2020年12月08日

ホモ・サピエンスの涙     ロイ・アンダーソン監督最新作


  シネ・リーブル神戸で映画 『 ホモ・サピエンスの涙 』 ( ロイ・アンダーソン監督)を観ました。

同監督の『 散歩する惑星 』(2003年日本公開)を観に行って衝撃を受けてから『 愛おしき隣人 』(2008年日本公開)でも魅せられ、本作が私にとって3作目の R.アンダーソン監督作品となります。( 因みに2015年公開の『 さよなら、人類 』は残念ながら未見です。)

今回 ちょっと出遅れての鑑賞でしたが、頑張って観に行ってよかったと高揚感に包まれて劇場を後にすることができました。佳き映画との出会いとか、こういう小さくとも何らかのトキメキはやっぱり生きていくうえで必要なことなのかぁ、と。 (今はコロナ禍でいろんなことが出来にくい状況ですね、だから私自身もですが皆さんそれぞれがそれぞれに思うことの中で。)


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<story>
 年齢も性別も時代も違う人々が織り成す笑いと涙の物語が、ワンシーンワンカット撮影や手描きの背景画、模型の使用といった独特の手法でつづられていく。 映像の魔術師がこの時代を生きる全人類に贈る、愛と希望を込めた万華鏡のような映像詩。 (※映画情報サイトよりの転載です)


 短い幾つものストーリー、いいえ、ストーリーと呼べないほどの 人生の瞬間 を切り取った33個のシーンたち。

何となく幸せじゃない人、ちょぴり切なくて悲しい人、すごく切なくて悲しい人、ものすごーく大変な局面に立っている人、、、いろんな人たちがいました。
そんな中でほんの幾つか、ほんのりと幸せを感じさせてくれる人たちのシーンも挿入されていて。プッと吹き出してしまうような可笑しみのある場面も幾つかあって、どれも私たちに 人生に在るであろう瞬間 を思わせてくれます。

不完全な私たちはどんなに頑張ってもどこか不完全なままの日々を送っていて、人生はそういう不完全さの繰り返しかもしれないなぁ、、、と思うのでした。望むと望まざるに関わらずそれは多分続いてゆくことなのですね。「だから、それでいいんだよ」という監督の声がどこからか聞こえてくるのでした。
ほんの幾つかだけ描かれていた‘幸せを感じさせるシーン’は、つかの間ポッと心に光が灯るような温もりを感じさせてくれて「そっかぁ、こういう瞬間もあるはずだし、私の人生のこれまでにもきっとあったはず…」と思わせてくれるのでした。

                         ホモサピ 館内パネル2 - コピー.jpg
                       ※館内展示パネルより

「たまらなくシャンパンが好きな女の人がいました」というナレーションだけで綴られた男女のシーン。
それも観終わった後で反芻するに、‘ああ、それでいいんだよね’って思えるものでした。
シャンパンがたまらなく好きなだけで、それだけで幸せなんです、きっと。隣でシャンパンを注いでくれる男性がいて、もしかしたら何かが育まれるかもしれない、育まれないかもしれない、でもそれでいいんです。

本作、『散歩する惑星』のような強烈な印象を残すものではなかったかもしれませんが、私にとってはもっとシンプルに、とても近いところで寄り添ってもらえた作品だったと感じました。
人生の肯定感につながるものがあって、そのことが明日からの希望をもたらせてくれたように思えたんですよね。だから‘観に行けて良かったなぁ’と高揚感に包まれて劇場を後にすることが出来たのだと思います。

                         
                      ※館内展示パネルより

 こういう比べ方をする作品ではないことを承知の上で書かせて頂くなら、最も好きだなぁって思えたのは《 降り立った駅のホームに時を経て男性が迎えに来るシーン 》、最も悲しかったのは《 誕生日会に向かう途中で土砂降りの雨に遭遇する親子 》だったでしょうか。

最後の 《 車のエンスト 》 は 切実に‘自分自身を問われた’気がしました。



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 ビミョーな距離をとる二匹。 猫界のソーシャルディスタンスではないよね。
向こうにいるのはアナザー。でもこっちの子は くろべえ じゃない。このあたりにもう一匹居る別の黒猫とも違う子だった。少し離れた通りには別の黒猫が2匹いるけどテリトリーが違うし。。。
ほなキミ、いったい誰?

