2020年10月25日

樋口一葉

 
 姫路文学館で開催中の 特別展 『 樋口一葉 その文学と生涯 ― 貧しく、切なく、いじらしく ― 』 行ってきました。

                         一葉展 - コピー.jpg  

樋口一葉。
わが国で初めて、文筆で一家の生計を立てることを志した女性。
肺結核によりわずか24歳と8か月でこの世を去った人。

代表作とされる「にごりえ」「たけくらべ」は教科書でその題名を幾度も目にしたし、美しく凛とした風貌は印象に深く今やお札の顔にもなっているし、ずーっと樋口一葉という女性を‘知ったつもり’、代表作も‘読んだつもり’になっていました。
けれど本展に行ってみて、実はこの人のことを殆ど知らないに等しかったことに気付かされました。

貧しさによる苦学の女性作家だという程度の知識でした。
実は名家で比較的裕福な家に生まれ、幼少期の頃から父親は女性である奈津(一葉の本名)が学ぶことへの理解も深かったようです。しかし母親の強い反対と世間の‘女性に学問は不要’との風潮で学業の断念を余儀なくされた奈津は父親の事業の失敗と兄と父の相次ぐ死去により生活が一変、その後の貧しさと母妹を養わねばならなくなった苦労は壮絶なものであったようです。

展示資料には【 終始 衣類等の質入れをし、家財道具を売り、売れる限りは売り尽くし、借りられる限りの相手からは借り尽くす、といった辛酸を嘗めて生涯を送った 】とありました。
あらゆる商いで日銭を稼ぎながら、再び学び舎に身を置き好きだった‘書くこと’で身を立てる決意をした奈津には、もともと素地があったとはいえ、あらためて不屈の人、熱情を秘め続けた強い人だったのだなぁと深く感じ入った次第です。
展示文にもありましたが、辛酸を嘗める日々が続いたこともそれらの日々全てが彼女の血肉となることによって 社会の下層で貧しくも強く生きる女性を描くことができたということなのでしょう。自らが経てきた道であるからこそリアルな形で一葉自身がそこに寄り添うことが出来たのではないか…ということなのですね。( ※奈津は19歳で「一葉」を筆名とします)

会場にはところどころに彼女が15歳の頃から記し始めた日記の中の様々な文章が展示されていましたが、貧困や親への想い、書くことへの想いや一生慕い続けたとされる男性(小説の師でもあった半井桃水)への切ない想いが赤裸々につづられていて、私はこの日記にこそ強く惹かれる思いでした。

【愛用の着物】とされる小袖の展示前では暫し立ち止まり涙する思いでした。
羽織を着れば分からないからと背中と袖が様々な布で接ぎ合されて作られたその一枚。彼女はそれを身にまといながら筆を動かし、筆を止めては半井桃水のことを想い続けたのでしょうか。

「擱筆」という言葉を恥ずかしながら初めて本展で知りました。
書き続けていた日記を肺結核の病状進行により24歳の 「7月22日で擱筆」 とあり、その翌月初めには病院でその病状は「絶望的と診断され」たそうです。 同年11月に死去。
せめてもう少しだけでも長く生きて書き続けることができた人生であったならば・・・。
                     

                         川上未映子さんの訳本 - コピー.JPG

会場に川上未映子さんの顔写真が大きくディスプレイされたブースがあって驚きました。
見れば一葉作品の現代語訳を幾冊か手がけられた由。川上未映子さんのイメージにぴったりの華やかな装丁と帯の一冊ですね。その他、松浦理英子氏、島田雅彦氏や多和田葉子氏、角田光代氏などの手による現代語訳も在るようです。

最寄りのJ書店では現代語訳で思うものが見つからず、結局 図書館で現代語訳作品の数作が収められている一葉作品集を予約しました。
今読みかけの本を読了する頃には借りに行ける予定です。


                         銘柄忘れ 純米吟醸 - コピー.jpg

朝夕は寒くなってきました。
そろそろ熱燗が恋しい季節ですが掲出の画は地酒の冷酒です。銘柄は失念しましたが確か西の方のお酒…そして酒種は純米吟醸でした。この時は香りのいいのを呑みたくて。

この次ここに挙げる日本酒の画像は きっと熱燗の画 でしょうね。



posted by ぺろんぱ at 11:31| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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