2008年02月10日

歓喜の歌

 昨日、9日(土曜日)は雪が降りました。
久し振りの、本格的に降る雪でした。
水分を多く含んだボタン雪のような雪でしたが、あれだけ降るとあっという間に積もるものなのですね。雪色の空に見とれているうちに眼下の景色も雪色に染まりだしていました。

あまりの降り様に一瞬怯んだものの、折角の三連休・・・「初日は映画」と決めていたので頑張って大阪へ。
足もとのシャーベット状の雪に時折滑りそうになりながら、梅田ガーデンシネマに『歓喜の歌』(松岡錠司監督)を観に・・・。

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          雪梅田ガーデンシネマから見た大阪の雪景色

story
 人気落語家、立川志の輔の同名落語を、『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』の松岡錠司監督が映画化したドラマ。
大晦日の市民ホールを舞台に、紛らわしい名前のママさんコーラスグループをダブルブッキングしてしまったことから起こる騒動を描く。
  文化会館で働く飯塚主任(小林薫)は、似た名前の2つのコーラスグループを聞き違え、大晦日のコンサートホールをダブルブッキングしてしまう。双方に掛け合うものの、どちらも一歩も譲らず大問題に発展。“事なかれ主義”で生きてきた飯塚だったが、2つのグループの板ばさみとなってしまい途方に暮れる。(シネマトゥデイより)
                         
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映画が終わったあとも雪は降り続いていて大阪駅方面に戻るのに歩くのが怖かったですが、何となく踏みしめる足下に力がこもるような感じでした。
「ありえない!」って思うような設定やら“あざとさ”を感じる演出も無くはなく、そして「こうなるんだろうな」的な予測のまんまの終焉を迎えるベタさも否めないのですが、それでもやっぱり、笑って泣いて、最後は歓喜の歌の大合唱に不思議な高揚感を得られる、十分に楽しめる作品だったと思います。


 前日までダブルブッキングに気付かないのは、先ずあり得ません。
細かい打ち合わせや確認事項で先方と連絡を取り合わねばならないですからね、公演までに何度も。(そのダブルブッキングを部下のせいにする上司、っていうのは結構あることですけどね。^^;)
今まで全てに対していい加減でしかなかった人間が“ギョーザ”で誠意の何たるかに気付いたっていうのも安易な気がしますが、ダブルブッキングの設定も含めたそんなこんなは喜劇としてはあることなのでそれはいいとして、私がちょっと残念だったのは、それを中華料理店の娘に語らせた「母エピソード」だけで描いちゃったというところでしょうか。
私としては、もうちょっと飯塚主任が“目覚める”あたりの説得力が欲しかったです。(今のこの時期にギョーザというのには別の意味でのインパクトを感じましたが。)
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しかし、ダブルブッキングの解決策として「一緒に歌う」というシンプル且つ大胆な方策(会場を一主任が勝手に改装しちゃうというところもシンプルにして大胆!)も、それに向かって一丸となっていくコーラスグループのメンバー達にも、素直に新鮮な感動を受けましたね。
まぁそれが一夜の間のことでしたので、あんなふうに想定外の準備に追われて「明日はみんな声がちゃんと出るんだろうか」などど余計な心配までしてしまった私ですが、疲れ切って帰ったはずであろう団員達の、明日の本番を迎えるにあたって其々に見せる心の高ぶりをひとコマずつ描いたシーン・・・あれは秀逸だったと思います。

何より、いろんなツッコミどころがありながら、最後の「歓喜の歌」の大合唱がそれらを吹きとばしてくれたと思います。
歌って凄い力があるのだと改めて感じましたし、特にこの「歓喜の歌」の歌と旋律が放つ不思議な「魔力」とも言えるパワーに身体の全部が熱くなりました。・・・ベートーヴェンって偉大!(作詞はベートーヴェンじゃなくシラーという人ですが。)

