2006年11月19日

トゥモロー・ワールド

 雨が降ると“冷たい雨”になる季節になりましたね。
18日の土曜、映画館を出ると冷たい雨が降っていました
OSミント神戸にて『トゥモロー・ワールド』(アルフォンソ・キュアロン監督)を鑑賞の後のことです。

story
 西暦2027年、人類は18年間の長期に渡って子どもが生まれない未曾有の異常事態が続いており、このままでは人類絶滅の危機は免れなかった。そんな中、国家の仕事に就くセオ(クライヴ・オーウェン)はある日、かつての妻ジュリアン(ジュリアン・ムーア)が率いる地下組織FISHに拉致され、人類存続に関係する重要な情報を握りる。彼に課せられた使命は人類の未来を変えるかもしれない一人の少女を救うことだった。人類の未来はろか自分の将来でさえ興味を示さないセオだったが……。 (シネマトゥデイより)
      TW.jpg 写真がぼやけてますね、すみません   
      
 初めて映画館でチラシを手にした時から、この作品はSF作品だと信じて疑いませんでした。・・・が、これはSF的要素は殆どなく、絶望的危機状態のカオスの中での戦いと生命の尊厳を問う「人間ドラマ」だったと言えるでしょう。

 ストーリーはいささか、いえ、かなり説明不足です。

なぜ人類が誕生しない事態に陥ったかについては「人間が生殖能力を失くした」としか語られていませんし、ジュリアンの率いる組織の存在理由も良く分かりませんセオとジュリアンの確執もあとになって漸く沿革が分かる程度で、そのジュリアンも、闘争の中で絶命(しかも結構早い段階で)し、その後は登場しません

2027年という設定も、セオが権力者である従兄弟を訪ねるシーンでかろうじて未来を匂わせる情景や小道具が映し出されますが、却ってそこだけが浮き上がった感じで、「未来」を想像させるに於いてあまり効果的でなかったように思いました。

はじめは混沌とした状況の中でテロや難民の虐殺が続くばかり・・・、爆音と銃声と血と汗と埃と汚れ切った街並みと死体ばかりのオンパレードで気が滅入るばかりでした。
人類が誕生しなくなったのは、実はそういう「誕生しても幸福に生きられない世の中」が来ることを人間が本能的にキャッチしていたからではないのかとさえ思ってしまう荒廃振りが描かれています。
TW2.jpg ←この爆音には軽く体が飛びました
              
しかしその考え方はあながち外れてはいないかもしれません。
後になって知ったことですが、監督は映画の中で人類が誕生しなくなった理由を「科学的に説明するつもりは毛頭なかった」そうです
それだけ、今の世の中はあらゆる危機を含んでおり、近い将来何がしかの異変は起りうることを監督もしくは我々自身もどこかで薄々察知しているということが言えるのではないでしょうか

 
 先述した「爆音と銃声と血と汗と埃と汚れ切った街並みと死体ばかり」の映像の中、しかし映画はついにクライマックスを迎えます。

人類の未来を変えるかもしれない少女・・・とは、つまり、彼女は身篭っていたわけですが、荒廃と無秩序の廃屋同然のホテルの一室で赤ちゃんを出産した彼女がその赤子をしっかりと抱き、戦闘の中を脱出するシーン

銃声にも負けないくらいに泣き叫ぶ赤ちゃんの声に、18年振りに生命の誕生を目の当たりにした茫然自失の兵士達は、「打つのを止めろ!」と叫び、彼女の為に道を空けようとします。誰にも止められなかった戦闘と殺戮を、生命の産声が救ったわけです。
銃声の止んだ数分間、ここがこの作品の頂点だったと私は思います。・・・「生命の尊厳」。                TW.jpg
            
ふと、本当にふと、「人間が戦争を起こすのは子どもを生んだ事のない男達が政治を担っているからだ」という某作家の著述が頭を過ぎりました
私は女だけれど妊娠も出産も経験は無いので、この著述が実は真には分かっていなかったかも知れませんが、この映画のこのシーンを観て、それが感覚的に捉えられたような気がしました。

