寒い日が続いています。
こう寒いと熱いコーヒー、熱いアルコールがとても恋しいですね。
でも極寒の地ではてっとり早く身体を内燃させるウォッカなんかが好まれるわけで・・・。
今日はのっけからアルコール話で恐縮ながら、今日綴るこの作品でも主人公がバーでオーダーするのは<ウォッカ、ダブルで>。勿論ストレートで。
ああ、でもあれは身体の寒さというより、自身の心の寒さや歪みをてっとり早く払いのけたかったから・・・なのですよね。
私の<お題>作品の一つだった『善き人のためのソナタ』(フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク監督)を先日レンタルして来てやっと観賞が叶いました。
・・・なんと静かに、深い余韻を残してくれる映画なのでしょう。
監督が若干33歳にして撮った作品とか。其々の登場人物を丁寧に追い、その心の深淵にまで迫る演出が、この深い余韻につながっているのでしょうか。観る事ができて良かったと心から思える作品でした。
story
ベルリンの壁崩壊直前の東ドイツを舞台に、強固な共産主義体制の中枢を担っていたシュタージの実態を暴き、彼らに翻ろうされた芸術家たちの苦悩を浮き彫りにした話題作。
シュタージ(国家保安省)の局員ヴィースラー(ウルリッヒ・ミューエ)は、劇作家のドライマン(セバスチャン・コッホ)と恋人で舞台女優のクリスタ(マルティナ・ゲデック)が反体制的であるという証拠をつかむよう命じられる。ヴィースラーは盗聴器を通して彼らの監視を始めるが、自由な思想を持つ彼らに次第に魅せられ……。(シネマトゥデイより)
※掲載写真は全て映画情報サイトから転載させて頂いております。

資本主義の中で政治犯として狩られる共産主義者、そして本作のように社会主義の中で狩られる自由主義の思想や芸術家たち。
双方それぞれ、描かれた作品はありますが、世の中というもの、「思想」や「主義」が「権力」を持った瞬間に「弾圧」は始まるのですね。
他を排斥する・・・「国民の平和を守る」という大義が本当なら、本来その国民の「心の平和と自由」が守られるべきなのに。
どちらの主義・思想も、権力を持った瞬間から高邁な思想とは裏腹の「負の産物」を持つのでしょう。
コチコチの共産主義者だった人間があっさり転向を決めたり、豊富な物資に囲まれて生活をしていた人間がある日突然「何か」に目覚めるとか、そういうことはあるようですが、ここに登場するヴィースラー自身も、「正義」と信じて疑わなかった党の中枢人物たちの私利私欲の渦巻く薄汚い横顔を目の当たりにし、ドライマンとクリスタの人間らしい自由な生活と芸術への真摯な探究心に、より一層心が傾いていったのであろうと思われます。
他人の生活を覗き見、会話を盗聴するというこのおぞましい行為は、当時の東ドイツでは徹底して行われていた「国民監視」だったようです。
監視は密告を呼び、仲間の信頼や結束を打ち砕き、人々の心を暗く暗鬱たるものに変えていってしまうのです。・・・怖いですね。
ヴィースラーも監視側にいた人間ながら、ドライマンのもとに集う人々に感化され、やがて一曲の調べに心を打たれ・・・。
『善き人のためのソナタ』というその曲は、「この曲を本気で聴いた者は、決して悪人にはなれない」という言葉が添えられた曲でした。美しいだけではなく、どこか気高さをも感じさせる調べだと感じました。

ヴィースラーの心の変化は、彼から鉄の信念と地位と名誉を取り上げたけれど、人間としての誇りと想像を羽ばたかせたり誰かを想ったりできる自由を得たはず、です。本来人間とはそのように[身も心も自由であるべきだ]ということに、そしてそういう生き方ができるもう一つの人生が彼にもあったのだということに、彼は気付いたのですね。
自分の選択は間違っていなかったことを実感できたであろうあのラストシーンと最後の一言は、ベルリンの壁崩壊後のドイツの街角のブックストアで、やっと微笑を湛えることのできたヴィースラーに(そしてこれからの彼の人生に)心の底から拍手を送りたいと思える珠玉のシーンでした。
お慕い申しておりまつ・・(・ω・)
昨年、ウルリッヒ・ミューエが54歳という若さで亡くなられたのは
残念でした。。。。
そして、マルティナ・ゲデックさん。役によって全く違う顔を見せてくれる
素敵な女優さんですね。(=^_^=) 大人の魅力!
マルティナ・ゲデックさん、『素粒子』にも出ておられましたね。
そんなにファンでいらしたとは・・・。
華やかさと妖艶さを加味したシャーロット・ランプリング・・・という感じに私は見てたのですが・・・。って、それって、全然別人ってことですね、失礼しました。(^_^;)
ウルリッヒ・ミューエ・・・亡くなられたのですか!知りませんでした。残念です。
彼自身も俳優時代にシュタージに盗聴された経験を持つそうですね。“自由な表現の時代”をもう少し長く生きて欲しかったです。
>役によって全く違う顔
確かに。今回も『素粒子』のあの女優さんだと途中まで気付きませんでした。
>大人の魅力!
そうですね。あの目に見つめられたら瞬時に心を射貫かれそうです。(@_@。
お慕い申しておりまつ・・(・ω・)
クライマックスからラストに向けてのシーンは秀逸でした。
ヴィースラーが自分の人生を肯定出来たあの街角のブックストア…
最後の一言とその後に流れる音楽は、
心に沁み入る様な余韻を残してくれました。
この作品を映画館で観れなかったことが残念でなりません。
私の地元では上映されなかったのです〜(泣)
それにしても、監督さんが若干33歳とは驚きです!
小生も映画館で見逃しDVDで見ました
今のところ 今年ベスト1です
(まだ3月なので気が早いけど)
そのうち私のブログにもアップしますので
よかったら 覗いてみてください
「お慕い」ベクトルの向きが真逆でないのなら、やはり二人は似てます?
でも似ていなくても、シャーロット・ランプリングは魅力的な女優さんですよね。
本当に、余韻が深く残る映画でしたね。
私も映画館で観ていないので、あの音楽も劇場の大音響で聴けばさらにもっと強い衝撃が走っていたのかも・・・と思います。(T_T)
ウルリッヒ・ミューエの“目の演技”も更なる迫力があったかも。
33歳・・・それであそこまで人物描写に深く切り込んでおられたのには驚きですね。
今年bPですか!
いえいえ、3月初めの今にしてそう仰れる高揚感こそ“ホンモノ”です、きっと。
貴ブログでのレヴューを楽しみに致しております!