2019年07月28日

ワイルドライフ     やっぱり幸せのかたちはひとつ


 シネリーブルで『ワイルドライフ』(ポール・ダノ監督)を観ました。

当初はあまり興味を抱いていなかった本作ですが、ふとしたことでちょっと観てみたい気になり今回の鑑賞になりました。

観終わって・・・・・グレもせずブレもせず、決して自分を見失うことなく成長していったジョーをただただ称えたい、です。


                        ワイルドライフ チラシ - コピー.JPG

Story
  1960年代、モンタナ州の田舎町で暮らす少年ジョーは、仲の良い両親ジェリー(ジェイク・ギレンホール)とジャネット(キャリー・マリガン)のもとで慎ましくも幸せな毎日を送っていた。ところがある日、ジェリーがゴルフ場の仕事を解雇され、山火事を食い止める危険な出稼ぎ仕事へと旅立ってしまう。残されたジャネットとジョーもそれぞれ仕事を見つけるが、生活が安定するはずもなく、優しかったジャネットは不安と孤独にさいなまれるようになっていく。(映画チラシより)


WILDLIFE(ワイルドライフ 野生生物)って、夫婦、そして親としての姿を捨て去ってしまったあの両親二人を表しているのでしょうか。家族という形の成立しない世界の生き物として。
親だって人間だから完全ではいられない・・・でもあの二人には何だか情けなくて怒りを通りこして悲しくなってしまいました。
プライドを優先させたというけれど、山火事消火の仕事に自ら従事したのなら息子の前であのような事件を起こすなんて到底考えられない父親ジェリー。 母親ジャネットには、寂しさと不安からの不倫を貧窮と子どものせいにしてほしくなかった思いです。
夫婦二人の亀裂はジェリーの失業が切っ掛けになっただけで、何か目に見えぬすれ違いが二人の間にずっと堆積していたからに違いないと思いました。
彼らが一言でいい、ジョーに「ごめんね」と言えていたら成り行きはきっと変わってたはず。

だから本作はひたすら息子ジョーのために、ジョーのためだけに最後まで見入った感がありました、それは本当に。
ジョーを演じたエド・オクセンボールドから受ける疑いようのない真っ直ぐな印象に引き込まれたも一因でした。

だからでしょうか、ラストショットにはジョーの気持ちを思って自然と涙が出てきて止まらなくなりました。物語の展開を冷静な思いで観ていたつもりだっただけに、急に涙がこみあげてきたのは自分でも驚きでした。
ジョーがアルバイトをしていた写真スタジオ店主の「人は佳きことを記録に残そうと写真を撮る。幸福の瞬間を永遠に残したいと思うために。」という言葉が脳裏に蘇ったからでしょうか。
ジョーはただひたすら両親と一緒のあたたかい暮らしを望んでいたのだなぁと思えたからでしょうか。

あのラストショットは秀逸でした。

監督を務めたポール・ダノは俳優としても名を馳せていて、しかし「いつか映画を撮る時はきっと家族についての映画を撮る」語っていたそうです。ポール・ダノ自身にとって、本作のテーマには胸を深く去来するものがあってのことなのでしょうね。

今回も佳き作品に出会えてよかったです。



    自社ワイナリーでの白 - コピー.jpg チーズ3種 - コピー.jpg

初めて入ったお店での白ワインとチーズ。
お酒なしには生きられない・・・こんな私もある意味ワイルドライフ。



posted by ぺろんぱ at 21:22| Comment(4) | TrackBack(0) | 日記
この記事へのコメント
また、おじゃまします!

子供が辛いのは苦しいですよね・・。
その秀逸なラストショットてのが気になるところです。

「チーズの図」いっちゃん手前はミモレットですかいね。
(ミモレット好きです←キッパリ)
ミモレットかいなぁと思たらチェダーチーズやったってこともありますね。(値段見たら検討つくやろ)(・・・)

ほなまたです。
Posted by ビイルネン at 2019年07月30日 12:40

ビイルネンさん、お越し下さり嬉しいです。

私は子供を持った経験はありませんが、最も弱い立場のものが最も虐げられる構図はやはり辛いですよね。

一番手前のチーズはミモレットです。
イイ感じの“パッサパサしっとり感”でした^_^。
でもチェダーもイイですよね、ゴーダも。

美味しいチーズとお酒で締めくくれる夜はそれだけで幸せなのでしょうか。



Posted by ぺろんぱ at 2019年07月30日 19:39
酷暑の中、決してスカッとしないであろう(笑)この映画を見てきました。
「荒野にて」と同様に、眼差しで気持ちを表現する少年の演技力に引き込まれ、
辛い気持ちになりました。
キャリー・マリガンの危うさといい、俳優陣の演技が上手いのでしんどさ倍増です(笑)

このウツウツとした地味さは、なんとなく俳優としてのポール・ダノの味にも
共通するような?
チラシにもなっているこのショットの色合いといい、映像にもセンスを感じる作品でした。
Posted by Yururi at 2019年08月04日 12:26

 Yururiさん、お越し下さり嬉しいです。

確かに、決してスカッとはしませんねぇ。
キャリー・マリガン、『17歳の肖像』の頃から確実にキャリアとお歳を重ねて別人のような、(ある意味)貫禄の演技でした。ジェイク・ギレンホールも狂気一歩手前のキレ方が怖くて。

ポール・ダノさんは、私は多分『リトル・ミス・サンシャイン』しか観ていなくて。ウツウツした地味感をYururiさんと共有したいのにできない今の歯がゆさ…^^;。申し訳ないです。
でも仰る通り“センス”を感じる一作でした。

あと、あの不倫相手のミラー氏の物語の中での立ち位置みたいなものを熟考しました。単なる俗物として切り捨てられない何かがあって。演じたビル・キャンプの奥深さによるところも大きいのですかねぇ。




Posted by ぺろんぱ at 2019年08月04日 20:03
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。
この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/186340540
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。

この記事へのトラックバック