2023年04月16日
街とその不確かな壁(村上春樹新刊)、そして 横尾忠則企画展のこと
村上春樹さんの6年ぶりの長編となる小説『 街とその不確かな壁 』が13日、新潮社より発売されました。
発売初日にJ書店で買い求めました。手に取るとずっしりと重い一冊でした。
これは1980年に文芸誌「文學界」に発表し書籍されなかった中編小説『街と、その不確かな壁』を、約40年の時を経て春樹さんが書き直し生まれ変わらせた長編小説と銘打たれています。
1980年に出されたものは後の長編小説『 世界の終りとハードボイルドワンダーランド 』(1985年)の原型と言われていて、拙ブログで以前に書いたことですが、私はこの『 世界の終りとハードボイルドワンダーランド 』が春樹さんの長編小説の中では今を以っても最も好きな作品ですので、今回この一冊をとても感慨深く手に取りました。
楽しみに、しかし静かな心持ちで少しずつページを繰ってゆきたいと思っています。いろいろあったけれど、そういう感覚が戻って本当に良かったと思っています。
桜の花も散って、これからは青葉が美しい季節ですね。
友人Nちゃんが招待券を送ってくれていて、『 横尾忠則展 満満腹腹満腹 』(横尾忠則現代美術館)に行って来ました。
開館10周年を記念してこれまでに開催された企画展をダイジェストで振り返るものです。
2020年の『 横尾忠則の緊急事態宣言 展 』で初めてこちらの美術館を訪れていて私にとっては約2年半ぶりの横尾忠則ワールドです。
今回は過去の様々な企画展での作品が集められ 氏がいろんな視点から創作した作品たちが一堂に会されており、まるで大きなオモチャ箱に入り込んだみたいで面白かったです。創作の「苦悩」ではなく「喜び」みたいなものがダイレクトに伝わってくるような、そんな世界でした。
新たな発見だったのは、氏が涅槃像に魅せられ、偏執的とも評されるその収集癖によって世界各地から実に約600体もの涅槃像が集められてきたということ。
説明パネルによれば、氏は「其々の涅槃のポーズに、崇高なものと通俗的なもの、死ぬことと生きること、の表裏一体の関係性」が見えると捉え、それがまさに「横尾作品に通底する特徴」になっているのだとか。様々な涅槃像が所狭しとケーズに収められていた最後のブーズは不思議に深い世界でした。Nちゃん ありがとうね。
あと二週間ほどで今年も1/3が終わることになるのですね。
年月が経つ早さを何かにつけて実感するなんて若かった頃にはなかったはず。
物事はいつも自分が想像する(想像できる)更に一歩も二歩も先の向こうで形を成していってる気がするので、この先どんなことが待ってるのかは全く分かりません。ただ、おそらくもっともっと日々が早く過ぎてゆくであろうことは確か。大事に過ごしたいと思います。
2023年04月02日
グッバイ、レーニン! ( BS録画鑑賞 )
桜が満開の週末でした。
録画していた、BS松竹東急で3月21日放送の『 グッバイ、レーニン! 』( ヴォルフガング・ベッカー監督 2002年制作 )を鑑賞しました。
< グッバイ、レーニン! story >
1989年、ベルリンの壁崩壊直前の東ドイツ。青年アレックスは、10年前に父が西側へ亡命したため母と暮らしていた。母は反動から社会主義体制のこの国に強い愛国心を持っていたが、アレックスは密かに反体制デモへ参加し警察と衝突。それを偶然目撃した母はショックで心臓発作を起こし昏睡状態に…。ドイツ統一の数ヵ月後、奇跡的に目覚めた母へ致命的ショックを与えないよう、彼は統一の事実を隠すべく、あらゆる手を尽くす。(※下記画像とも映画情報サイトより転載 )
コミカルに描かれていますがとてもシリアスな物語。
この「ベルリンの壁崩壊」以外にもきっと、世界のあらゆる地で今も自分の想像など及びもしない出来事がどこかで起きているのであろうと思わされました。
この物語は、母が深く傷付くこと ただそれだけを阻止したいと奔走する息子アレックス(演じるはダニエル・ブリュール)の物語ですが、逆に、その母親が隠してきた真実によって彼と姉アリアーネが深く傷付くことになってしまったことは皮肉でした。父親の亡命の本当の背景を今になって知ることになった姉弟が、父を恨んだ過去の年月を取り戻すことは決して出来ないのだから。
一連の騒動はアレックスのフィアンセ、姉夫婦、母親の同僚・知人を巻き込んで「そこまでするか?」というところまで展開してゆきます。
コトの本質は実は国のあり方じゃなくてこの家族、殊に母とアレックスのあり方なのじゃないか?と何度も思いましたが、「そこまでする」ことの意味が、関わった人たち全ての中に‘それぞれに’あったのかもしれません。
結局は、それらの行為が為したのは ‘余命少ない母に安寧をもたらせた’ ことより ‘家族や友人たちの絆を深めてくれた’ ことに他ならないのだと感じました。一番大切なのは残された者の心に何が残ったか、ということなのだ…と。
アレックスの同僚で西側出身のデニス、東側の元宇宙飛行士・ジークムント・イェーン、この二人の存在が個人的にはとてもよかったです。いいえそういうなら、騒動に加わった家族や仲間はみなそれぞれ独特の魅力を秘めた好もしい人たちだったと思えます。
レーニンの銅像がヘリで吊るされて何処かに運ばれてゆく映像は、当事国の人間ではない私にも不思議な感慨がありました。
前回とは別の友人とまた違ったカフェへ。カフェミーティングもなかなかいいものだなぁと思います。
私はカフェモカをオーダーしましたが、もっと甘いのかなと思いきや意外とビターな味わいで美味しゅうございました。
ビターなモカの味わいを楽しんだ後歩いた散策路には白っぽい花びらの桜が・・・。
でもよく見るとやっぱり薄桃色のソメイヨシノなのかな。
この時この樹の下には桜耳にカットされた黒猫ちゃんが一匹佇んでいて、画的にはサイコーの癒しの場でした、ありがとう。