雨の季節ですね。
先日劇場鑑賞した『アフタースクール』(内田けんじ脚本・監督)にいたく歓喜し、総統のDVDを返却しがてら、未見だった同監督の長編デヴュー作『運命じゃない人』をつい探してしまいました。
そして・・・、ありました。この時期に誰も借りていなかったなんてちょっとした驚きでした。
同時に探していた“もう一本”(後述します)については取扱そのものがなくて残念でしたが、『運命じゃない人』をレンタルして揚々と帰途につきました。
6月の雨の匂いのする夜にひそやかに鑑賞。
story
5つの物語がパラレルに進行する新感覚ラブストーリー。監督は本作が劇場用長編デビュー作となる内田けんじ。2005年カンヌ国際映画祭批評家週間へ出品されたことでも話題になった作品。
典型的ないい人・宮田(中村靖日)をはがゆく思っていた私立探偵の神田(山中聡)は、いつまでも前の彼女のことを引きずっている宮田のために、レストランで1人で寂しそうに食事をしている女性(霧島れいか)をナンパするが……。(シネマトゥデイより)
※映画に関する掲載写真は全て映画情報サイトより転載させて頂いております。

同時進行する幾つかの物語。
俯瞰して眺めれば見えることも、自分の目からは分からない、そしてつい其処に見える自分だけの世界が真実だと思ってしまう、でもそうじゃないんだねっていうお話。
素直に、とても面白かったです。
同時進行する世界も、その見せ方といいましょうか、「脚本」そして「構成」の仕方が上手いなぁって感じました。
『アフタースクール』の時よりシンプルです。
いえ、本作だって十分入り組んではいるのですが、どこかで“誰かが練りに練ってる”という感じよりは、(タイトルにリンクさせるわけじゃないですが)それこそ“運命”的な自然な流れを物語に感じてしまったわけです。
そして登場人物が殆ど余りメジャーになっておられない方ばかりなので(主演の中村靖日さんは幾つかの映画でお見かけしていますが。ついでにヤクザの組長役の山下規介さんは有名でいらっしゃいますが。)、余計なイメージを抱かずにすんなり物語の世界に入っていけた気がしました。

『アフタースクール』と物語の世界は似ていると思います。ただ(相違点を探す必要はないのですが)本作を語る上での参考にちょっとだけ新作『アフタースクール』との比較を試みてみますと、一番の違いは、「ある人物の視点だけは絶対に変わらなかった」ということでしょうか。
『アフタースクール』では皆が皆、それぞれに騙し騙されの表裏の視点を持っていたのに対して、こっちの作品ではある一人の人間だけは“真実一路”であり、そこだけは絶対にぶれることなく、彼を軸にした周囲の世界だけがくるくる回っていたに過ぎなかったということ、です。
そこが、それこそが、この作品の“最大の魅力”のような気がしました。
つまり、「自分だけの世界が真実じゃないんだけれど、でも、そこにあるものを信じることって素敵だよ」というような・・・ね。
新作の『アフタースクール』も大好きですが、本作はおそらく私的に「もっと好き」と思えた作品です。

本作も、いろんな事実が物語の進行とともに明らかになっていきます。しかしこちらの作品は、“パラレルワールド”だけに物語の展開に従って少しずつ、パズルの完成度合いがその都度分ってくるという感じです。新作のそれが“後半一気に”謎解きに向かったというのもかなりのスリル感で楽しめましたけれどね。
唯一、後味の悪かった“ある女性の、ある行動”についても、ちゃんと最後に「取り敢えずは良かったんじゃない?」と思えるワンカットを用意してくれているところが、新作同様に心ニクイ演出です。
“運命じゃない人”って、実は“運命の人”なのじゃないかな。
真っ直ぐに生きてる人や、ほんのちょっとだけ曲がって生きてる人への、内田監督の優しいエールを感じた本作でした


さて

これは先ず映画化された劇場公開時に映画を観に行って、その後に原作を読み、かなりの年月を経た今、半身浴用に古書店で買い求めたこの本で再読に至ったわけです。以前にも書きましたが、半身浴に本を持ち込むと汗と湯気で一度でボロボロになってしまいますからね。半身浴用の本はもっぱら古書店で買い溜めています。この本も既にもうボロボロ。

