2008年05月10日

愛おしき隣人

■■先ず初めに・・・拙ブログがサーバーの障害発生により、一応の復旧をみた後の現在に於いても未だコメントの反映等に時間を有しているようです。ご迷惑をお掛け致しておりますが、定期的に更新処理を行い、投稿していただいたコメント等は洩らさずに反映させますので引き続きどうぞ宜しくお願い申し上げます。■■ 

 
  さて、本日10日(土)は、公開をとても楽しみにしていたロイ・アンダーソン監督の最新作『愛おしき隣人』を観に梅田ガーデンシネマへ。

前作『散歩する惑星』を公開時に観に行き、すっかりその超カルトな、魂が時々異次元に旅するかのような摩訶不思議な世界に魅せられ、DVDも購入してしまったほどしっかりとその名を心に刻んだロイ・アンダーソン監督。
本作ではこれまた摩訶不思議な人々がスクリーンに集結するようで・・・期待は高まり、高揚感をもって迎えた梅ガデ鑑賞でした。

結果・・・ロイ・ワールドを堪能!
前作『散歩する惑星』に比して“笑いの裏側に潜む、叫ぶが如き”メッセージ性はトーンを落としていたように感じられたものの、その分、監督の温かい眼差しと柔らかいメッセージは(何となく)届けられたんじゃないのかな・・・と自分では納得。
ラストはブラックととるか、それとも・・・・・。

                愛おしき.jpg

story
『散歩する惑星』がカンヌ国際映画祭審査員特別賞をはじめ、世界各国の映画祭で大絶賛されたスウェーデンの巨匠ロイ・アンダーソンの監督作品。北欧のとある街に生きる人々の日常風景を、ユーモラスな音楽にのせて、クオリティーの高い映像で紡ぎ出していく。
とある街にたたずむ、とあるバー。そんなどこにでもありそうな店のカウンターに、ロックギタリストのミッケ(エリック・ベックマン)にかなわぬ恋をする少女アンナ(ジェシカ・ランバーグ)、人生のむなしさを嘆く女性ミア(エリザベート・ヘランダー)、軍楽隊のチューバ吹き(ビョルン・イングランド)らが集まってくる。(シネマトゥデイより)
          ※掲載写真は全て映画の情報サイトより転載させていただいております。

 
 特にストーリーがあるわけじゃなのです。
とある街に住むいろんな人達の其々の日常の一遍が、(表面的には)ランダムに綴られていくのですが、とにかく登場する人達が全員“どこかヘン(←真面目で痛い、悲哀に満ちていて滑稽、生きているけれど死の世界に居るよう)”なのです。

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天然色と言いながら、全てのモノの色に灰色が混ぜられたようなグレートーンの空気に満ちた北欧の世界。
その世界の中で、前作でも“白塗り”の人間がたくさん登場しましたが本作でもあらゆる人が白い、白い、顔色白い、のです。
聞きかじった某情報によれば、これは「登場人物に白塗りのメイクを施すことでその人物は“個”を脱して“普遍性”を持つようになる」から(監督談)だとか。
この「白塗り」のもたらすイメージが前述の「生きているけれど死の世界に居るよう」な感覚を私に与えたのかもしれません。
だからロイ・ワールドは、この世のものでありながら何処か異次元の世界のもののように私には感じられるのです。そしてその浮遊感が私は堪らなく好き!です。

登場人物は皆どこかヘンと書きましたが、ヘンであると同時に、皆どこか不幸せ(もしくは不幸せと感じている)なのです。
不幸せなのだけど、それなりの救いはあって、みな不幸せながら何処かで誰かと繋がっていて、みな奇妙にリンクしあっていたりするのです。
その象徴的とも言えるのが街のバーでしょうか(またそれが妙に無機質な造りのバーなのですが…)。まるでその日の仕上げの日課のように集い、嘆き、沈み、淀み、しかしながら店主が鐘を鳴らすと同時に叫ぶ「ラストオーダーだよ!また明日があるさ!」のひと声で、みな最後一杯を求めてカウンターに集うのです。白塗りなのでブッキッシュ、そして滑稽なのだけど哀しくて切ない、小さな街の小さな存在の人々。
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そんな人々が皆、小さくてささやかな存在ながら、そして自身の不幸を嘆きながらも、心の隅には自分自身の「夢」を持っていたりするのです。
特に、ロックバンドのヴォーカルの男の子との結婚を夢見る女の子。
二人の新居が電車のように動き出すシーンはとても素敵です。もう一度、二度、三度、観たい。
人々が心に描く夢なんて、実はこんなにささやかで可愛いものなのだと微笑ましくなるシーンです。

ほろ苦く泣けるのは、「自分のことを誰も理解してはくれない」と始終ノイローゼのように嘆きアルコールを口にする中年女性ミア。
恋人に悪態を付き、恋人の母親をサディストと罵る・・・だけど結局はその存在に甘え、自分が帰る場所はそこしかないのだと悟っている・・・「誇張」(この監督の持ち味の一つと感じます)はあってもこんな人、居ますよね、そしてどこか愛おしいですよね。

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夢は可愛い夢ばかりじゃなくて、リアルに適度で相応な不運さを感じさせる夢もあったりします。
適度どころか、完璧にブラックと評するべきかもしれません。
冒頭のワンショットに描かれる「夢の目覚め」も然り・・・それがラストのシーンとリンクしているのですが、あれはどう捉えるべきなのでしょうね。
“あれ”が「現実」になりつつある不確実な世の中だから、だからせめて「愛おしくなるような其々の人生を其々に愛そうよ・・・」ってことなのでしょうかね。
そこまでは結論付けたくないし結論付けられない、そして結論付けなくてもいいのかもしれない、そんなロイ・アンダーソンの世界にどっぷり浸かって“脳内異次元トリップ”を楽しみたい作品です。

