この映画知ってる?と知人が貸してくれたビデオ『逢いたくてヴェニス』を観る。
ビビアン・ネーフェというドイツの女性監督の作品だ。
story
売れない画家の夫・ルイス(ゲデオン・ブルクハート)を支えて7年間、一家4人の家計を支えてきたエバ(アグライア・シスコヴィッチ)。
ところがある日、ひょんなことから職場をクビになり、おまけにルイスは金持ちのキャリアウーマン・シャルロット(ヒルデ・ファン・ミーゲン)と不倫旅行に出かけた事が発覚。
もう許せない!完全にキレたエバは、二人の幼い子を連れ、浮気相手の夫で厭味なエリート弁護士・ニック(ハイノ・フェルヒ)を拉致してオンボロ車で追跡の旅に出るが・・・。(ビデオパッケージより)

まずヒロイン・エバの行動がとにかくハチャメチャ。
夫の裏切りと生活苦で、もう完全に情緒不安定に陥っているとしか思えない。拉致されたニックは実に“鼻持ちならない”男なんだけれど、エバの常軌の逸し振りに、ついつい「そこまでしなくても・・・」とニックに同情してしまう。
でもこんなエバに、やっぱり母を慕う子ども二人は必死について行く。子ども二人も、冷静に見ればちょっと情緒不安定気味の問題児なんだけど、この二人の子どもが凄くキュートで、この二人の存在がこの映画を単なる男と女の“トンでもロードムービー”で終わらせなかったといえるかな。
嫉妬やプライドのぶつかり合いや、男と女の愛憎やらとは無関係の、幼い子どもが持つピュアな直感(人間を好きか嫌いか、いい人か悪い人か、愛してくれる人か愛してくれない人か、を瞬時に見分ける力)が物語の随所に生かされていて、観ている大人の私を時々ハッとさせてくれたからだ。
この幼い子ども二人が道行に加わった事で、この映画が味わい深いものになったと思う。
それからニック役のハイノ・フェルヒが凄くいい。この人は映画『ラン・ローラ・ラン』にも出ているらしいが残念ながら私は観ていないので機会があったら観てみたいと思う。
神経質で冷徹な男の役どころではあるが、徐々にエバや子どもに対して心を解していくあたりの微妙な態度の変化は「上手い」って思ったし、何より眼差しに好感が持てた。
ビデオの解説にはエバ役のアグライア・シスコヴィッチにとにかく注目!みたいなことが書かれていたが、私としては彼女よりもずっとハイノの方が素敵なアクターとして心に残った。
不倫旅行に出かけたルイスとシャルロットは結局は不実の“報い”を受ける。
あれで互いの夫婦にヨリが戻るなんて余りに嘘っぽいからそれは仕方のないことだと思ったのだけれど、旅行中にあれほど互いの身体を貪欲に求め合った男女が、ちょっとした言葉や態度のすれ違いで決別していく様は、女流監督ならではの視点を感じて興味深かった。
エバがピアノを弾くシーンは、それまでが拉致&追跡旅行の過激なシーンの連続だっただけに、ニックだけじゃなく観ている私にも“琴線に触れる度数”は高かった。
「逢いたくてヴェニス」というタイトルだけど、ヴェニスの町並みはさほどクローズアップされていない。
なにしろ不倫旅行の二人はヴェニスでも“個室”に篭ってることが多かったみたいだから。
ヴェニスへの旅モノとしてその町並みを堪能できるのは、たしか03年に公開になった『月曜日に乾杯!』(オタール・イオセリアーニ監督・主演 仏・伊合作)・・・あれはヴェニスでの“ゆる〜い”旅暮らしの様子が楽しく描かれていて映画のキャッチコピー同様、「ちょっとヴェニスへ行ってきます」と言いたくなる佳品だったかな・・・・。

テアトル梅田に観に行って“ゆる〜い”気分になって出てきた記憶がある。
映画のチラシに書いてあった言葉・・・「気の合う仲間と美味しいお酒を飲んでノンシャランノンシャランといきましょう。」(ノンシャランとはフランス語で「呑気」の意。)
ヴェニスのお酒といって思いつくのは赤ワイン<ヴァルボリチェッラ>ですが、昨夜の私のノンシャランノンシャランの美酒はワインじゃなくて和酒でした。
日本酒片手にヴェニス旅、というのは絵的にちょっと無理がありますが

月に一度くらい?お伺いする堂島の某居酒屋さん、店内改装で久々にオープンされたとのことでご挨拶を兼ねてちょっと寄って来ましたが、「(私の好みなら)多分これかなぁ・・・」とマスター氏が出して下さったのが<宗玄・八反錦無濾過生原酒>です。

*写真は酒造会社のH.Pより 一番右のボトルが八反錦
八反錦の他に、雄町米を使った無濾過生原酒もあります。
よく冷えた錫の酒器にトクトクトクと注ぎ入れて饗して下さいましたが、とろりと濃厚な甘口ならぬ旨口のお酒・・・冷え具合がいいので濃厚ながらまとわりつく感じもなく喉越しに意外とキレがありました。美味しゅうございました。
あっ!

マスター氏は忙しさにてんてこ舞いで“ノンシャラン”じゃなかったようですが・・・・。