BEST3に入るより5位くらいの方が丁度よい存在感かも、です。
私的には BEST10には入っていなかった好もしい回も他にありましたが、それはそれで心の中で密かに支持していようと思います。
今年も「ドキュメント72時間」、楽しみです。
■ そして、、、ヒロシのぼっちキャンプ ■
以前にいっとき観られなくなっていたのですが、そのあと放送再開、以来ずっと録画して観ています。
黄昏から夜の火を焚く風景は勿論イイのですが、朝靄に包まれた翌朝のテントでちょっと‘兵どもが夢の跡’的なヒロシさんの表情と毎回変わるエンディング曲がなかなか良くてやっぱり見続けてしまう番組です。
でもいつか、撮影スタッフさんもいない、誰かに見せることも意図されていない、‘本当のぼっちキャンプ’のヒロシさんを見てみたい気がします。
2023年、皆さんにとって 笑顔になれることが一つでも多くなる一年でありますように。
