2021年02月23日

岸辺の旅 ( NHK総合 録画鑑賞 )


 明日はまたぐっと冷え込むみたいですが、きっと本物の春はすぐそこですね。

11日放送で録画していたNHK G. での映画 『 岸辺の旅 』( 黒沢清監督 2015年10月公開作品 )を やっと観ることが出来ました。
なぜ今 急に黒沢清監督作品? って思ったら、同監督の新作『 スパイの妻 』がヴェネチア国際映画祭で銀獅子賞を取ったのでしたよね。 改めましておめでとうございます。「スパイの妻」は結局スルーしてしまいましたがいつか観たいと思います。

岸辺の旅チラシ - コピー.jpg  

< story >
湯本香樹実の小説を映画化。
3年間行方不明となっていた夫の優介(浅野忠信)がある日ふいに帰ってきた。優介は妻の瑞希(深津絵里)に「俺、死んだよ」と告げ、瑞希を旅に誘う。それは優介が失踪してから帰宅するまでに関わってきた人々を訪ねる旅だった。やがて優介が突然姿を現した理由、そして彼が瑞希に伝えたかったことが明らかになり……。 (※映画情報サイトよりの転載です)


 死者の存在が核となった物語であり、黒沢監督によるホラー色の強い画質や空気感が全編に漂っているのですが、観終わってみれば、私の中に最も残ったのは - 愛し愛されるという点に於いての静かで穏やかな幸福感 - でした。

互いに自分が抱えていた想いを相手に伝えきれてなかったという心残りが強くあってそれが二人を引き合わせあの道行きになり、あの旅が互いの心にあった空白を少しずつ埋めていってくれたのですね。その経緯は‘少しずつ幸せが形を成してゆく過程’として、(不穏なシーンもあったけれど)私にはむしろ優しいものとして映ったのでした。
瑞希が心の中の重い石を一つずつ置いていくような、そして代わりに小さく輝く石を拾ってゆくような、そんな旅に感じられました。

瑞希は優介の失踪の陰に死を悟っていたようなところがあって、生きながらもずっと半分 死の世界を彷徨い続けてきたのだと思います。
死した者が残った者を呼ぶ、引き込む、という感じでしょうか。けれど優介自身は決して瑞希を死の世界へ引き込んだりはしない…むしろ瑞希が現世で生き続けることを望み見守ろうとしているようでした。優介のそんな想いが何となく観る側に伝わってくる道行きでしたね。

岸辺の旅 2.jpg
※この画像は映画情報サイトよりの転載です

死者の世界と交わりながら瑞希が現実の世界で背負う苦しみを生々しく見せたのが、優介の不倫相手の女性・朋子(演じるは蒼井優)に会いに行くシーンでした。短いながら印象深かったです。
朋子が瑞希に放った「私には平凡な生活が続いてゆく・・・、でもそれ以上に何を求めることがあります?」という台詞は鋭く瑞希や観る者の心を突きました。
瑞希が朋子に真正面から対峙することを決めたのは、ある意味、優介の心を取り戻した自分を見せたかったから…だと思うのです。けれどそれをバッサリ返り打つように先の台詞を放った朋子。まるで「瑞希には平凡な日常など来ない、優介はもうこの世にいないのだから」と言わんばかり、優介の死をまるで知っていたかのように勝ち誇ったような、挑むような眼差しで。
あのシーン、ホラー色は無かったのに何故か一番ゾッとしました。(蒼井優さん、やっぱり凄い女優さんだ)

けれどそれも、観終わってみれば瑞希は朋子をいつの間にか超えていたのかもしれないなーって思うのです。
瑞希はおそらく優介とのあの旅路で、平凡ではないけれど永遠に損なわれない優介の心を手に入れたような気がしましたから。
求め合う気持ちが根底にあれば、あとはきっと時間が導いてくれるのでしょうね。


                         陽だまりの猫 - コピー.jpg
陽だまりの中でまったりしてる猫 。
この子と同じ柄の猫フィギュアがうちにあって親近感MAXです。


                         セブン ハイボ - コピー.jpg
最近ちょっとハマってる、セブンイレブンで販売されてるハイボ缶、< SCOTCH WHISKY HIGHBALL >
アルコール度数は8%、缶のハイボールとしてはコスパは結構高いんじゃないかと感じる味と香りですよ。




posted by ぺろんぱ at 13:00| Comment(4) | TrackBack(0) | 日記
この記事へのコメント
3年位前か(?)BSで録画して観たとは思うものの、細部は忘れてて、ぼわ〜んとした感じでしか覚えていませんでしたが(あかんやん)(・・・)、改めてぺろんぱさんブログを読んでると、ひと月前に読んだ漫画「兄帰る」を思い出してしまいました。
ちょっとしたキッカケでその近藤ようこさんの15年前の作品の新版を買って読んだのですが、なかなか思うところあった作品で、このブログきっかけに昨日の寝しな、も一回読んだのでした。
いや、「岸辺の旅」と全く設定は違うんですけどね。
(読んでなかったら何言うてるかさっぱりわからんと思いますが←すまん)

ひたすら節約も兼ねて家で余ってるウイスキーのハイボールづいてる自分ですが(ソーダだけ買うたらええし)(安っ)そのセブンイレブンのハイボ缶買いたくなってきましたわ。いやほんまに。ぺろんぱさんのーのみの絵ーはいつもググッと入ってきます、てか。

ほなまたです。
Posted by ビイルネン at 2021年02月24日 21:42
新聞屋さんのエピソードが雨月物語の「浅茅が宿」みたいで、物悲しく美しくて好きでした。この作品に出てきた死者たちは皆優しかったですね。と言うことで、蒼井優が一番怖い!に一票です(笑)
Posted by ami at 2021年02月24日 21:59

ビイルネンさん、ようこそです。

「兄帰る」は読んでいませんが、身近な人間の失踪と死を題材にしたもののようですね。
突然の変わり果てた姿というのは身内にとってはかなりハードなものと思います。無理に折り合いをつけるというより、この映画のように何らかの導きがあるとよいのですが…「兄帰る」ではどういった展開だったのでしょうね。こちらこそ読んでいないのでこんなことしか今は書けずすみません。

私の呑みの絵はしょぼいものばかりですのにそんなふうに言って頂いて恐縮です。
ボトルのウィスキーをソーダで自分好みに割る方が断然美味しいですよ^^、なのでこれはビイルネンさんのお口に合うか否か…もしお店で見掛けられましたら一本だけ味見なさってみてくださいね。

Posted by ぺろんぱ at 2021年02月25日 19:51

amiさん、お越しくださり嬉しいです。

雨月物語の「浅茅が宿」ですか、読んでいませんが心に留めさせて頂きました。ありがとうございます。
新聞屋さんの物語は最も死者の色が濃かったように感じられて、「美しい」と仰るamiさんの感性に なるほどなぁっ て感じ入っております。
小松政夫さんの存在感にちょっとびっくりしました。

ご一票、ありがとうございます。(笑)
自らが招いた者(死者)と違って現実の人との関りは何が待ち受けているかわかりませんね。

Posted by ぺろんぱ at 2021年02月25日 20:31
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。
この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/188430049
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。

この記事へのトラックバック