2008年01月27日

テラビシアにかける橋

 26日(土)、選択の一本はこれになりました。
『テラビシアにかける橋』(ガボア・クスポ監督)、109シネマズHAT神戸にて。

寒かったけれど好天で頬にピリリとくる風も心地よく、映画の後は海を少し眺めて帰りました。このHAT神戸のすぐ南側には海に面して兵庫県立美術館がありますが、現在(19日から)公開中のムンク展のPRが大きくされております。
昨日は映画、次にここに来る時はムンク展です。
               ムンク.jpg

さて映画。
「すべての子供たちへ。そしてかつて子供だった大人たちへ・・・」のキャッチコピー。子供の視点には戻れなかったけれど、大人として学ぶところのあった作品。
story
国際アンデルセン賞を受賞したキャサリン・パターソンの同名ベストセラー児童小説を映画化。
いじめられっ子の少年と風変わりな少女が空想の王国テラビシアを作り上げ、友情を育んでいく姿を描く。
女兄弟ばかりの貧しい家庭で育った小学5年生のジェス(ジョシュ・ハッチャーソン)と、引っ越してきたばかりの個性的な少女レスリー(アナソフィア・ロブ)。学校を牛耳るいじめっ子のターゲットにされてばかりの2人はやがて親友同士となり、近所の森に美しい空想上の王国“テラビシア”を作るが、そんな二人にある日突然の悲劇が降りかかる・・・。(シネマトゥデイより)

                 前チケ.jpg           
  両親共に作家で個性的に育てられたレスリーと貧しく特別の愛情もかけられず暮らすジェスは、一見すれば違うステージにいるようだけれど、共に級友達と馴染めないというある種の「マイノリティー」としては引き合うものがあったのでしょう。そしてレスリーは文才、ジェスは画才という、共に“その他大勢組”とは一線を画する世界を持つという点でも共通しています。そんな二人が急速に仲良くなり、二人だけの秘密の王国を築くという点は面白いです。
終始レスリーに引っ張られる形ではあるにせよ、その王国で培った勇気を現実世界で少しずつ発揮させていこうとするジェス姿も微笑ましく感じられました。

けれど「空想の王国」を描いたファンタジーとしては特筆するものはなかったように思います。
現実の世界が(学校にも、ジェスにとっては家庭にも、)安息の場でないなら、あの王国はもっともっと輝く魔力を秘めた世界に描いて欲しかったなぁと子供の視点に戻れなかった私は残念に思ってしまいました。
               terabishia.jpg                
この映画が光るのは終盤、(ネタ晴らしになってしまいますが)レスリーが逝ってしまってから、ですね。

単なる喪失感だけではなく、自責の念に駆られるジェス。大人も子供も、苦しむ時は同じなんだって思いました。いえ、気持ちを誤魔化せたり紛らわせたり、責任を転嫁する術を知らない分、子供には大きく重たい枷となるのでしょう。どうしたら地獄に落ちられるかと問うジェスの姿には胸が熱くなりました。

そして、周囲の人々が差し伸べる手。
意外な人間が意外な形で寄り添ってくれるのですが、それがジェスを再生へと導いてくれるのです。
日頃彼らをイジメていた上級生の女の子は、悪意のある他の級友からジェスを守ろうとし、口煩いだけの中年女教師は自らの経験に根ざして「忘れようとしなくていい、泣きたい時は泣けばいい」と不器用ながら優しく諭してくれます・・・。
一番苦しいと思う時に、その相手にどう向き合えるか・・・本当の思いやりや優しさが問われる時かもしれません。
私的にはこの女教師のシーン、静かな感動に包まれました。

そして、厳しく冷たいだけのように感じていた父親。
「あの子(レスリー)にもらったものがあるだろう?それを大事にしろ。そうしたらあの子はずっと生き続けられる。」
大きな父性愛を感じる一言
でした。