わぁー、誰が誰か分からんようなってきた〜! がく〜(落胆した顔)



posted by ぺろんぱ at 19:50| Comment(4) | TrackBack(0) | 日記
この記事へのコメント
見に行って良かった!です、私も。

以前ほど足繁く映画館に通わないようになったとはいえ、
この作品は見る決めていました。

見てすごく刺激を受けたのですが、同時に癒しの効果もある、という不思議な映画だと。
いずれにせよ、たくさんのモノを受け取ったなぁという感じです(語彙力のなさ!)

「土砂降りの雨に遭遇する親子」のシーンはYouTubeでメイキング見たのですが、
これがスクリーンで見るとこうなるのかぁーと面白かったです。
Posted by Yururi at 2020年12月09日 19:45
おはようございます。
前回のご挨拶から随分と間が空いてしまいましたが、ぺろんぱさんの記事はその後もずっと楽しみに読ませていただいています。
ロイ·アンダーソン監督作はぺろんぱさんとは逆に『スウェーディッシュ.ラブストーリー』と『さよなら、人類』しか観ていないのですが、あの独特な感覚はクセになりますよね(笑)本作も観たいと思いつつ、今は家庭の事情等で中々映画館に足を運べない為、ぺろんぱさんのレヴューで今はじっと我慢です。
さて、前回お尋ね頂いた件(すでに忘れていらっしゃるかもしれませんが)ブログを閉めてからは、その類いのものは一切やっていないので、お知らせするも何もないのでした。観たり読んだりした作品の題名だけは残してあるものの、内容をすっかり忘れていることもしばしば(^^; 
今回もぺろんぱさんのレヴューを読んで記憶を呼び覚まさせて頂きました(笑)
Posted by ami at 2020年12月10日 08:10

 Yururiさん、お越し下さり嬉しいです。

Yururiさんも仰って下さった通り鑑賞作が重なって(しかも好印象も同じで)嬉しい限りです。

>たくさんのモノを受け取ったなぁという

まさしく!です。今思い返してもいろんなシーンが浮かんできて、全てが心に残るものとなった贈り物でしたね(*^-^*)。

YouTubeでメイキングが見られたのですか!?
今でも見られるのかな??ちょっと探ってみますね、ありがとうございます。

リーブルも再び観客が少なくなってきているみたいです。館側は対策をしっかりとって下さっているように思うので・・・つらいですね。


Posted by ぺろんぱ at 2020年12月10日 21:02

 amiさん、お越し下さり嬉しいです。ありがとうございます。

『スウェーディッシュ.ラブストーリー』と『さよなら、人類』をご覧になっているのですね。
わぁ!何だか思わず「どんなんでしたっ??」って感じで話掛けさせてもらいたくなってしまいました!(*^-^*)

映画館に行くのは其処までの時間もさることながら、鑑賞時間含めて決して短くはない時間‘緊急に対応できない’状態になってしまいますよね、、、私も映画館での鑑賞が怖くなった時期が長くありました。今もそれは少しあります。
なので、、、すみません、こんな拙いブログですが時々のちょっとした気分転換にして下さっているならこれ以上の喜びはありません(*^-^*)。

>前回お尋ね頂いた件(すでに忘れていらっしゃるかもしれませんが)

しっかりと覚えております。
御返答のプレッシャーになってしまっていたならごめんなさいね。でもお返事ありがとうございます。
今は特に発信はされていないとのこと、でもきっとamiさんらしさで感じた事々を心に書き留めておられると存じます。
またいつか、、、ということで(*^-^*)。


Posted by ぺろんぱ at 2020年12月10日 21:25
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