2021年07月13日

やすらぎの森


リーブル神戸で『 やすらぎの森 』( ルイーズ・アルシャンボー監督 )を観てきました。

カナダ・ケベックの深い森、静謐で何物にも毒されない暮らし。でも悲しみの影が常にそこにはあって、自由に生きてゆくうえで覚悟せねばならないこと、老い、孤独、死、、、そんなのをじんじん感じました。
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<story>
カナダ・ケベック州。湖のほとりにある小屋に愛犬たちと暮らしているチャーリー(ジルベール・シコット)、トム(レミー・ジラール)ら年老いた3人の男。平穏な日々を送っていた彼らの前にジェルトルード(アンドレ・ラシャペル)という80歳の女性が現れる。少女のころに不当な形で精神科療養所に入れられ、60年以上も外界と接触しないで生きてきた彼女を仲間として迎えるチャーリーたち。ジェルトルードはマリー・デネージュと名を変えて新たな人生を歩み始めるが、思わぬ事態が起きる。 (※映画情報サイトよりの転載です)

それぞれの理由で世捨て人になった老人たち。
自ら選んだその生き方は今年4月に観た『ノマドランド』を想起させました。「孤独でいれば(求めも求められもせず)愛し続けられる」という台詞にも『ノマドランド』の主人公ファーンに通じるものを感じました。

孤独とはいっても彼らはそれぞれに愛する犬と共に暮らしていて、犬たちとの‘通じ合い’が彼らの心をとても豊かにさせていました(それぞれの犬たちが実にイイ!のです)。やはり人は一人では生きてゆけないのですね。
だから(敢えて書きますが)トムが自死に愛犬を道連れにするところは、私には最も涙を誘った場面でありながら、実は最もわだかまりを残したところでもありました。

一つの新しい存在(マリー)が加わることで男たちのバランスが微妙に変化してゆくのは、ちょっと淋しくもありドキドキもしたり。
マリーはただただ真っすぐに自分の人生を取り戻そうとした人。世を捨てて森へ来た男たちと新たなものを見つけに来たマリーとは、老いや孤独は同じでも明らかに違いがあった、と思うのです。その姿が男たちの、特にチャーリーの心を刺激したのですね。
生き抜くことを選んだチャーリーは、彼が捨て去った‘誰かを愛すること’を再び手に入れたいと願ったからであり、死を選んだトムはそれが彼にとっての究極の自由の形であり、どちらも自身の選択に他ならないわけで、誰もが最後はそれぞれの自由を貫いていいのだと私は思いました。私自身もまた、いつか来るであろう‘その時’は(叶うなら)自分の意思に沿うものであってほしいと願います。
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冒頭に「悲しみの影が常にあった」と書きましたが、それは過去に かの地で実際に起こった大きな山火事が一つのモチーフになっていて、火事によって家族を失ったもう一人の老人 テッドの存在が本作の底辺にあったからだと思います。過去に囚われてしまったままのテッドが、死しても影を落とし続けていた作品でした。
彼にまつわるシーンの中で語られた「苦しいのは火事ではなく愛よ」の言葉が深く心に残っています。火事そのものよりその頃に当たり前のようにあった愛の記憶が苦しいのだ、ということだと私は受け止めました。最近読んだ村上龍の小説にあった、記憶や想い出が人を生かす力にも死に向かわしめるものにもなり得る という意味合いの文章とリンクして、小説、そしてこの映画と、人生はつながっていると改めて感じたりもしたのでした。

最後に、湖で初めて魚を釣り上げたマリーの はち切れんばかりの笑顔のシーンを見て似たような境遇を生きた今は亡きある人の遠い面影が心を過ぎりました。新しい自分を生きてゆくマリーには 幸せなこれからであってほしいと切実に思いました。

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  この1年くらい 静かにアボカドにハマっています。
毎日のように買って食べています。レシピはシンプルに、スライスして山葵醤油で、がMY BEST です。
ふふふ、しかし最近は亀田製菓のワサビ味の柿ピーと一緒に食べるのが美味しさ倍増(あくまで個人的見解です._.)でお気に入りです。傍らには 濃い目のハイボール。

春樹さんの『ドライブ・マイ・カー』が濱口竜介監督、西島秀俊さん主演で映画化されました。。。公開が待たれます。


posted by ぺろんぱ at 20:42| Comment(2) | TrackBack(0) | 日記
この記事へのコメント
ぺろんぱさんが受け止めた
ーその頃に当たり前のようにあった愛の記憶が苦しいのだーという言葉はあまりに深いです。
泣きそうになりました。

犬がかわいそうな映画て、ほんま観ていて苦しい。もしこの映画観てたとしたら、自分もそこで一番泣いたと思うと同時に、「何してくれんねん!」とはらわた煮えくり返ったと思います。ウゥッ。

あ、自分もアボカド好きですっ。ヨーグルトと一緒にそのまま食べです。といっても買うのは98円の安い時しか買わんので毎日ではないですが…。(所帯くさっ)(・・・)

ほなまたです。
Posted by ビイルネン at 2021年07月15日 18:07

 ビイルネンさん。お越し下さり嬉しいです。

犬のことは、それはそれで両者(トムと犬)の意思疎通の結果だったのかもしれませんが(映画ではそのような描かれ方でした)他の道はなかったか?とやはり思ってしまったのでした。トムが世を捨てて一人で生きると決めていた人間なら尚更に。

愛の記憶もそれが苦しみになるか希望の糧になるのか・・・両面あって人生のその時折で思うこともいろいろですね。

アボカド。
最近は結構安価で出てるのに時々まだ青いのがお高くなる時がありますね。私もお安い時に幾つか買っておいたり、青いのしか出てない時は常温保存で熟成を待ったり。
ヨーグルトと一緒にというのはオシャレですねー(^^)。私はどうしても‘お酒のとも’として考えてしまって…お恥ずかしい^^;。

Posted by ぺろんぱ at 2021年07月16日 22:00
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