結果的にはこの父の言葉でジェスがレスリーの遺志を継いで更なる王国を築くっていうジェスの成長の物語なのですが、周囲の大人達、そして観る側の我々にとっても学ぶ事のあった映画じゃないでしょうか。
そして願わくば、あの王国が現実からの逃避の世界で終わることなく、ジェス君には悲しみを乗り越える強さを持った、本当の意味で優しく逞しい人間になってもらいたいものです。
               テラビシア.jpg                 
 レスリー役のアナソフィア・ロブ。
『チャーリーとチョコレート工場』でブルーベリーにされちゃったあの女の子ですよ。あの頃より少し成長した彼女ですが、もう本当にキュートで、他の出演者が霞んでしまうくらいの輝きを放っています。アナソフィアちゃんの映画って言っても過言ではないくらいです。
それから、後で分かったことですが、父親役がロバート・パトリックなのです。
映画を観ている最中、「私この俳優さん、どっかで見た事ある・・・(近所のスーパーでってことじゃなく)←(当たり前!)」って思っていたのですが、映画の後でチラシをじっくり読んでみると「ロバート・パトリック(ターミネーター2)」と記されていまして。「あぁっ、T−1000だったのね!」と膝を打つ思いでした。
何しろ『T2』の時は“一つの表情”しか見れてなかったもので・・・少しお年を召されて、それなりの人生疲れも感じさせる味わいある表情の人になっておられました。何より“人間”でしたから、今作品では^^;。

 そんなこんなを思いつつ・・・、胃痛で数日飲んでいなかったお酒ですがやっぱり映画の後はしみじみ飲みたいものですねぇ。
昨日のところは軽く赤ワインで飲酒リハビリ
<アラン ブリュモン コート・ド・ガスコーニュ> 濃いながら、力強いというより複雑な深い味わいのある、コスパ大の赤です。
 
               ブルモン.jpg

 アナソフィアちゃんの『チャーリーとチョコレート工場』といえば「デップ様のお歌」も聴きに行きたいところなのですが、ミュージカルということと「意外にグロさが炸裂」というレヴューを見聞きするに至って暫し遠巻きに見ている不甲斐ない私です。しゅん。

posted by ぺろんぱ at 13:19| Comment(4) | TrackBack(1) | 日記
この記事へのコメント
リキッドメタル親父に

ガムをかみ続ける少女

何かキャスティングだけに注目すると、スゴい違和感を覚えますね(⌒〜⌒ι)

ワタシはこの週末、京都に奈良に、(お寺を)歩きまくりでした。

そうこうしてる間にも、どんどん上映作品が切り替わってゆく〜(×_×)
Posted by TiM3 at 2008年01月28日 00:30
 TiM3さん、ようこそです。

>ガムをかみ続ける少女

そーなんです!それがね、レスリーがスクールバスの中でジェスに「食べる?」って感じでガムを差し出すシーンがあって、「これってもしかしてウケ狙い?」とまで思ってしまいました。・・・そんなわけはないですよねぇ・・・いえしかし妙に印象に残ってしまいました、あのシーン。

因みにジェス君は『ザスーラ』に出ていた男の子です。

お寺めぐりの週末、それはそれで良き週末だったのではないですか?
でも最近は映画(特にアート系の)の上映期間って短いですよね。(T_T)
Posted by ぺろんぱ at 2008年01月29日 06:34
こんばんは!
今年の初めからテレビでおすぎが、例の調子でわーわー騒いで「泣いてくださいッ!!」ってCMがあんまり流れるもんだから、
実は少し引いちゃってたんです(笑)
でも行って良かったです〜☆

現実世界の敵は姿を変えて森で彼らを襲う。でも、
そのキャラクターも解かりやすかったし、
これは本当は子供のほうが理解できる物語かも知れないという気がしました。
彼らの目線にまで立ち戻った、制作者側の包み込むような愛情を感じた作品でした・・・☆
Posted by kira at 2008年02月06日 18:15
Kiraさん、こんばんは。
私もあのおすぎさんのCMには閉口気味でした。
それ以上に「絶賛」的なレヴューもあり踊ってしまった感がありましたが、私的には子供達の目線にまでは下がれなかったみたいです。

>これは本当は子供のほうが理解できる物語かも

そうなのかもしれません。
でもオトナなりの??感じ方は出来ました。(^_^)
差し出してくれる「愛」はありましたね。
Posted by ぺろんぱ at 2008年02月06日 20:51
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Excerpt:               この橋を渡れば、またきみに会える― 原題 BRIDGE TO TERABITHIA 製作年度 2007年 製作国 地域: アメリカ 上映時間 95分 原作 キャサリ..
Weblog: to Heart
Tracked: 2008-02-06 20:50