2020年12月15日

川上弘美小説のその後

   
 樋口一葉作品の前後から今までと、再び川上弘美さんの小説を読んでいました。
短編集3冊と長編2冊。 作品名は下記のとおりです。

< 短編集 >
『 神様 』 『 神様2011 』 『 パスタマシーンの幽霊 』

< 長編 >
『 古道具 中野商店 』 『 森へ行きましょう 』 

                        神様2011 - コピー.JPG

『 神様 』に収録の「神様」は川上弘美さんにとって生まれて初めて活字となった作品で、『 神様2011 』はその「神様」を東日本大震災の後に‘震災後の「神様」’として新たに書かれたものです。ストーリーはそのままに、細部が‘震災後の世界’に則して書き直されていて、一冊に元の「神様」と一緒に収められています。 
『 神様2011 』を読んだ後すぐに『 神様 』を読んだので、私は結局「神様」という短篇を3回続けて読んだことになり、結果的に凄く心に残る一篇となった気がします。

『神様』に収録の「神様」以外の短篇もどれも味わい深いのですが(特に「春立つ」「草上の昼食」が好き)、冒頭作の「神様」と最後に収録の「草上の昼食」は物語的につながるものがあって、この一冊の、作品集としての完成度が高いなぁって思えました。
――――― (ここまで書いて) さて問題です。 神様 の二文字は今まで何回登場したでしょう。

すみません、つまらぬことを書きました ( 分かってるなら書くな )。


『 パスタマシーンの幽霊 』も優しく心に沁みる作品が多かったですね。たまに性に関する生々しい表現もあったりしてドキッとすることもありますが、それも川上さんの心のポケットの一つかもしれません。
この短編集の中では‘口笛のうまい山口さん’と‘オカマの修三ちゃん’が出てくる物語が好きかなぁ(複数篇に登場します)。「ブイヤベースとブーリード」のお話も珍しく100%幸せな気持ちで終われる作品で気持ち良いし、最終話の「てっせん、クレマチス」は哀しいけれど とにかくイイです。この物語もですが川上さんの物語の中には素敵な老人&老婦人がよく現れます。

川上弘美さんの書く切なさ、悲しさ、そこに加えられるふわっとした優しさは、きっと誰もが‘ 私もこんな気持ちになったことある ’って感じるものだと思います。              

中野商店1 - コピー.JPG 
   

  上記の長編2冊では『 古道具 中野商店 』が断然好きです。

『 森へ行きましょう 』も、例えば50歳を大きく超えて人生の終え方みたいなものを意識し始める頃の女性が読むのは感慨深いものがあるとは思いましたし、年齢的にまさに私自身はそうなのですが・・・。

『 古道具 中野商店 』は『 森へ… 』とはまた違うアプローチで恐らく様々な世代の人たちに語り掛かけてくれる優しさがあって。誰かとどこかで繋がっているという安心感、独りぼっちなようで何処かから誰かがそっと見守ってくれているような幸福感のようなものに包まれるんですね。

風変わりな人たちばかりですが自分にはそれが心地よかったりもしました。
誰かと関わることはしんどいことばかりじゃないのだなぁって。

「本当に縁があるならそれは切れやしない」とは登場人物・中野さんの台詞。中野商店みたいなお店で私も店番の仕事をやってみたいなぁと切実に思いましたよ。


                        手酌熱燗すいしん2  コピー.jpg

 熱燗を手酌にて。
こちらのお店では少し大きめのお猪口でしたが、こうなるとお猪口よりコップの方が自分のピッチには合っているのが分かります。

ざっくりとお酒のアテを作って並べて、いつか小説に出てきたオカマの修三ちゃんと(修三ちゃんがヨシと言ってくれるなら)とことん盃を交わしてみたいものです。



posted by ぺろんぱ at 21:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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