2006年11月12日

明日へのチケット

 11日、雨天の土曜、梅田スカイビル内ガーデンシネマに『明日へのチケット』を観に行きました。
梅田スカイビル前には大きなクリスマスツリーのオブジェが夕刻の点灯を待っていました。
               Xmasu.jpg 点灯を待つツリー
  
『明日へのチケット』は3人の名匠、ケン・ローチ、アッバズ・キアロスタミ、エルマンノ・オルミによるコラボレーション作品。
この映画が私自身の“明日へのチケット”になればいいいなぁと思いながらシアターに入りました。

story
中央ヨーロッパからローマへと走る列車内を舞台に、偶然乗り合わせた人々のドラマを巨匠たちが巧みに織り上げ描いたオムニバス作品。
出張先で出会った女性へ淡い思いを馳せる年配ビジネスマン、夫の墓参りに向かう傲慢な老婦人にボランティアとして付き添う若者、父と再会するためにローマへ向かう貧しい移民の一家、そして念願のサッカーの試合を見るためになけなしの金をはたいて旅をするスコットランドの3人の少年たち。たった一枚のチケットの限りない価値ひとつの列車の旅が、様々な人生を映し出していく
(シネカノン公式サイトより)

 
 観る前に、ストーリー的に最も興味を抱いていたのはエルマンノ・オルミ監督の作品
「幸福の予感に余りに無関心であった」為に恋愛から遠ざかっていた初老のビジネスマンは、出張先で帰途を急ぐ自分の為に、労して列車の乗車券を手配してくれた相手企業の秘書に心のざわめきを禁じえない
恋と言うには何となくはばかられる年齢でありながらもその女性に心惹かれいく男性がどう描かれていくのかとても興味があったわけですが、幸福の予感を感じつつその感情をにわかには受け入れられないで戸惑う姿が、とても丁寧に、老紳士の心の襞をなぞるかのように描かれていて、もう若くはない私自身にさえ「もう一度、その予感の中に身を投じることも許されるのかもしれない」と思わせてくれました。
             T0004849a.jpg 

しかしながらその手に余る思い・・・あまやかさと切なさと不安と無防備さからくる臆病さと、それらがない交ぜになった時、人は人に対して優しくなれるのですね・・・最期に彼がとった行動は、まさしくそんな感情のなせる業なのだと思いました。
“恋の力”は大きい・・・のですね

 
 監督として興味があったのは二作目のアッバス・キアロスタミ作品
この監督は、熟知はしていませんが好きな監督の一人です。

夫を無くした傲慢な高齢の婦人が、兵役の一環として仕える若い男性をまるで苛め抜くようにこき使い、振り回します。
あることがきっかけで青年は婦人のもとを去って一人で再出発する決意をし、婦人は降り立った駅に一人取り残され途方にくれる。
青年にとっては結果的に希望に繋がる列車の旅となったけれど、婦人にとっては現実を突き付けられ深い哀しみの淵に立たされる旅となったわけです。
             1001285_03.jpg
 
三作の内、この一作のみが非常に深い絶望感が漂います
余りの傲慢さに観ていて不快感がつのる一方でしたが、列車内で逃げて身を隠す青年を探し続ける婦人の姿は、老いゆき、愛されることの無くなった者の悲哀を強烈に感じさせて胸が詰まります

私は全編に“生と性”の匂いを感じました
老いゆく者が若さ溢れる者に対する劣等感は失われた性によるものかと・・・。権力と主従の力でその劣等感を覆い隠そうとする婦人
一方の青年は列車内で出会った少女達に、そして彼女らの持つ若きエロスに、まだ自分が十分に自由と希望を持て、エロスを享受できる人間であることを感じてしまうのですね。

姿を隠した青年を血眼になって探す婦人は、最後の最後に自分の中に「性」の残滓を追い求めるかのようで、私は痛みすら感じました
はたして婦人には、哀しい“明日へのチケット”となったわけですね。

 三作目は新作『麦の穂をゆらす風』の公開真近の、巨匠ケン・ローチ監督作品
スコットランドの片田舎からサッカーの試合観戦を楽しみにしてきた三人の少年は、乗車券が無くなったことで、同乗していたアルバニアの貧しい少年が盗んだと疑います。
              明日への.jpg

一方的に疑い暴言すら吐くスコットランドの少年に嫌悪感すら感じ、また、結果的に疑いが的中していたことで、観る者・私は、その不条理世界に暗澹たる思いがします。

しかし、このサッカー好きの少年達が最後にとった行動は“カタルシス”さえ感じさせるもので、この三作目が「明日へのチケット」というタイトルに最も相応しい作品だったと言えます

