2008年05月04日

今夜、列車は走る

 
 昨日から4連休です。
初夏どころか、夏本番を思わせる陽射しだった昨日・今日でしたが、道路はどこもお出かけの車で混んでいましたね。
そんな今日4日(日)は第七藝術劇場でモーニングショーの『今夜、列車は走る』(ニコラス・トゥオッツォ監督)を観てまいりました。

昨日は拙宅で友人数人が集っての昼宴・・・私以外は(いえ、私も末席位置ながらの)「酒豪揃い」の宴だった為、二日酔いは必至かと予想していましたが、お開きとなった時間が早かったせいか意外にも爽快感を伴う目覚めで、朝から元気に十三・七藝に行って参りました。
(昨日集まってくれた皆さん、とても楽しかったです、ありがとう。美味しいお酒とお土産もありがとう、です。ぴかぴか(新しい)

さて、映画。
徹底したリアリティーの中にも漂う哀切感、ごく微かに散りばめられたユーモア・・・、全体としてはアンチ・クライマックス的に淡々と物語が進みます。しかし終盤の何分かで一気にボルテージが加速上昇し、ラストシーンでは“不意をつかれたかのように”涙が溢れる感じです。
いい映画です。                      ※「アンチ・クライマックス」=村上春樹語。 

                今夜、.jpg

story
 1990年代、突然民営化の波にさらされた鉄道員たちの厳しい現実をとらえた社会派ドラマ。本作で長編デビューを飾ったのはアルゼンチンの新鋭、ニコラス・トゥオッツォ監督。
鉄道を中心に発展したアルゼンチンの山間の小さな街で、ある日突然路線の廃止が決定する。労使交渉を続けた組合代表はその運命を嘆きピストル自殺する。補償金をエサに自主退職を迫られた組合員たちは次々と書類にサインするが、カルロス(ダリオ・グランディネッティ)ブラウリオ(ウリセス・ドゥモント)ら5人の仲間は断固戦うつもりでいた。(シネマトゥデイより)
       ※掲載写真はいずれも映画の情報サイトより転載させていただいております。



 鉄道と共に栄えた町で、一生の仕事と信じて疑わなかった「鉄道員」の仕事を突然に奪われた悲劇。
其々に自分の「これまで」と「これから」に向きあわねばならなくなったカルロス、ダニエル、ゴメス、アティリオ、ブラウリオ。
右往左往しながら何とか閉塞的状況を打破しようともがくのだけれど、それが徒労に終わったり家族との新たな摩擦を生んだり、果ては自棄的に犯罪に手を染めてしまう者も出てきてしまう・・・職を奪われるということがもたらす現実の厳しさ、不条理感を徹底的にリアルに描いています。
                 今夜、3.jpg

世を呪い、解雇した側の人間を罵るしかない仲間達の横で(そしてそういう感情を持つのも当然と思われるような状況下で)、ふとカルロスが「(そういう状況に気付かず何もしなかった)俺達も悪いのかもしれない」と呟いたのが心に残りました。
不確かなこの世の中に於いて、多分、仕事に限らなくても似たような状況がいつ、誰に降りかかってもおかしくはないのですよね。
解雇する側の理不尽さとされる側の不用意さ・安穏さと、その両方ともが現実であることを映画はきちんと語っているわけですね。しかしながらその「現実」はいつの世も必ず弱き者達により多くの「負」を課す・・・その現実にもとことん迫っているのです。
「負」は「負の磁場」を生み、全てを変えてしまう。
本作の5人も、思わぬ人生の転機を余儀なくされ、意外とも思えた人物が意外な悲劇を向かえてしまうのが酷く悲しい・・・。

                 今夜、2.jpg

その現実を直視しながらも、そして安易な好転で解決など計らない姿勢のままでありながらも、本作は最後に一筋の希望の光を感じさせてくれます。
絶望の中から「出口」を求め、列車は走る・・・。現実でもあり、メタファーでもあるのです、この「列車が走る」とは。

