2019年12月18日

シュヴァルの理想宮     真に築いたもの


 シネリーブルで 『シュヴァルの理想宮』(ニルス・タヴェルニエ監督) を観ました。

リーブルでチラシを手にしてからずっと観たくて公開を待っていました。(無事に観ることができてよかった。)

本作、何がシュヴァルをそこまで引っ張り続けたのか・・・。
観終わって感じたのは、言えなかった家族への想いが彼の背を押し続けたということ。彼は宮殿を造ることで家族(の絆)を築き上げたのだということ、でした。


                        シュヴァル チラシ - コピー.JPG

Story
   フランスに実在する建築物で、ひとりの郵便配達員の男が33年もの歳月をかけ、たった1人で完成させた手作りの宮殿「シュバルの理想宮」の実話を映画化したヒューマンドラマ。
フランス南東部の自然豊かな田舎町。寡黙で空想好きの郵便配達員シュバルは、変わった形の石につまずいたことをきっかけに、愛娘アリスのために「おとぎの国の宮殿」を建てることを思いつく。さまざまな苦境に直面し、周囲の人々にバカにされながらも、来る日も来る日もたった1人で石を運んでは積み上げ続けるシュバル。そんな彼に、過酷な運命が容赦なく襲いかかる。                                                 ※映画情報サイトより転載


  宮殿は西洋の美というより東洋的な美がふんだんに感じられ、カンボジアのアンコールワットをイメージさせる外観です。しかしそこには宗教観というものは無くて、あるのは一つ一つの石に込められた愛と家族への想い。

娘のために築こうとしたおとぎの国の宮殿ですが、それは娘のためだけではなかったのですね。
それはまだ幼かった頃に手放してしまった息子シリルのためでもあり、彼を支え続けた二度目の妻フェロメールのためでもあり、更に自分自身のためでもあったわけです。

寡黙で無口で不器用を通りこして一つのことにしか目を向けられないシュヴァルに歯がゆく思い、彼の持って生まれた性質と思いながらも「どうして!?」とも思ってしまうのでした。
でもこの映画、そんな彼の秘めた想いが終盤になってどーんと押し寄せてきます。どーんと。
同時に、生き別れていた息子シリルと妻フェロメールのシュヴァルへの愛もやっぱりどーんと押し寄せてきて、エンドロールが終わるまで涙をぬぐい続けていました、私。

家族の愛はやはり尊い。
特に妻フェロメールの、シュヴァルを守り、育て、不屈の力を与えた強くて深い愛には心打たれました。
夜中にランプを手に帰ってこぬ夫を探すフェロメールが、疲れ果てて宮殿の隅で眠り込んでしまっていたシュヴァルを見つけてそっと寄り添い眠るシーンは、今思い返して最も好きなシーンです。何か神聖なるものに触れさせてもらえたような感じがしました。

演じたレティシア・カスタは、最初は地味に思えたのに表情の一つ一つがとても印象的でどんどん魅せられてゆくのでした。勿論シュヴァルを演じたジャック・ガンブランも唯一無二のキャスティングと思わせるほどに素晴らしかったと思います。一度見たら忘れない顔です、ジャック・ガンブラン。

ずっとシュヴァルへの秘めた想いがあったと思われるもう一人のあの女性にも心惹かれるものがありました。
きっと淋しくて悲しい女性なのだろうなぁって。あの女性からの視点でもきっと深い物語が紡げるだろうなぁって。
その女性の想いは少しの台詞と一瞬の眼差しなどから勝手に感じたことですが、ああいう、観る者に想像を委ねる演出も素敵だなと感じました。


33年間。
宮殿造りに費やした長い長い年月。
それが“いろんな意味で”報われた時、スクリーンを前に私も安堵し、神に感謝したいような清らかな気持ちに包まれました。

ラストの、灯りに照らされた宮殿は言葉に喩えようもないくらい美しかったです。ぴかぴか(新しい)

年の瀬に良い映画に出会えました。 出会えたことに感謝です。


          
              KWにて - コピー.jpg KWでのレア酒 - コピー.jpg


 友人のリビングにお邪魔したかのような、ソファーもある神戸のお店での乾杯の画です。
ママさん手作りのメンチカツにタコさんウィンナーが可愛い。
珍しいお酒をソーダ割でいただきました。ラベルはワイルドですが、ほんのりとレモン香がお洒落に香るウィスキーでした。

それにしても33年って長い年月。
シュヴァルさんがそれを成し得たことが本当に良かったです。

「ありがとう」と 届かぬ言葉を吐いてしまいました。




posted by ぺろんぱ at 20:47| Comment(4) | TrackBack(0) | 日記
この記事へのコメント
また、おじゃまします!

