この数日で(しかも短いスパンで)全く真逆に位置するような映画を二本観ました。
難しいこと一切考えずにシートに身を委ねて笑って観られた映画と、観終わった後もずーっと尾を引いていろんなことを考え続けてしまってる映画と。
前者は『引っ越し大名!』(犬童一心監督)、後者は『命みじかし、恋せよ乙女』(ドーリス・デリエ 脚本・監督)です。
『命みじかし…』は邦題から受け取るイメージと大きく違う作品でした。
先ずは鑑賞時系列で『引っ越し大名!』の感想をサクッと。
story
姫路藩主の松平直矩は、幕府から豊後・日田への国替えを命じられ、度重なる国替えで財政が困窮している上に減封と、藩最大のピンチに頭を抱えていた。ある日、人と交わらずにいつも本を読んでいて「かたつむり」と呼ばれている書庫番の片桐春之介(星野源)は、書物好きなら博識だろうと、国替えを仕切る引っ越し奉行に任命される。 ※映画情報サイトより転載させて頂きました。

その時代にあってはきっと凄ーく大変であったろう国替えという出来事を、現代風コメディとしてシンプルに上手くまとめ上げられた一作だったと思います。
違う視点、違うアプローチの仕方を取れば感動の一大巨編にも出来たであろう史実ですが、軽妙なやりとりで現代のサラリーマン世界にも通じる悲喜交々(サラリーマン世界を想定したという事は犬童監督ご自身が語っておられた事です)がたっぷり。ちょっぴりBL要素も散りばめられていて、“何となく⁇ミュージカル”っぽい演出も。
“やな奴”的な上司たちの冷ややかな期待?をいい意味で裏切って自分なりの誠実さで最悪の事態を乗り越えていく春之介。
勿論それは高畑充希演じるヒロイン於蘭の助力があってこそのものでしたけれど、周囲の心ある人間はその一歩一歩をちゃんと見ているんだなぁーって。
だから、ラストのあの流れは予定調和的ともとれるかもしれませんが素直に真っ当に行きつけばああいう形になって然るべきことなのです。第一、そうでなくては報われません。
気楽に楽しんだと言いながらも、史実に基づく内容であり、勉強にもなりましたよ。
国替えの指南書(実存)曰く…
●歌こそ人の心を一つにするものなり
●整理とは捨てることなり
●体を保て、たどり着くまで
なるほどの御指南でした。
リストラされ帰農した侍たちが開墾した田畑を俯瞰で捉えた画は実に美しかったです。長年にわたる自己との対峙、忍耐、努力、その上にあった開眼。
やっぱり人減らしが一番苦悩を伴うものだったと思うので「その後」をきっちり描いてもらえたのは嬉しかったですね。
大殺陣を披露する高橋一生さんの剣術バカ的なキャラが面白かったかな。あとは直球すぎるくらいドンピシャの配役ばかりで(友情出演の向井理さんの吉保、姫路出身の演歌歌手・丘みどりさんのお妾さんは遊び心で)安心安定の布陣。
ピエール瀧さんの出演シーンはそのまま上映されてました。
映画はテレビとは違って見たくない人は見に行かなければよいのだし、それでいいのじゃないかなぁって思いました。どこで線引きするかは難しいところかもしれませんけれど。
さてさて同じお店でそれぞれ違う日の日本酒の画、二葉。
それぞれ違う思いを抱えての独り乾杯。


『命みじかし、恋せよ乙女』の感想もなる早でまとめてアップしたいと思います。
