2008年02月02日

ぜんぶ、フィデルのせい

 2月最初の週末の本日2日(土)、シネカノン神戸で『ぜんぶ、フィデルのせい』(ジュリー・ガヴラス脚本・監督)を鑑賞。
この映画、どうしようかと迷っていて、結局「観に行く!」って決めた後の週末には上映回数が大幅にカットされ、いつもの梅田ガーデンシネマではレイトのみ、このシネカノン神戸では10時20分からのモーニングショーのみとなって・・・。
猫事情でレイトには行けないため、久々のシネカノン神戸での鑑賞となりました。

シネカノン神戸は掛かってる作品もいいし、シアターの“どこか自由で緩い雰囲気”も含め結構好きな映画館なのですが、ここはJR神戸駅のすぐ近くにありまして、JR神戸周辺は結構“ディープ”だったりするわけでして・・・。
今日も駅から劇場へ向かう道すがら、いきなり<ブラックニッカウィスキーの水割り缶>を飲みながら歩いているオジサンに遭遇しまして・・・。
例えばそれは「工場勤務などで仕事明け」という風情でもなく、凛と冷えて冴えた朝の空気の中、全くもって“ご機嫌さん”の赤ら顔のオジサンのブラックニッカ香を真正面に受けて歩いた私でした。
私もかなりのアルコール好きですが、さすがにこの時間はまだ温かいコーヒー喫茶店の方がいいですね^^;。
そんなこんなでシネカノン神戸へ・・・。

前置きが長くなってしまいました、すみません。
それもこれも全部、『ぜんぶ、フィデルのせい』のせい

story
  9歳の少女アンナの目線から、激動の70年代を見つめたヒューマンドラマ。共産主義に目覚めた両親のせいで、上流階級の暮らしに別れを告げなくてはならなくなった少女の心の機微がユーモラスに描かれる。
 1970年代のパリ。弁護士の父(ステファノ・アコルシ)と雑誌記者の母(ジュリー・ドパルデュー)を持つアンナ(ニナ・ケルヴェル)は、名門のカトリックスクールに通うお嬢様。しかし、スペインで反政府活動を行っていた伯父の死をきっかけに、父と母は社会的良心に目覚め、アンナと幼い弟を残してチリへ旅立ってしまう。(シネマトゥデイより)

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ある意味“ご都合主義的”な大人たちに翻弄されながらも、真っ直ぐにモノゴトを見つめ、自分自身にとっての正義・真理を見つけていこうとするアンナの成長振りに清々しさを感じ、喝采をおくりたくなる作品。

ご都合主義と書いたのは、やっぱり人は皆「自分は正しい」と思ってモノを言うから。
経済論、宗教論、世界の成り立ちのことなど、次々に変わるメイドの「お話」でアンナはその都度違う世界観を押し付けられます。
フィデル・カストロは頑ななまでの無神論者だったと聞いていましたが、キリスト教との相容れない思想は映画でも繰り返し描かれていて、アンナは大好きだった宗教学の授業にも出られなくなってしまいます。
でもメイド達も宗教学の先生も、みんな自分が正しいと思ってアンナを自分達の世界へ導こうとしている・・・つくづく、この世は人間達が後付けした似非真理で満ちているんだなぁと、ご都合主義のオトナの一人である私は深い溜息に見舞われます。

チリに行って「目覚めた」というアンナのパパ(後に彼なりの苦悩が浮き彫りになるが…)も、それに同調してやがては女性解放運動にも目覚めていくママも、余りに性急で子供達に対して説明不足に過ぎます。
自分達が思想を変えたのは漲る正義感と真理の追及に他ならないかもしれませんが、一切合財を投げうって有無を言わさず子供達を巻き込むのも「ご都合主義」と言えなくはないですか?
生まれもっての「プロレタリアート」で、子守唄代わりに「富の分配論」を聞いて育ったようならすんなり受け入れられるでしょうが、いきなり家が狭くなって食べ物が不味くなって、休日も家族とお出かけすらできなくなるなんて、私が子どもだったとしてもきっとイヤです。
                 フィデルの.jpg

だけどアンナちゃんは偉い!