                 梅田ガデよりの雨景色.jpg 梅ガデより、雨の風景

  雨の土曜。
梅田ガーデンシネマから見下ろすスカイビル下の道。雨に洗われて木々の緑は冴えつつも、冷たい雨であることを窺わせる灰色がかった空気の色です。
真っ直ぐ帰る気持ち半分弱、どこかで軽く飲んで帰る気持ち半分強
「半分強」が勝って、でも、今日は知らない街の知らないお店でひっそりと飲んでみたくて、普段は滅多に降りることのない駅に降り立ちました。JR環状線福島駅から徒歩15秒の近さ、店名はチェックし忘れましたが超・カジュアルなワインのお店です。
白・赤・赤。おつまみに生ハムを。生ハムの下には数種類のピクルスとゴルゴンゾーラチーズとブルーチーズが隠されていました。

                ワイン家さん.jpg 店名知らず…

そういえば劇中で嘆きの女性ミアが言ってましたねぇ。
「この悪意に満ちた悲惨な世の中で、お酒を飲まずに素面でいろって言うのっ!?」と。
その台詞に免罪符を得たかのように、ワインはすすむ、すすむよワイン、の夕べでした。



posted by ぺろんぱ at 22:36| Comment(6) | TrackBack(0) | 日記
この記事へのコメント
監督の紡ぎ出す“実験映像”に付き合わされちゃうって感じもしますが、
ツボにはまれば、とてもイイのでしょうね。

私的には、白メイクを施して普遍性を持たせてる割には、
どうも役名にせよ、境遇にせよ、個性が抑え切れていないようにも貴レビューからは感じましたね(⌒〜⌒ι)

まぁ、ぐだぐだ言う前に観ろよゴラァ・・!
ってことなんでしょうね(・ω・)>
Posted by TiM3 at 2008年05月10日 23:53
TiM3さん、こんばんは。
「実験的」という感じより「確信的」な気はするのですが・・・でもいずれにせよ確かに私は「ツボにハマった」のだと思います。

>個性が抑え切れていないようにも

そうですか・・・そうですね・・・私の表現の仕方が拙いからかも。(^_^;)
でも「白塗り」のイメージが「個」のそれより先に立ってしまう(それほど強烈な白塗りではないのですけれどね)ってこともあるにはあるのですが・・・。

観ろよゴラァ…などとは決して言いませんよ!どちらかと言えば私としては『散歩する惑星』の方をお薦めしたいです。しかしそれにしたって「ゴラァ」とは言いませんよ。(^_^)
Posted by ぺろんぱ at 2008年05月11日 18:28
こんばんは。
サーバー故障によるアクセス障害たいへんだったと思いました。お見舞い申し上げます。もし、もし仮にですよ、復旧せず、データーが吹っ飛んだ場合、どうなるんでしょうね。数日前、日経新聞にそのような事例で、保障うんぬんなど、いろいろ考えられることが書いてありました。興味深く読んでいたので、まさかと思いました。

映画「愛おしき隣人」は僕も興味があり、自分の予定と映画上映時間のチェック中です。予告編ではかなり面白そうでしたが。
Posted by keyakiya at 2008年05月15日 22:15
keyakiyaさん、こんばんは。
お見舞いのお言葉ありがとうございます。
そうなのです、まだ完全復旧していない中、いつサーバーごとクラッシュするかと思うと不安です。一応、バックアップとしてCDRにコピーを取ったものの、そんなのどうなるかも分からず・・・。
日経にそんな記事が出ていたのですか!?
会社で日経を取ってるのですが気付かず仕舞いでした・・(>_<)。なんとか<さくらのブログ>の奮起を祈ります。

愛おしき隣人・・・もしもご都合が合えば是非に。ただ、前作『散歩する惑星』からすると幾分不燃物のシャウトはトーンダウンしている気がしますが。
もしもご覧になられたら御感想を貴ブログで楽しみにしています。

Posted by ぺろんぱ at 2008年05月17日 19:11
ぺろんぱさん、こんにちは。
散歩する惑星のDVDをお持ちだなんてステキです♪
多くは忘れてしまいましたが、渋滞やら積まれたイエス像やらが記憶に残ってます。
比べると今作は、可愛さが感じられた気がします。
女性キャラが増えてますかね?
どちらもそれぞれに好きです〜。
ホント、あのバーに行ってみたいです。
Posted by かえる at 2008年05月18日 12:48
かえるさん、こんばんは。

>散歩する惑星
ホント、たくさんの摩訶不思議な映像がありましたよね。本作に出て来たバーも、似たような内装?のバーがやっぱり『散歩…』にも登場していましたよね、確か…。行ってみたいですね、あそこ。(^_^)

前作はどこか哲学的な匂いを感じて、大きく惹かれる反面どこまで解せているのか考えるとブルーになったりもしましたが、本作では少し近く感じたりも出来ました。
かえるさんが「可愛さも感じられた」と仰っているのが私も頷けるところです。

そうですね、どっちの世界も其々にいいですね。(*^_^*)
Posted by ぺろんぱ at 2008年05月18日 20:06
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