ええ感じそうな映画ですが、自分、監督の名前にひっかかってしまいました。−タヴェルニエーて・・ひょっとしてベルトラン・タヴェルニエの息子?自分の好きな映画「ラウンド・ミッドナイト」の?(あと、ー田舎の日曜日ー位しか観てないものの)
で、ちゃちゃっと調べたらやはりそうでした。自分が知らんだけやったかもしれませんけど。(かんにん)

33年、すごいですね。
自分の33年を振り返ると・・トホホとなります。(ウゥッ)

ほなまたです。
Posted by ビイルネン at 2019年12月18日 21:37

ビイルネンさん、ようこそです。

>ベルトラン・タヴェルニエの息子?

そうなのですね、私は知りませんでした。
お父様の方のタヴェルニエ氏、哲学者みたいな凄くイイお顔をされていらっしゃいますね。監督された作品も興味深いです。
「ラウンドミッドナイト」って・・・そういえば少し前に「記事」で拝読いたしました! びっくりです、そして改めて勉強になりました、ありがとうございます。(*^-^*)

私の33年はトホホ的なものかもしれませんが、いえいえ、ビイルネンさんのその年月はきっと何かを築かれてこられた日々と思います!


Posted by ぺろんぱ at 2019年12月19日 19:22
久しぶりに、ぺろんぱさんと同じ映画!
しみじみと良い作品で、自然と感想を書き留めておきたくなりました。

>シュヴァルへの秘めた想いがあったと思われるもう一人のあの女性
なるほどー。色々な受け止め方があって面白いですね。
単に、皆と違うものを排除する気持ちの強い人だと思ってました。
ラスト近くの二人のちょっとした触れ合いは良かったですね。

なんといっても、ジャック・ガンブラン!
大好きな映画「最初の人間」(2011年)の主役だった人とは気づきませんでした。
全く違う印象でちょっとビックリです。
レティシア・カスタも魅力的でしたね。
年明けにリーブル梅田でかかる「パリの恋人たち」にも出演してるみたいです。

それにしても、建築を学んでないのに一人であの宮殿を作ったというのはもう、
奇跡としか言いようがない。
この目で直接見てみたいものです。
Posted by Yururi at 2019年12月20日 18:52

Yururiさん、お越し下さり嬉しいです。同じ映画を同時に語らせて頂けるのも嬉しいです!

その女性への見解は勝手な私の憶測で、ラスト近くのあの短い語らいで自分の中で意識操作してしまったのかもしれませんね。でも何となく初めのシュヴァルを睨むような眼差しに彼女自身も気付かない何かがあったのかも…とか思っちゃいました。
でも鑑賞後にこういうことで語り合えるのも凄く嬉しいことです、ありがとうございます、Yururiさん(^^)。

>「最初の人間」

ネットで見てみましたが本当に別人のように“素敵な”ガンブラン氏ですね!(本作のガンブラン氏も違う意味で素敵でしたが…^^;)でも作品イメージでは何となく本作と重なるところがあるのもこの俳優氏の魅力なのでしょうね。「最初の人間」、原作ともども気になります。
「パリの恋人たち」のレティシア・カスタさんもやはり本作とはイメージが違う華やかさです。それが俳優魂の為せる業なのかもしれませんね。
リブ梅の「パリの…」も気になります。

この現存の宮殿は私も実際に観てみたく思いました。
今まではメジャーな観光地としては取り上げられていなかったのか、あまりアクセス的にはよくなかったみたいですが凄く勿体ないですよね。
あ、、、でもマイナーだからこそ目指して苦労してソレと出会う醍醐味があるものかもしれません。
・・・映画で観るのと違った感動がある気がしますね。

Posted by ぺろんぱ at 2019年12月21日 19:59
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