人間が人間の危機的状況を招いた・・・。
そしてその危機を救うのもまた人間の力でしかないのだ・・・というようなメッセージだったのでしょうか。


マイケル・ケインがヒッピー的な、しかし人間の尊厳を失わず生き、そして死んでいった老人を演じていてとても良かったです。
ジュリアン・ムーアはもっと長く登場して欲しかったです。
あと、最近の鑑賞作『キンキー・ブーツ』でドラッグクイーン役だったキウェテル・イジョフォーが組織の兵士役で出ていましたが、その余りの違い振りに最初は彼だと分かりませんでした。

そうそう、セオの従兄弟役というのが『記憶の棘』でニコールの再婚相手役を演じていた悪役顔ダニー・ヒューストンでしたが、今回もやっぱり「未来における権力者」の役柄なのに顔だけが「一昔前のマフィア」でした残念〜!ふらふら

 映画の最後に見える“希望”の光・・・しかしその希望を担うあの「ヒューマン・プロジェクト」って一体何者なの???考えてみればその説明も皆無でした。それはないんじゃないでしょか・・・監督。
原作本ではどうなのでしょうね。


 劇中、セオはウィスキー<BELL'S>のポケット瓶を、まるでペットボトルのウーロン茶をがぶ飲みするように飲みます。
そうでもしないとやってられないんでしょう、あの状況の中では。
scotch-bells.jpg  BELL’S
ウィスキーを「生(き)」のままで飲むのはよくあるシーンですが、セオは余程<BELL'S>がお気に入り銘柄だったのでしょうか。

ウィスキーを飲むのもいいなぁと思いつつ、帰りにはジャパニーズ・スピリッツの焼酎、それも芋焼酎をいただいて帰ることにしました
             isa.jpg
何度か登場の刀屋さんにて。
お隣のお客人が飲んでおられた芋<伊佐大泉>をロックで。
これは「芋の香を存分に味わいたい時にはお勧め」の「コスパ・大」の芋焼酎だそうです。確かに芋の香と味わいはしっかり。
グラス隣のディッシュは<ひよこ豆とホウレン草の煮込み>です。かすかに薫るオリエンタルなスパイス香はクミンだそうです。
マスター氏が控えめに使っておられるクミンなので、このお料理は日本酒にも「合い」ですよ。

 映画では滅亡の危機を迎えるのは人間だけのようで、犬も猫も、混沌とした状況ながら逞しく生きていました。
特にセオの足にじゃれつく仔猫は可愛かったですぅかわいい

そう言えばウチの猫君は恐れていた持病が再発し、検査通院の日々です。ふぅ〜。

posted by ぺろんぱ at 13:34| Comment(4) | TrackBack(2) | 日記
この記事へのコメント
ぺろんぱさん、寒くなりましたがお元気でしょか?猫仲間のkです。えー、映画館には殆ど足を運ばないんで、最後の猫ちゃんの心配ばかりしております。うちのナナも持病持ってましてねぇ、今は治ってますが、もし再発したら獣医さんに頼るしか無いです・・・
でもきっときっと!ぺろんぱさんの愛情に応えてくれますよ!気持ちはもうバッチシ伝わってますし、動物って素直やからその愛情だけで急に回復したりしますよね。大丈夫ですよー!
Posted by kyoko at 2006年11月25日 17:34
kyokoさん、コメントありがとうございます。(T_T)

猫って不思議で、飼い主というか共同生活者のストレスを受け止めるところがあるみたいです。あの子が再発したのも、昨今の私の環境変化に対するストレスを一心に受け止めてくれたからなのかも、と思っています。

うう・・・ナナちゃんもどうぞ再発無きよう・・・また猫談義してください!!
Posted by ぺろんぱ at 2006年11月26日 19:31
Posted by at 2006年11月26日 19:38
早速のレスありがとうデス〜
でも、ストレスなくなったらいいですねぇ!笑
動物って素直だからーストレスの減った飼い主さんに応えてくれますよ!うんうん
Posted by kyoko at 2006年11月27日 17:23
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