嘆き悲しむだけじゃなく、彼女にっての真理は何かを探ろうとしています。
「団結」と「人真似」の違いを経験で学び、モノを売って手っ取り早くお金を得る方法は、実は不公平な格差を生むことだと教わり、キョーサン主義に偏見を持つ同級生には「なによ、赤ちゃんの作り方も知らないくせに!」と応酬したりします。

苦境に負けず、長いものに巻かれず、アンナちゃんの「目」でモノゴトを見極めていくのです。
「動物と自由論」のくだりはリアルで深い示唆に満ちていますが、それをアンナちゃんなりに咀嚼していく様子は非情に興味深いですね。
そういう成長の過程を得られたということで言えば、彼女のパパとママが突然共産主義に目覚めたことも彼女の人生にはプラスになったのかもしれません。
彼女はきっと、モノゴトを自分で考え、判断し、選択していく逞しい女性に育つでしょうから。
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彼女があのまま裕福な家庭でさして問題意識も持たずに育っていたなら、決して一緒に遊ぶことのなかったであろう子たち。その子たちと手を取りあって輪を作るラストシーン・・・しなやかな生き方ができるアンナちゃんに“カリスマ性”を見ました。
案外、彼女は女フィデル・カストロになったかもしれませんね。


 小気味よい作品を鑑賞したあとは、この時期に私的イヴェントとして恒例の<京都/八坂→円山→知恩院 詣で>に京都へ向かいました。(昨年も書きましたが宗教的背景はありません。)
ちょうど八坂神社は節分祭でたいそうな賑わい・・・舞台では舞いも披露されていました。このことはまた機会があれば別枠で綴ってみたいです。
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 さて、やっと“元に戻った感”のあった今週、美味しいハードリカーを求めて北新地 Jazz Bar Wishy-Washyの扉を叩きました。
出会えましたよ、美味しいダーク・ラムに。

何故ダーク・ラムかと言いますと・・・時折オーダーさせていただくママさん手製の<アイリッシュ・サワーブレッド>が今回はオーブンから出たての焼きたてでして・・・たっぷりのラム酒で漬け込んだレーズンを使用されていて一口含むと華やかなラム酒の香が際立ち、そのラム香に誘われるようにお薦めラム酒をオーダーしてしまったというわけです。

その名も<パンペロ・アニバサリオ>
<パンペロ>って我がハンドルネーム「ぺろんぱ」とちょっと似てますが、このラム酒の<パンペロ>とは<大草原を渡る風>の意とか。 
                ラム・パンペロ.jpg

ボトルは可愛い感じですが、横に置かれている皮袋に包まれて売られているとか・・・中々の貫禄と言えませんか?
味わってみると、こんなに「ダーク・ラムって美味しいんだぁ」と感じたのは初めてだったかと思うほどの美味しさです。
とてもまろやかで仄かに甘いバニラ香がし、それでいてパワーのみが前面に出ることのない、何杯でも飲めてしまいそうなラム酒でしたぴかぴか(新しい)

 こんなふうに好きな時に好きな地を訪れて散策し、好きな時に美味しいお酒を楽しめる、そんな「自由」は失いたくないですね。





posted by ぺろんぱ at 21:51| Comment(8) | TrackBack(3) | 日記
この記事へのコメント
ばんはです。

先週末に「京都ぶらぶら旅」をしました☆

知恩院(←地恩院と書くのはまつがい)ってば三門の上に昇ったんだけど、まだ昇れたかな?

明日は元気があれば、映画に1本行っときたいですなぁ。

ではっ。

※アンナパパ・・と言っても「辰夫さん」ではないんですね(⌒〜⌒ι)
Posted by TiM3 at 2008年02月02日 23:53
TiM3さん、こんにちは。
おっとぅ!ご指摘ありがとうございました!早速修正入れました。
京都とは長い付き合いの私ですので「単なる変換ミス」ってことはご了解下さいね。
しかしアップ後は大抵誤字脱字のチェックに一度読み返しているのですが・・・スルーしてしまっていたみたいです(>_<)。

この道行きはふとしたことがきっかけで始めてもう16年目になります。
本堂での黙考が心を穏やかにしてくれます。
三門の上?どうでしょう・・・多分「期間限定」の公開だと思いますが。

今日は生憎のお天気ですが、TiM3さんにおかれましては何処かの映画館で珠玉の一本をご鑑賞のことかと・・・・。
またレヴューを楽しみにしております。

※アンナパパは勿論、「格付けチェック」で最後には画面から消えちゃうようなあのヒトではありません。^^;
Posted by ぺろんぱ at 2008年02月03日 12:03
アンナ役のニナ・ケルヴェルの可愛さ・美しさ・利発さといったら!!感動すら覚えましたです。そして、弟がまた別の意味で可愛いこと、可愛いこと。
重いテーマのようでいて、結構エンターテイメントしているっていうか、映像的にも楽しめるし、そこはかとなくコミカルな感じもあって、ひょえーって間に見終わっていて、なかなかえぇやんえぇやん、て感じ、ちゅうか・・・。(何のこっちゃ)
てなわけで、自分が観た映画でのぺろんぱさんのブログを読んだときにこそ、よりいっそうその表現力に敬服しますねん。(自分はこんな風にはよう書けん!)(キッパリ)