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俳優陣も結構皆さん「ハマり役」という感じで見せてくれて、主演の小林薫さんは勿論のこと、チョイ役の筒井道隆さんや笹野高史さんや塩見三省さんが其々の持ち味でくすりとした笑いを提供してくれていました。6年振りのスクリーンという安田成美さんも短い前髪がとってもキュートで素敵でした。
そういえば成美ちゃん演じるコーラスガールズのリーダー・五十嵐純子は、興味を持ったものに次々に仕事変えする脳天気なダメ夫をもちながら自身も仕事して家計を支えている女性なのですが、彼女自身も天真爛漫とでも言おうか、家庭は常に笑いに満ちた円満家庭なのですよね。そんな彼女があわや公演中止かという苦境に立った時に「諦めちゃいけないんだわ!」って言うシーンがあるのですが、彼女が言った台詞だっただけに妙に説得力があるなぁってストーリーとは関係ないところで感心してしまった私です。

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多少後味の悪さを感じたシーンにも、あとでそれなりにその後味の悪さを解消させてくれるシーンが盛り込まれていて、それが嬉しかったですねかわいい。(飯塚主任からお金を騙し取ろうとした謎の外人女性とその情夫のエピソードや、ランチュウ窃盗事件など・・・です。後者は超高級魚ランチュウがデメキンに変わっちゃいましたけれどね。(^_^))

お決まりのラストながら、にっこり笑って涙を拭える、ハートフルな作品だったといえるのではないでしょうか。

 
 鑑賞から一夜明けての今日は青空が戻ってきました。

ちょっと遠めの散歩コースの一つ「灘の福寿郷・酒心館」は、館内の喫茶(喫酒)コーナーに濁り酒が登場し始めたところです。
24日の日曜日には恒例の梅祭りも行われるそうです。
まずは純米吟醸の荒ばしりと鰯のマリネを。

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春を先取りする気分で明るいうちからの美酒。・・・歓喜!
posted by ぺろんぱ at 17:51| Comment(14) | TrackBack(2) | 日記
この記事へのコメント
こんばんは!
いろんな事をひっくるめて結果、楽しい作品みたいですね。
私も機会があれば見に行きたいと思っていますが、
ついつい邦画は後回しになってしまいます。。。
それでもここ何年かは、結構見に行きたくなる日本映画も増えてきました。
小林薫さんは、デビューされた頃から今日まで
なぁんか気になる役者さんの一人ですし。
ところで、ぺろんぱさんは東灘のあたりにお住まいなんですか?
私は実家が甲子園なので西宮に酒蔵通りというのは聞いた事がありますが、
行った事ないんですよー。
日本酒が好きな人には楽しいスポットなんやろなぁ。(=^_^=)
Posted by ゆるり at 2008年02月10日 19:42
ゆるりさん、こんばんは。
そうですねー、いろいろ思うけれどやっぱり私は観てよかったです。
・・・って、私の感想をご覧になりつつ「ええのか悪いのかどっちやねんっ!!」とPCに向かってツッコミをお入れだったのではないでしょうか・・・^^;。すみません、全く私ときたら白黒はっきり出来ない性格なもので・・・(激しく自嘲)。

ところで、いかにも・・・私は東灘方面の住人です。ゆるりさんは日本酒は今ひとつ、でいらっしゃいますか?西宮にも神戸にも、いろいろ楽しい日本酒スポットがございます(*^_^*)。機会がございましたら是非!
Posted by ぺろんぱ at 2008年02月11日 20:50
ばんはです。

小林薫と言えば、もはや“松岡組”の一員と言えるのでしょうかね〜。『東京タワー』でもアヴァンギャルドな玄関の開け方をするオトン役でしたよね。

案外、地上波放送も早そうな気がしますが(←すんません)
映画館で気負いなく楽しんで観るべき作品なんやろな、と想像するものです。

松岡監督と言えば、初期作『ヴァタアシ金魚(1990)』がとにかく印象的でした。主演していた、あの女の子が好きでしてね・・(遠い眼・・)
Posted by TiM3 at 2008年02月11日 23:23
TiM3さん、おはようございます。

>地上波放送も早そうな

そうですね、その時は是非ご覧になってみて下さい。

>初期作『ヴァタアシ金魚(1990)』

この映画の名前もよく目にします。私は観ていないのですが、今のところの<お題>は
監督つながりより小林薫つながりの『ウンタマギルー』です(^_^)。探しているうちに(見つからなくて)別の作品に手が延びてしまったりで・・・・。
Posted by ぺろんぱ at 2008年02月13日 06:08
【映画情報サイト『シネトレ』公認映画ブロガー募集のお知らせ】

