2006年08月20日

狩人と犬、最後の旅

 週末の一本はテアトル梅田『狩人と犬、最後の旅』(ニコラス・ヴァニエ監督)
テアトル梅田の狭いロビーは待合客で一杯になっていた。

 これはドキュメンタリータッチの、しかしながら、脚本もある「映画」である。
そうでありながら、脚本&監督のヴァニエ氏自身が犬ゾリでのシベリア横断8000kmという偉業を成し遂げた冒険家であったことと、台詞が少なく、実在の狩人と犬達が主人公であったことから、この作品はドキュメンタリーさながらのリアリティーがあった。
          狩人と.jpg 

story
ロッキー山脈の最後の狩人として生き抜いてきた実在の人物ノーマン(ノーマン自身が演じる)
自然と一体となり長い間森を愛し、守り続けてきたが、そこに住む動物達は森林の伐採によって減少。仕事も住まいも生きる目的さえも失いかけたノーマンは、今年限りでロッキーを去ろうと決意する。しかし、欠点だらけの犬“アパッシュ”に出会った彼は・・・。(映画チラシより)


 一にも二にも、犬たちに大きな拍手を送りたい

アパッシュほか六頭、そして最初に逝った最愛の犬だったナヌークにも。
狩人ノーマンとの「共に生き、共に戦う」仲間としての絆が描かれていると思うが、はっきり言ってノーマンは自ら山での暮らしを愛し、そこでしか生きられない男であったのに対し、犬達は飼い主の彼に従う立場だ。あれほど過酷な厳寒での狩りを、果たして犬達は望んでいたのだろうか、と率直な疑問も抱いてしまう。
             324530view005.jpg
               
生死をも分かつ過酷な状況で犬達の“悲鳴”とも取れる鳴き声が響き渡るのが胸に強く痛く突き刺さる
だから、観終わった後、手放しで「感動!」「すばらしい!」とだけ言う気になれないのは確かだった。

同じことが彼の妻ネブラスカ(本人が演じる)にも言える。
彼女はノーマンを深く愛し、理解もしている。しかし本当は彼の身を案じ、山での暮らしの今後を案じ、できれば狩りの暮らしを終えたいと思っている。(まだ彼女は言葉でノーマンと話し合えるからよいのだが・・・)狩りに出かけるノーマンを見送る彼女の表情は、不安を払拭し、ただ夫を信じようとする女の強さを感じさせる。

ノーマンはそのことを何処まで分かって、どこまで自分の判断の中に組み入れてくれているのか・・・。否、十分に分かっているから犬達をいたわり、自分の身に何かあったときには「妻を頼む」と仲間に告げているのだろう。そう思いたい。
孤高と思われる狩人の世界も、こうして妻や犬という仲間がいたからこそ為し得る偉業なのだなと改めて思った。

 しかし、ソリを引く犬として生まれ育てられたことを彼らの“運命”というなら、自らの運命を受けれ、ここまで人間に応えようとする犬達に、本当には頭が下がる
勿論、ノーマンの生き様も壮絶で、文明の力に囲まれてぬくぬくと生きる我々を圧倒するものがある。(特に、木々がそびえ立つ原野に、妻と二人だけで、まず木の伐採から始めてゼロから家を作って行く過程には感服するのみだった。)
しかし尚、言葉を解さない(人間が犬達の言葉を解さない、とも言える)犬達の行動は、人間の“それ”を遥かに凌駕するものがあったと思う。

自然というもの・・・、動物、命ある者のこの「営み」に、畏敬の念を抱いた。(ノーマンは劇中で、「自然には必要以上に畏怖してはいけない。共存していくことが大切」と語ってはいるが・・・。この言葉は確かに深い。)

 自然といえば、この映画ではロッキーの大自然の映像が本当に素晴らしい。これを観るだけでも一見の価値はあると思う。
ノーマン達の狩りの暮らしを通して四季折々の表情を見せるロッキー。同じ地球上に「こんな暮らしがあったのだ」と息を飲む

冬の雪原・・・空に光が満ちる時に雄叫びをあげると言われる狼達の群れが、深い緑のオーロラに光り輝く空に向かって一斉に吠えるシーンは神秘的だった。
             324530view002.jpg
 この物語は起承転結が明確ではなく、ラストも、ノーマンの心を湖面の凪状態になぞらえて静かにエンドロールとなる。
しかしそこに、ノーマンの「ある静かな決意」を感じたのは私だけではないはずだ。
静かな、しかし石のように硬い、命続く限りの希望を秘めた決意だ

 
 週末を迎える一杯はここ、某大手酒造会社の直営のBarで。(写真をみれば何処かバレバレですが。)ここは月に一、二度、ふらりと立ち寄り軽く飲んで帰るお店です。

o-rudo.jpg JDJJ.jpg
新しく売り出された「R ザーブ」の水割りのあと、J ダニエル ジェントルマンジャック」をロック(写真)で。
ここの店長氏は、先代の御方もそうでしたが、随分とお若いのに「Barサービス」の信条みたいなものをきちんと持っておられて、多くを語らず尋ねず、引きすぎもせず踏み込みもせず、適度な距離を保って接して下さり、気の張らない時間を過ごせます。

店内リニューアルで、木樽の重厚なオブジェが・・・思わず写真に撮らせて頂きました。
このウッディーな感じがいいですね、ただ、ものすごく重いものらしいですが・・・・。
だからやっぱり・・・ね、大木を切り倒して削って運んで組み立てて家を作るなんて・・・・とてつもない行為なんですよ。

posted by ぺろんぱ at 21:55| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/1144966
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。

この記事へのトラックバック