「出口はきっとある、ボクはあきらめない。」
その行動を起こすのが次を背負う若者達であったことが、さらに尚一層、この映画を輝くものとしている・・・。
ラストシーンがオープニングシーンとリンクする、カタルシスさえ感じると言っても過言ではない印象深いラストです。

                 ジン.jpg
                
 夏を感じさせる今日、自宅でも本格的にジン・デヴュー。
先ずはゴードン・ドライジンから。
トニックウォーターとソーダの半々で割ってライムと共に<ジンソニック>です。
G.W後半の後半、お天気はどうでしょうね。
列車に乗って旅がしたくなるような、そんなお天気だといいですね。かわいい
                

posted by ぺろんぱ at 21:59| Comment(11) | TrackBack(1) | 日記
この記事へのコメント
にちはです。

サイトの復旧、大変でしたね。
何度か訪問させて頂き、そのたびに「ぐぇー・・」と唸ってました(もっと奇麗な声で唸れよ)。

イギリスの炭坑系映画だと「失業」が大きなネタ(転機?)となり描かれますが、南米と言うのは舞台的に珍しい気もしますね。

ワタシの記憶に残ってる鉄道系作品は
『鉄道員』『北国の帝王』あと『ぽっぽや(鉄道員)』ぐらいかな・・雪景色+機関車の映像イメージは降旗康男監督がお得意とされてるのでしょうが・・作品全体の印象としては、どうも薄いんですよねぇ・・

ジンソニック、とは初耳でした。軽くて楽しめそうですね。
Posted by TiM3 at 2008年05月05日 13:15
TiM3さん、こんばんは。
コメントがちゃんと反映されて良かったです。ありがとうございます。

アルゼンチン映画と言えば少し前にDVDで鑑賞した(ブログには挙げなかったのですが)『ボンボン』という映画の“ほのぼの”とした印象が強くて、こういう失業の痛々しい世界はTiM3さんの仰る通りちょっと「珍しい」感じがします。しかし当国の現実としてかなり深刻な問題としてあるようです。

>記憶に残ってる鉄道系作品は
本作では、失業後の苦難が描かれていますが、鉄道員としての仕事一徹振りが偲ばれるのはブラウリオくらいでしょうか・・・。
その点においては細部に渡る「鉄道」との接点はさほど深く描かれてはいないのですよ・・・「(鉄道に特化せず、一生の)仕事」を奪われた失望に焦点がおかれています。そう言われてみれば、「“鉄道”を愛してやまない」個々の執着をもっと掘り下げてもらっても良かったかなと今は思います。
流してしまっていた点に気付かせていただきました、ありがとうございます。再度、記憶をたどって本作を反芻しながら考えてみます。

ジンソニック。
そうなのです、トニックだけで割ると少し甘さが勝ってしまうので、これだとドライ感が残っていいですよ。(*^_^*)
Posted by ぺろんぱ at 2008年05月05日 21:31
これ、気になってた映画です。アルゼンチン映画といえば、自分も、去年観に行った”ボンボン”だけですが・・・。

TiM3さんが触れられたイギリスの炭坑系映画のことが自分も最初頭をよぎりました。”ブラス!” ”フル・モンティ”とかとはじぇんじぇんちゃうシビアなやつやと認識しつつも・・・。

ほわーんとしたの観ておりらっくすしたいねんとか思いつつ、こういうシビアな感じにも気ィがいくっちゅうんは、”年だけくってるけどテメェはまっだまっだあまいんじゃぁ”と本能的に”KATSU”を入れようとしているからか?(それはそれでなさけねぇ)(トホホ)
Posted by ビイルネン at 2008年05月05日 23:55
ビイルネンさん、こんにちは。
やっぱりコメントが反映されてなくてすみません。さっきサーバーへ見に行って更新処理してはじめて画面に反映されました(>_<)、もうホントにどうなってるんでしょう、このサーバーは。