これは、情緒不安定でアル中の笑子(映画では薬師丸ひろ子)と彼女とお見合いで結婚した同性愛者の夫・睦月(映画では豊川悦司)の奇妙な結婚生活、そして睦月の恋人の紺(映画では筒井道隆)を交えた三者が織り成す不思議に温かい三角関係を描いた小説ですが、その三者の感情純度は高く、小説としての完成度もかなり高いと感じる世界です。
久し振りに再読にいたり映画を観たくなって探したのですが、先述の通り(歩いて30〜40分移動して2軒廻ったものの、両方とも)「取り扱いなし」でした。
実はかつて映画を観に行ったあとで、「理想のくらし。一人では淋しいし、男と女では私にはプレッシャー。」というような超生意気な感想を書き留めていた(ついでに某映画誌に投稿までした)記憶があります。今思うと本当に気恥ずかしいですね。
映画の細部は忘れてしまっているのに、こういうことは恥ずかしさも伴って今もしっかり蘇ってくるから記憶というのは厄介なものです。でもその時にそう感じた、というのは紛れもない事実だったのでしょうね。
いずれにせよ、もう一度観たかったけれど残念です。

笑子はアルコール依存症なのでいろんなシーンでいろんなお酒を飲むのですが、頼もしい飲みっぷりもあれば、時に痛々しい飲み方をするのですよね。でもそれを睦月は大きく包み込むような優しさで(時には自分を責める苦しさで)見つめているのです。
それぞれの優しさ、それぞれの思いやりが、またそれぞれを傷付けたりもするのだけれど、やっぱりまたその優しさを求めてしまうのですね。
笑子は、ビールはお水のよう。
紅茶にはラム酒。
アイスクリームはコアントロー味のもの。
朝からホットケーキにシャンパン。
アイリッシュウィスキーのダブル、オン・ザ・ロックで。
ウォッカとカルーアのブラック・ルシアン。
バーボンのミントジュレップ。
そしてジンにキュンメルを入れたもの。(笑子はこれがお気に入りのようです。)

キュンメルというのは「コルンをベースにキャラウェイ(フルーツの様な爽やかな香りとほろ苦い甘みがあるハーブ)とスパイスを調合したハーブの蒸留酒」で、「爽快なキャラウェイの香りがあふれ、すっきりした切れ味のよいシュナップス」だとか。
今度酒販店でキュンメルを見つけたら、買って帰ってキュンメルとジンのカクテル(1対1をシェイク)を作ってみようと思います。
日々、きらきらひかれ

タイトルがどうにもベタなのが気になりますが・・
衛星での登場を待ってみるとします(=^_^=)
タイトル、ベタですか??私はこのタイトル、とても気に入ったのですが。^^;
BSでの放映があったら是非ご覧になってレヴューをアップして下さいね!
「運命じゃない人」見てみたいですね〜
今はとてもじゃないけど余裕がないので
暇になったらDVD借りてみてみます。
題名もちょっとひねってありますね〜
そうですね、気持ち的には今が「旬」??、、、
でもお時間が出来た時にどうぞゆっくりご鑑賞
下さいね。(^_^)
「運命じゃない人」そーなんです♪良いんですっ♪♪映画館で2度観てしまいました♪♪♪
とても好きな映画です(^^/
なので「アフタースクール」も、とっても楽しみ(ってまだ観に行けてない(;_;)です。
ガリ・リッチー監督作品、伊坂幸太郎好きにはたまりません〜!
ええっ!映画館で二度もご覧になられたのですかっ!それは相当な惚れ込み度ですね!(^_^)
しかしスクリーンであの世界に触れるとテンション上りそうです!
ガイ・リッチー・・・『スナッチ』ですね。
伊坂幸太郎・・・『アヒルと鴨の…』?『死神の精度』もそうなんですよね??
ううぅ・・、しかし実は私はどっちの世界もまだ未体験ゾーンです。同じ路線なら私もハマりますか?(^_^)
「きらきらひかる」はすごく好きな作品でした!
江國香織さんの本は、読んでて心地いいものと、正直全然入っていけないものがあるんですが、この作品は何か惹かれるものがあって何度か読んだ記憶があります。
映画は観てないんですが、今思うと結構豪華キャストですよね。
それにしても「アフタースクール」(「運命じゃない人」も)面白そうですね!
今後の楽しみです。ヾ(〃▽〃)ノ
江國作品・・・そうですね、中でも“どこか病んでる人”がでてくる小説なんかは江國さんの内なる表情が見え隠れして私は好きです。
映画は・・・トヨエツさん若い!です!
今でこそアクの強い役柄を多くされていますが、こんな紳士的で慈愛に満ちた役柄は正に適役だと感じます。
『アフター・・・』、もしご覧になられたらレヴューを楽しみにしています!