2023年09月10日
愛は静けさの中に ( BS.P 録画鑑賞 )
BS.プレミアムで録画していた映画『 愛は静けさの中に 』(ランダ・ヘインズ監督 1986年制作)を観ました。
聾唖学校に赴任した教師とそこで働く聾唖の女性との愛を描いた作品で、原作は『小さき神の子ら』という舞台戯曲とか。ヒロインを演じたマーリー・マトリンは実際の聾啞者で本作でアカデミー主演女優賞を受賞したそうです。
ウィリアム・ハートは何作品か観ましたが、実は一番最初に彼をスクリーンで観たSF映画『 アルタード・ステーツ 』が印象深い俳優さんです。本作はその7〜8年後くらいの作品でしょうか、昨春お亡くなりになられましたが「アルタード…」も本作も、ハートさん、若いです。
<story>
片田舎の聾唖学校に赴任したジェームズ・リーズ(ウィリアム・ハート)はそこで働くサラ・ノーマンという若く美しい女性(マーリー・マトリン)と出会う。頑なに心を閉ざすサラを救おうとするうちに彼女を愛し始めたリーズはサラに愛の告白をする。ふたりは順調な同棲生活を始めるのだが…。(※映画情報サイトよりの転載です。)
出会いは運命的瞬間でした。
サラはとにかく尖っていて振舞いも粗野なのですが、それを帳消しにしてしまうくらいの美しさで、恋に落ちてしまうリーズの気持ちがよく分かります。柔らかい月の光が差し込む夜更けのプールで、何かから解き放たれたように伸びやかに泳ぐ全裸のサラが本当に美しい。
互いへの気持ちが高まって二人は暮らし始めますが‘現実’が少しずつ影を落としてきます。‘できる’と‘できない’との境がはっきりと二人の間に隔たりを作ってゆくのが観ていて苦しい。その最たるシーンと感じたのは リーズが多忙な日々のなかで大好きなバッハを20分だけ聴きたいとレコードに針を落としソファに身を横たえたところ。まもなく彼は針を戻し苦し気にこう言います。「君が聴けないものは楽しめない」と。
リーズがサラに求めた自立する生き方も、その時のサラにとっては心の底では望んでいながらもきっと怖かったのだろうと思うのです、闘いの俎上に自分の身を置くことが。時間がまだ少し足りなかったの気がして、その行き違いは切なかったですね。
幾許かの時を経て二人は再会します。かつては二人の間に激しく交わされていた熱情が、静かで穏やかな、それこそ月の光のように柔らかいものになっていて、二人の間に育ちゆく確かなものを感じました。
サラが一歩前に踏み出す形で、そしてリーズがそれをそっと見守る形で 二人が再び結ばれるであろう未来に、愛はやはり 強さ なのだと改めて思ったのでした。
雲の輪郭が薄くなってきました。
先日の夕刻、帰り道。若い男の子が一人で路上ライヴをやっていて、コブクロの「桜」を歌っていました。
切なくて、でもいい歌ですよね。男女の恋心を歌った曲なのかもしれませんが、小さなエピソードが幾つか重なって 私はこの歌を聴くといつも母のことを想います。
そういえばCDを持っていたんだ、と自宅で夜、ラックから引っ張り出して聴きました。「 人はみな心の岸辺に 手放したくない花がある それはたくましい花じゃなく 儚く揺れる一輪花 」っていうところが特に好きです。
路上ライヴの弾き語り男子、聴かせてくれる歌声でした、ありがとう。