こんばんは。
突然のTB、コメントで失礼します。
映画情報サイト『シネトレ』です。
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Posted by シネトレ at 2008年02月13日 19:36
『ウンタマギルー』も好きだし、
『コキーユ』も好きでしたね。

ああ、小林薫って結構、いい作品を選んでるんですね☆

『黒い家』ばかりはあんまりな、感じでしたが。。
Posted by TiM3 at 2008年02月14日 00:36
こんばんは☆

この映画気になってます!こっちはもうちょっとで公開です。

落語がもとっていうのもユニークだし、あとキャストも個性的ですよね。

>にっこり笑って涙を拭える、ハートフル
おー☆楽しみに見にいこうと思います(・o・)!!!
Posted by dk at 2008年02月14日 00:46
「シネトレ」スタッフ様、TBとご丁寧なコメントをありがとうございます。
私のブログは「熱く!」というより「ぐだぐだと」書いているだけのような気がしますが・・・^^;。

しかしとても楽しそうで情報も盛りだくさんな貴サイトですね。ゆっくり拝読させていただきます。ありがとうございます!
Posted by ぺろんぱ at 2008年02月16日 10:17
TiM3さん、こんにちは。
ここのところ雑事に追われてPCにゆくり向き合えず、お返事が遅れて申し訳ありませんでした。

『コキーユ』・・・ですか。
また<お題>が増えそうです。

『黒い家』というのは知りませんでした。
『風の歌を聴け』は、知ってはいてもハルキストとして見てキャスティング的にあんまりな、感じで観ていませんでしたが。^^;


Posted by ぺろんぱ at 2008年02月16日 10:22
dkさん、ようこそです。
お返事が遅くなって申し訳ありませんでした。
ご覧になられましたら貴レヴューを楽しみにしております。

>落語がもとっていうのもユニーク

どうなのです。あの「ありえない!」感は落語がモトだからなのでしょうね。(^_^)

でもネット上では酷評も目だっていて、ちょっと淋しい気もしました。でも受ける感じは人其々ですものね。(もしご覧になられるのでしたら)dkさんはどっちに転ばれるでしょうか・・・それも楽しみにしています。
Posted by ぺろんぱ at 2008年02月16日 10:28
ばんはです☆

余りムリされませんように・・

>『風の歌を聴け』は、知ってはいてもハルキストとして見て
>キャスティング的にあんまりな、感じで観ていませんでしたが。^^;

ちょっと笑いそうになりました。

と言うのも、
「カドカワ映画の方の“ハルキスト”かな?」
と一瞬ながら間違えた自分がおりましたもので・・(⌒〜⌒ι)

そうそ、篠田監督の「おりん」にも小林さんが助演してます。楽しみだにゃぁ〜(=^_^=)
Posted by TiM3 at 2008年02月16日 23:18
TiM3さん、ハルキストは勿論「村上さん」のほうです。

「おりん」の小林薫さん助演、どの役なのか今いろいろ想像しております。
Posted by ぺろんぱ at 2008年02月17日 12:50
にーはお、しげぞう出ございます。

これもPickupしましたが見ていません。
やっぱり、安田成美嬢の何年振りかのスクリーン出演ですからね。
内容のまあまあって事で。
でも映画みたいなあ。
Posted by しげぞう at 2008年02月24日 12:35
しげぞうさん、こちらにもようこそです。

そうなのです、確か6年振りのスクリーン復帰作とか・・・。
輝いて見えましたよ。成美嬢のファンでいらっしゃるなら是非(*^_^*)!

Posted by ぺろんぱ at 2008年02月24日 21:38
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Excerpt: 登場人物がみんないい人ばっかり。 みんな笑顔でお人好し。 そしてお決まりのハッピィエンド。 「お笑い」を映画にした、ゆるい感じのまさに脱力系もの。 「京都シネマ」の館内
Weblog: Art- Mill  あーとみる
Tracked: 2008-02-12 21:11

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Excerpt: シネトレのスタッフよりも、映画を熱く語れる方、大募集です。 いつも映画情報+試写会プレゼント『シネトレ』をご覧いただき、ありがとうございます。 『シネトレ』公認!映画ブロガーを募集します。..
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Tracked: 2008-02-13 19:35