彼ら三人にとっては大きな成長となった列車旅だったと思いました。
そして観る者も、この作品が最後に来たことで「明日への希望」に繋がったのではないかと思います。


 さてさて、モノゴトは変化するものなのでしょうか・・・・私も仕事等を含めた状況が変化し、慌しく、且つ何かと気ぜわしい日々を送っております。

以前何度かご紹介したJazzBarウィッシーウォッシーのママさん「節目の乾杯に」と私にプレゼントして下さったシャンパン・・・
とても美味しいシャンパンだったので「シネマの後の乾杯」としてご紹介します。

少し濃い色合いのシャンパンは、力強い味わいであることを期待させてくれます。
期待にたがわず、しっかりと飲み応えのあるシャンパンでしたよ。
              シャンパン2.jpg  テタンジェ

「新鮮な果物や、イーストやブリオッシュのようなこくのある香り、エレガントで複雑な味わいがあり、口中でも優れた芳香の広がりがある。新鮮な果実味や蜂蜜の風味があり、生き生きとしてフレッシュな印象を与える、大変魅力的で艶やかな味わいのシャンパン」とはこの商品のコピーですが、エレガントな中にもコクがあると言うのは飲んでみて大きく頷ける特長でした。

ママさん、ありがとうございます。
映画よりもこのシャンパンが私にとっては「明日へのチケット」となりました





posted by ぺろんぱ at 16:42| Comment(6) | TrackBack(5) | 日記
この記事へのコメント
中々面白いコラボ映画ですね、チェックします。
ただ、なんかちょっと悲しい映画なのかな?ぺろんぱさんの言葉を見ていると「明日への....」という割りに厳しい現実が出ているように読めたんですが....読み違っていたらすみません。

PS スカイタワー下のクリスマスツリー良いですよね、メリーゴーランドもあるしね。
  ドイツフェスタいつも楽しみにしています。
Posted by west32 at 2006年11月12日 19:43
こんばんは┌|∵|┘
ご無沙汰してました(^^;

恥ずかしながら『明日へのチケット』のことは今この瞬間、初めて知りました。
予告見ましたがすごく”そそる”映画です☆本当に匂いがしてきそうな雰囲気の予告。

実は電車好きだったりするので、その点でも絶対はまりそうな映画です。
貴重な情報をいただいた気分です。ありがとうございます┌|∵|┘

ところで「虹の女神」についてなんですけど、オーマイニュースでレビューを書いちゃってます笑
ブログは匿名なので、オーマイニュースのことは記事にしてないんです(^^;
でも、何かのきっかけでいつも来ていただいている方には連絡したいなって思ってました。
「虹〜」以外にも記事にしているのでよかったら読んでもらえるとうれしいです。
http://www.ohmynews.co.jp/Search.aspx?query=%E8%8B%A5%E6%9E%97%E9%A0%86%E5%B9%B3&idxname=omn_name&type=searchbox
Posted by dk at 2006年11月13日 01:43
west32さん、コメントありがとうございます。
私が悲しい面を大きく捉えてしまっただけで、一作目・三作目のみならず、二作目さえ、見ようによっては「明日へ」通じるものはあると思います。

スカイタワー下のBeerフェスタ、行かれてるんですね。どこかで擦れ違ってますね、きっと。(^_^)
Posted by ぺろんぱ at 2006年11月16日 22:46
電車好きのdkさん、ご無沙汰です。(^_^)
三作其々監督さんが違うので一粒で三度美味しい、って感じ?ですか?

「オーマイニュ−ス」、読ませて頂きました。
凄いですね、いいレヴューを書いてらっしゃいますね。教えて下さっ嬉しいです、ありがとうございます。
Posted by ぺろんぱ at 2006年11月16日 22:53
こんばんは!おじゃましまぁす。
やっと観ましたのでTBさせて戴きました。

>老いゆく者が若さ溢れる者に対する劣等感は失われた性によるものか
・・そぅ、かもしれませんね。
私はストレートに、若さ(細胞、力)への嫉妬だと思いましたが、、、
あの未亡人への明日のチケットを手渡したのは、あの逃げてしまった青年だったのでしょうね。
腰を上げて、人に助けられることを感じて、歩き出して欲しいですね。
Posted by kira at 2007年10月06日 23:51
kiraさん、こんにちは。

そうなんですよね、一見救いのないような二作目も、実はあの老婦人にはちゃんと明日へのチケットが渡されたのですよね。
現実と向き合い、本当の意味での自尊心を取り戻さねばならない生き方が・・・。

TBもありがとうございます。
Posted by ぺろんぱ at 2007年10月07日 17:58
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