ーご都合主義的な大人たち云々ー おっしゃるとおり。 ぺろんぱさんはやっぱりしぶい人です。

あと、和久本みさ子さん(映画評論家)(自分は知りませんが)て方が、ーアンナはこうして、まず、”視ること”、そして”知ること”が、恐怖や孤独から自分を救ってくれる重要なモメントであることを知っていくーていうどっかで読んだ文章も心に残りました・・・。
Posted by ビイルネン at 2008年02月03日 15:38
ビイルネンさん、こんばんは。
そうですねぇ、弟・フランソワのあの素晴らしき順応力と理解力が、アンナちゃんより幼い故の自然のものなのか、はたまた実は自分は男の子であるって感じの(家庭事情を悟らねばならないという)意図的なものだったのか、今もって(興味深い)疑問です。
ビイルネンさんのご見解は如何に・・・?

フィデルのせい、とか言いながら結局カストロの思想に肉迫していないのもアンナちゃんなりの視線をメインに描いたせいなのでしょうか・・・それだけに、以後アンナが共産主義に対してどう審判を下すかが非情に興味深いところです。

和久本みさ子さん、ですか?私も存じ上げませんでしたが、その御方のコメントこそシブいです。
見る、知る、というのがまさしく成長なのでしょうね。
Posted by ぺろんぱ at 2008年02月03日 18:12
今晩は〜☆

キョーサン主義も、ダンケツの精神も
きっとアンナには解からなかったし、そんなに魅力的ではなかったと思いますが
大人に押し流されず、理解しようとする姿勢に
子供らしい潔癖さと
それは愛からくるものだというのが感じられて
最後まで楽しめました♪
堂々として意志的な眼差しが素敵な子役さんでしたね、アンナ♪〜☆
Posted by kira at 2008年02月03日 20:07
ぺろんぱさん、こんばんは。
こういう映画に出会えると嬉しくなっちゃいます。
子どもを主人公にした楽しい物語の中に大人にも味わい深い大切なテーマを織り込ませるとはー。
この映画の受け止め方、解釈の仕方も、それぞれの価値観や思想(というほど大袈裟なものでもないけど)に応じて、若干違っているような感じなのがまた面白くていいなぁと思います。
何が正しいのかなんて、大人の自分にもわからないですもの。
なのに、ホント、自分の正しさを人に押しつけようとする人はあふれている世の中なんですよね。
ダンケツは人まねとは違うってことを9歳にして知ったアンナちゃんは、右へならえが大好きな多くの日本人より大人だなーって思ったり。

と、ラム酒なんてまず飲みませんが、パンペロ・アニバサリオの名前はおぼえておきまーす♪
Posted by かえる at 2008年02月04日 00:07
Kiraさん、こんばんは。
コメントとTBもありがとうございます。

アンナちゃんが家を出て行くシーンがありましたよね?
あの時しっかりと弟の手を引いていたのが印象的でした。彼女は家族を守れる人間だと思いました。
仰る通り、「愛」ですね。

女優としての今後が楽しみのニナ・ケルヴェルちゃんですね。(*^_^*)
Posted by ぺろんぱ at 2008年02月04日 21:27
かえるさん、こんばんは。コメントとTBをありがとうございました。

そうですねぇー(^_^) 子どもがメインだとたまにこちらが“こっぱずかしく”なるような演出があったりしますが、この作品はそんな安易な流れもなく大人として十分楽しめ、且つ学べる作品でした。

 もしもBarでラムを思い出されましたらお試し下さい。パンペロ・アニバサリオ。(*^_^*)
Posted by ぺろんぱ at 2008年02月04日 21:34
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ぜんぶ、フィデルのせい
Excerpt: やっぱり大人は判ってくれない 原題 LA FAUTE A FIDEL! 製作年度 2006年 製作国・地域 イタリア/フランス 上映時間 99分 監督 ジュリー・ガヴラス 音楽 アルマ..
Weblog: to Heart
Tracked: 2008-02-03 19:54

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