「サンダンス映画祭で賞賛された、『スタンド・バイ・ミー』と比肩される珠玉作」という触れ込みに惹かれたこともありますが、久々にシネ・ヌーヴォに行ってみたかったというのも本当のところ。
大阪の九条にあるこの映画館、位置する周辺の様子とは一風変わった“不思議でちょっぴりダークな映画空間”です。(私は)行くのは多分2年振りくらいですが、移動が可能なお方でまだ行かれた事のない方は、観てもいい映画がかかってる時を見つけて是非一度足を運んでみてください。面白い映画館ですよ。
story
オレゴン州の小さな町で暮らすサム(ローリー・カルキン)は、裕福で体格のいい同級生のジョージ(ジョシュ・ペック)の理不尽な苛めにあっていた。そんな弟を見かねた兄のロッキー(トレヴァー・モーガン)は友人のマーティー(スコット・ミシュロウィック)やクライド(ライアン・ケリー)と相談し、仕返しの計画を練る。計画通り、彼らはサムの誕生日を祝うと言う嘘によってジョージをボートでの川下りに誘い、出かけるが・・・。(シネマトゥデイより)

これは『スタンド・バイ・ミー』とは趣の異なる衝撃的作品です。
「青春の一過程」を描いたところは同じでも、『スタンド・・・』が、時を経ればまた観返してみたいと思わせるバイブル的作品であるのに対し、これは出来れば記憶の奥に封印してしまった方が幸せと思える「救いようのない痛み」を伴う映画でした。
川下りに出かけた先での風景が、草木の柔らかい緑の色ときらきら光る湖面の輝き、そしてそれを包み込む淡い空気の色合いなど余りにのどかで美しく、そこで起こった「悲劇」との対比がより一層、「にわかには信じがたいけれど起こってしまった」という事件の悲壮感を強めます。
映画としての出来栄えはとてもいいと思います。
ジョージの持つハンディカメラが写す映像の、撮り手の雑な動きや手ブレなどが、居合わせる青少年達の微妙な心の動きや隠し持ったトラウマなどを代弁しているかのようで、やがて「とんでもないこと」が起きてしまうという危うさを観る者にも予感させてくれるのです。

子どもは正直で残酷・・・とは往々にして語られることですが、ここに登場する青少年(子どもとは言えない年齢の若者もいます)の中に心に深い闇を抱えてる子や先天性とも考えられる行動障害のある子がいて、そしてたまたまその二人があることをきっかけに衝突してしまったということが、この悲劇が起きてしまった大きな要因と言えるのではないでしょうか。
ごく普通の子ども達ではなかったこと・・・それは言及を避けられないことだと思います。
「ごく普通の子ども達が起こした一夏の出来事」で終わらなかったことが、先述した“救いようのない痛み”となって私の中に残りました。
一人は死に、一人は“完全な”犯罪者となり、残りは深い傷を一生背負って生きていかねばならない・・・。
その傷が完治しないでどう広がっていくかを考えると怖いです・・・一番正義感があって真っ当な意見の持ち主だったミリー(カーリー・シュローダー)が、事件の後、カタツムリをカッターで一突きにするシーンはその怖さを如実に語っていたように思えます。
ただ、彼らが救われる道はあった・・・・あの時、すぐに、本当にすぐに誰かが飛び込んでジョージを引き上げていたら・・・・。
そこに「幼さゆえ、若さゆえ」が存在したのかもしれないし、また、それがあくまで結果論に過ぎないのはとても悲しいことです。
台風13号の影響を直接受けることなく、大阪は晴れて陽射しも強く

ヌーヴォを後にし、梅田へ戻り、先に友人二人が参加していた<阪神百貨店・ワイン祭>に私も参加して来ました。
これは頒布目的のワイン試飲会で、百貨店11階のグリーンルームで開催され、ブース<A>〜<T>まで、各社選りすぐりのワインが試飲できる会なのです。
まずはスパークリングから始めて、白、赤・・・と。
ブース<D>ではイタリアのパワフルワインが勢揃い。
バローロ・ラ・ローザという上代16,800円のワインも飲みましたが、私が今回最も気に入ったのが<ニーノ・ネグり チンクエ・ステッレ>(58番)です。
陰干しした葡萄から作られ、熟成期間がさほど長くないことから華やかな果実香もしっかり残り、深みと華やかさの同居するワインでした。(チンクエ・ステッレは「5つの星」の意)
最後はブース<Q>の濃厚で甘いシェリーやマディラ、ポート等で締めて

映画の最後の方で、泣きながら銃を突きつけ強盗するマーティーの姿が目に焼きついています。成長した彼らを『さよなら、僕らの夏・・・再び』として描くなら、彼らはどう生きているでしょうか・・・。
友人二人と別れて一人になってから、そんなことをふと考えました。