2021年01月10日

この世界に残されて


 関西三県にも緊急事態宣言が発出される模様です。
とにかく個人レベルでは、自分が感染しない感染させない の 基本事項を引き続き守ってゆくしかありません。
映画館にも足を向けることが再び難しくなりそうです。

そんな中ですが、今年初の劇場での新作鑑賞が叶いましたので感想を挙げておこうと思います。
シネ・リーブル神戸での鑑賞 『 この世界に残されて 』 (バルナバーシュ・ト−ト監督)です。 他に気になる作品もあって迷いましたがこちらを選択しました。


ホロコーストを題材にしたものなのに穏やかな気持ちで映画館を去れたというのは珍しいことかもしれません。 ラストは何か大きな優しいものに包まれた感じがしました。
そこに一人の男性の 感情の封印 が在ったことは否めないのですけれど。

                         この世界に - コピー.JPG

<story>
  1948年。ホロコーストを生き延びたものの家族を失った16歳の少女クララは、42歳の寡黙な医師アルドと出会う。クララはアルドの心に自分と同じ欠落を感じ取り、父を慕うように彼に懐く。同じくホロコーストの犠牲者だったアルドも、クララを保護することで人生を取り戻そうとする。しかしソ連がハンガリーで権力を掌握すると、世間は彼らに対してスキャンダラスな誤解を抱くように。そして2人の関係も、時の流れと共に変化していく。 (※映画情報サイトよりの転載です)


 この映画、88分の作品です。
ホロコーストの痛ましい状況を織り込み長尺の映画に仕上げることもできたでのしょうけれど、そういう映像は排除されていて、残された人間の心の世界に焦点を当てて作られたものであったのですね。
そのことがまた、遠い他国の酷い歴史に依る物語というより、大切な誰かを失ってしまった人間の喪失と再生の物語 として 私たちも体験し得る普遍の物語のようにも感じさせてくれた気がしました。

クララとアルド。
二人の間に芽生えた感情は疑似父娘として以上の、異性を意識したものであったことは否めないと思います。
ただそこには互いの喪失感で根っこの深いところで繋がっている同種としての感覚もあって、身体を合わせることによって 始まるものよりむしろ損なわれてしまうものの存在の方が大きく思われ、それがアルドには怖かったのではないかと感じました。
アルドはクララを結果的には遠ざけ旅立たせ、クララもアルドの想いを悟って従ったのだ、と。

3年後の スターリンの死により自由が得られたあの時。
二人にはもしかしたら違う人生があったかもしれないけれど、それはもう封をして置き去ったもの。
新たな明日をアルドもクララも生きてゆくしかないし、それが二人にとっての 平穏という名の幸せ に繋がるのだと切なくもそう感じさせる二人の表情でした。
切ないのだけど、何だか凄く大きな優しさに包まれた感じだったんですよね、あのラストシークエンス。
「ここにいない大切な人たち」は ホロコーストで失くした家族のことであると共に ここにはもう亡い封印した大切な想い のことでもあったのかもしれません。

アルドを演じたカーロイ・ハイデュクがとにかく素敵でした、佇まいと眼差し。
ハンガリーを代表する名優さんとか。

佳い作品でスタートを切れたことを嬉しく思いながらも、今後はコロナ禍の状況変化を注視してゆかねばならないのですね。


                         氷上の鳥たち - コピー.jpg

 9日土曜 、厳寒の一日でした。
お城のお堀の水面が凍っていてその上を鳥たちが歩いていました。
この日、猫パトロールではいつもの猫たちは見かけず・・・何処かで暖を取れているのかなぁ。


                         OPEN DOOR ホット - コピー.jpg

 別の寒かった某日、ご常連さんがお一人だけだったこちらのお店で温かい飲み物をいただきました。
サイフォンで丁寧に淹れてくださったコーヒー、とても美味しかったです。丁寧に作るってことは何にしても大切なことなのですね。自分も心がけないと。

今年はイイことあるといいなぁ。( いつも他力本願。 それじゃダメじゃん。)


posted by ぺろんぱ at 21:22| Comment(4) | TrackBack(0) | 日記
この記事へのコメント
ぺろんぱさん、今年もどうぞ宜しくお願いいたします!

ハンガリーといえば、30年位前(古っ)に読んだアゴタ・クリストフの「悪童日記」三部作を思い出してしまいます。(映画化された分は観に行きませんでしたが)
この映画はー穏やかな気持ちで映画館を去れたーてことで何よりです!

猫ちゃんら心配ですね。「夜廻り猫」の平蔵らみたいに皆でぬくもり合ってると信じたいです(キッパリ)

あ、そのコーヒーもめちゃうまそうっ!です。こういうひと時が心を和ませるんですよねぇ(しみじみ)

ほなまたです。
Posted by ビイルネン at 2021年01月11日 14:23

ビイルネンさん、お越し下さり嬉しいです。
そして、こちらこそ今年もどうぞ宜しくお願い致します。

>アゴタ・クリストフの「悪童日記」三部作

またしても知らなかったことを教えて頂き感謝です。映画化は2014年?そう昔でもないのですね、興味を抱きました。
中欧は未訪問の国でずっと旅したい地でした、いつか…と思ってはいましたが。
本作は、切なさは在りましたがそれ以上に大きな優しさに包まれた感じでした。

夜回り猫の平蔵さんたち、、、そうですね、同じように温もりあって元気でいると信じます。ありがとうございます。

コーヒー美味しかったです(*^-^*)。
丁寧に淹れてもらって、出来上がるのを待ってる時間も味わいのうちなのだと感じました。
そういう時間の過ごし方も自分の生活に取り入れていければいいなぁと思いました。

ほなまたです。


Posted by ぺろんぱ at 2021年01月11日 17:50
「カラーフィルムなのに、例の施設に続く引き込み線路、貨車に載せられた大勢の人、、、何故か全部白黒に見えてしまう」のが自分がホロコースト映画に抱く印象ですので、悲しみの底に引き込まれない映画に出会えたのは、素敵ですね。
この冬の寒さは、ことさらコーヒーと熱燗が美味しいです。今年もペロンぱさんの映画レビュー楽しみにしてます!
Posted by ロラお at 2021年01月12日 09:51
ロラお様、お越し下さり嬉しいです。

ホロコースト映画のイメージは私も同様です。
映像は暗い色の空気と共に心に残り続け、曲がりなりにも平和な自分の日常を全否定したくなるような思いも。
この物語も勿論 悲劇の上に成り立つものなのですが、最後に残ったのが「傷跡」ではなかったことが救いでした。

熱燗。
温められた日本酒ってなんであんなにじわ〜っと来るんでしょうね。
「五臓六腑に染み渡る」って まさに日本酒のための言葉ではないでしょうかね (^^)。

私もロラ男さんのブログを 今年も引き続き楽しみに致しております!

Posted by ぺろんぱ at 2021年01月12日 19:49
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