2022年05月07日

ツユクサ


シネ・リーブル神戸で『 ツユクサ 』( 平山秀幸監督 )を鑑賞しました。
全く事前にキャッチしていなくて、「そろそろなんかイイ映画観たいなー」とリブ神のサイトを検索して、気負いなくふわーっとした感覚で観れそうだなぁと選びました。
ふわーっと観れて、でも「ちゃんと幸せになる」(劇中の台詞)っていうことについて考えさせられました。

ツユクサチラシ - コピー.jpg

<story>
  小さな港町で暮らす五十嵐芙美(小林聡美)は、気心の知れた友人たちと他愛のない時間を過ごしたり歳の離れた小さな親友・航平(斎藤汰鷹)と遊びに出かけたりと穏やかな日々を送っていたが、彼女がひとりで暮らしているのにはある哀しい理由があった。ある日芙美は車の運転中に隕石に衝突するという衝撃的な出来事に遭遇し、町に越してきた男性・篠田吾郎(松重豊)とふとしたキッカケで親しくなるが・・・。 (※映画情報サイトよりの転載です)

   人間が隕石に衝突する確率は 1憶分の1 とか。
そんなことが起こったら自分の運命(未来)をその出来事に賭けてしまうことはあるでしょうね。実際は何かが変わると‘思い込む’ことが以後の自分を微妙にコントロールしてしまうからだと思いますが。そしてそれは自分の心次第でいかようにもベクトルを変えてしまう・・・この物語の中でも上手くいくように見えていかないことが幾つもありました。 それは隕石に遭遇した芙美に限らず、物語に登場する全ての人たちが、前向きに生きてはいてもいろんな‘上手くゆかないこと’を抱えているのですよね。

芙美が「ちゃんと幸せになる」と決めて本当にその方向へ歩み始められたのは、彼女の中にそれを求め、受け入れる柔軟さがあったから。共感するところはありながら果たして私ならあんな風にふるまえるだろうかと感じる 真っすぐな強さ が芙美にはあって、それが彼女を然るべきところへ導いてくれたのだろうなぁって。「小さな奇跡」は奇跡などではなく、芙美の真っすぐな生き方が招いたものなのだと思いました。
でもそこに‘隕石との衝突’という衝撃的な出来事を絡めたことが‘大人のおとぎ話’の扉を見せてくれたのですね。最後に「それは違うんだ」ってことに芙美自身が気付くのはちょっぴりビター。

tsuyukusa - コピー.jpg
※映画ワンシーン 情報サイトよりの転載です

冒頭にも書いたことですが、容易に運命のベクトルは変わってしまうもの。
過去を背負い、もう決して若くはない芙美の幸を願う気持ちは、物語が進むにつれ私の中で祈りに変わってゆく感じでした。だから彼女が抱えてきた哀しみが結果的に誰かの哀しみと呼応し合えたことが(その相手も「ちゃんと生き直そう」と思い始められたことが)私にはしみじみと嬉しかったです。

松重豊さん、イイですね。最近のNHK『カムカム…』での伴虚無蔵役もハマリ役ながら本作の吾郎さん役も中々に。
渋川清彦さんの‘地味なおとーちゃん役’も良くて、航平との海辺での会話にはグッときました。 断酒中の芙美に水割りを勧めるバーの店主・泉谷しげるさんには あるある の笑い。彼の「昔は捕鯨船に乗ってたんだよー」っていう話がラストでキュッと効きます。
小さな作品ながら、ひなびた港町が柔らかいお陽さんの光に優しく包まれる、作品の舞台と同様にあたたかい映画でしたよ。

メリケンパーク - コピー.jpg

 映画の帰りにふらりと立ち寄ったメリケンパークは雲一つない5月の青空でした。GWの某日で、せめて今くらいは と笑む人たちでいっぱい。 平和の象徴と言われる鳩たちにいろんなことを託したいけれど。



posted by ぺろんぱ at 19:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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