ところで、私はブラスもフル・モンティも未見です。かなりシビアな世界のようですね。
この作品はそういう意味では「息継ぎも出来る」世界だとは思います。

>本能的に”KATSU”を入れようと
私も自分でそんな風に感じる時はあります。
加えて私の場合は、自分自身のちっぽけな世界観を是正したいという潜在意識が作用しているというような・・・。
Posted by ぺろんぱ at 2008年05月06日 10:52
すんません!書き方が悪かったか、誤解を生んでしまいました。この作品の方がずうっとシビアであろうと想像してる、と言いたかったんです。”フル・モンティ”なんか笑えますよ。”ブラス!”の方は、ちょい、ちゃうパターンですが、共通してー愛とペーソスーを感じる、てとこか。(自分で言うといて背中さっぶぅ)

けど、どちらも観たんが10年程前っちゅうのがさっぶぅーていうかこっわぁ!(この10年何をしてきたか?)(ビール飲んでただけ・・・)
Posted by ビイルネン at 2008年05月06日 15:45
ビルイネンさんも触れられてる「炭坑系作品」ですが、

『ブラス!』『フル・モンティ』の他に
『リトル・ダンサー』ってな秀作もありますね☆

お国は変わるけど・・
『栄光の彼方に(わ!トムクルーズ主演や)』『フラガール(わ!邦画や)』
とかもテイストは似てますよね。
Posted by TiM3 at 2008年05月06日 23:21
す、済みません。

「ビイルネンさん」とお書きするつもりが・・(×_×)
Posted by TiM3 at 2008年05月06日 23:23
ビイルネンさん、やはりコメントがサーバー処理しないとアップされず、ご迷惑をお掛けしました。
重ねて私の読み間違い、(>_<)本当に申し訳ないです。知らぬが故の恥ですね、すみません。
「愛とペーソス」・・・全てはそれなのでしょうね。『フル・モンティ』、観てみたくなりました。

1年が過ぎるのなんて早いから、その「早い」の繰り返し10回の「10年」もやっぱり早いわけで・・・私も何してきたんやろ・・・(ブルー入る)。
Posted by ぺろんぱ at 2008年05月07日 05:35
TiM3さん、暫くはコメント反映でご迷惑をお掛けします。<(_ _)>
仰る通り『フラガール』はそのテイストがあるようですね、未見ですが。

>「ビイルネンさん」とお書きするつもりが

あっ!ベルイマン監督とダブったとか…あり得ますね。(^_^)
って、勝手な解釈ごめんなさい・・・ビイルネンさんも「人の名前で勝手に盛り上がるな!」って怒らないで下さいね〜(^^ゞ。
Posted by ぺろんぱ at 2008年05月07日 05:45
ぺろんぱさん、こんばんはっ。
七藝の鑑賞券があったので、なんとなく見たこの映画、大当たりでした。
「ボンボン」もそうでしたが、この映画も少しとぼけた味わいの
ユーモアがいいですね。
3人の若者達の存在も光ってましたねぇ。

私のとって鉄道系の映画といえば「鉄道員」(1956年イタリア)です。
こちらはもっと哀愁にみちた、いかにもなイタリア映画ですが、
サンドリーノ坊やが可愛いし音楽も素敵です。

この作品、悲惨な現実を描きながらも妙に可笑しみのある表現は、
アルゼンチンの国民性とも関係あるのかなぁ等と考えています。
Posted by ゆるり at 2008年05月10日 00:57
ゆるりさん、こんにちは。

『ボンボン』のほのぼのとした感じ、生き急がない人生、・・・そういうのもゆるりさんの仰ってる「アルゼンチンの国民性とも関係がある」ことなのかも知れませんね。
殆ど台詞らしい台詞もないながら、あの3人の若者の存在がこの映画のキーであるように感じました。

『鉄道員』・・・私は未見です。(>_<)
観ておきたい作品ですね。インプットしました。(*^_^*)
Posted by ぺろんぱ at 2008年05月10日 11:50
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Excerpt: 監督:ニコラス・トゥオッツォ (2004年 アルゼンチン) 原題:PROXIMA SALIDA 【物語のはじまり】 鉄道を中心に発展したアルゼンチンの山間の小...
Weblog: ゆるり鑑賞 Yururi kansho
Tracked: 2008-05-10 22:11