2008年09月07日

TOKYO!

この時期になるとユーミンの♪「晩夏〜ひとりの季節〜」を思い出します。

 ゆく夏に名残る暑さは
 夕焼けを吸って燃え立つ葉鶏頭
 秋風の心細さはコスモス

季節の移ろいを切なく綴った詩ですね。
昨日はしかし、そんな晩夏の淋しい感慨も吹っ飛ぶほど暑くて太陽がぎらぎら照ってました。
突然の豪雨を警戒してバッグに入れてた折たたみ傘を日傘にして、ヨドバシカメラ前から新梅田シティへ。
昨日6日(土)は梅田ガーデンシネマで『TOKYO!』を観ましたよ。

story
  『殺人の追憶』のポン・ジュノ、『恋愛睡眠のすすめ』のミシェル・ゴンドリー、『ポーラX』のレオス・カラックスという国際的に注目される3人の映画作家が、それぞれの視点で東京を描いたオムニバス映画。
                TOKYO!3監督.jpg  3監督

             
第一話 ミシェル・ゴンドリー『TOKYO! インテリア・デザイン』
  恋人の夢に懸命に尽くす一方、“自分”がみつからないヒロコ。ある日、身体に妙な異変が起こっている事に気付く。
第二話 レオス・カラックス『TOKYO! メルド』
  マンホールから現われて街を恐怖に陥れる“下水道の怪人”。遂に逮捕され、裁判にかけられた謎の男の正体は・・・?
第三話 ポン・ジュノ『TOKYO! シェイキング東京』
  引きこもりの男性がピザ配達の女性に恋をした。彼女に再び会うために、男は11年振りに外へ出ようと決意するが・・・。 
     (storyはシネマトゥデイ及び映画情報誌より)
     ※映画に関する掲載写真は全て映画情報サイトより転載させて頂きました。


三話は“それぞれに”面白いと思います。
正統的に楽しめたのはポン・ジュノ監督の『シェイキング東京』ですが、作品として不思議な余韻を残したのはミシェル・ゴンドリー監督の『インテリア・デザイン』でしょうか。

                 TOKYO!ジュノ2.jpg
              
初めは、東京・TOKYOという街を「!」付きで表したこのタイトルの企画としては(東京以外に住んでいて、東京という街を勝手にイメージしていた私にとっては)期待を外された感じがしないわけではありませんでした。私的に持つ東京のイメージ、孤独と背中合わせのクールさの中に内燃させる“屈折したエネルギー”みたいなものは余り感じられなかったので。
ロケーションは東京であっても、それは「日本人が歩いているどこかの街」としか感じらず、東京で撮られるべき必然性は何だったのかな、と思ったりしました。
しかしこれが三者の監督が捉えた「東京」であるのなら、それは三氏にとっての東京なのでしょうね、やはり。

                 TOKYO!カラックス.jpg

そう言う意味では、「東京」というより良くも悪くも「日本」という国を意識し、日本でしか撮れない映画を撮ったと思ったのはカラックス監督の『メルド』ですが、そこには揶揄を超えた侮蔑が見え(生理的に日本人が嫌いなのかしら、カラックスさん)、そこにカラックス監督の何かしらの“秘められた示唆”があったのかもしれないけれど、やはり日本人としては複雑。作品としては最も強烈でインパクトはありましたね。ドゥニ・ラヴァンは怪演で異彩を放ちまくっていました。
ゴジラのテーマ曲にのってマンホールから現われる彼はまさしく怪人。
囚われの彼が発する不可解な言語によって翻弄される裁判シーンには日本という国の形式主義をメッタ斬りされているような気がしました。
神と化したかのような消え方もストーリーとしては興味深く感じられたものの、「日本」そして「東京」への愛ある視線は感じられず(タイトルからして“メルド”ですものね)、先述の通り日本人としては複雑でしたね。


                 TOKYO!ゴンドリー.jpg

『インテリア・デザイン』は、ビルの隙間に生きる虚無感みたいなものを描き、その虚無に潰されそうになりながら最後に「自分」の生き方を見つけるヒロイン(藤谷文子)に、生きることに前向きになれる不思議な力を感じました。
物語の終盤で段々○○になっていくヒロインは、不気味さを超えて究極のファンタジー。ゴンドリー監督のやんちゃでちょっと意地悪な目線が、終盤から急に優しさを含んだ視線に変わった感じがしました。不思議な余韻を残す作品です。
あ、藤谷文子さんてスティーブン・セガールの娘さんだそうです、知りませんでした。


                TOKYO!ジュノ.jpg

『シェイキング東京』は、もう本当に香川照之さんの存在感が凄い!です。この人は素晴らしい役者さんですね、本当に。
作品としては最も“真っ直ぐな”視線を感じた一作です。この監督の映画はこれが初めてでしたが、何となく「いい人なのじゃないかなぁ、この人」って感じましたね。
「光」を見すぎて「闇」の世界に籠もり、「恋」の力が再び彼を光の中に走らせて行く・・・。小さな力が大きな何かを動かすそのエネルギーと「大地の揺れ」を起こすエネルギーとが重なるあの瞬間、観ていた私の心も揺れ動いた気がしました。
「崩壊」の一歩手前で希望の光を見た、そんな感じです。
あぁ、そういうふうに考えていくと、東京と言う街のイメージが余り伝わらなかったと先述した私ですが、この作品が最も真っ直ぐに東京という街を捉えていたと言えるのかもしれませんね。

それぞれの視点の、それぞれのTOKYO。私が漠然と持つ東京のイメージとは違うけれど、どれもみな「ぞれぞれの東京」なのですね。

長い間訪れていない東京です。
最後に東京一人旅をしたのは何年前だったでしょうか・・・。
私にとって東京は「何となく元気をくれる街」でした。吉祥寺で入ったお蕎麦屋さん<砂場>は、まだあるのでしょうか・・・。


さて、梅田ガーデンシネマのシアター2では『グーグーだって猫である』がかかっていて、立ち見続出の大入りとなっていました。
今日は我が家のグーグーの写真を2ショット。
         我が家のグー a.jpg    おやすみ a.jpg

逝く夏を惜しみつつ、ブログアップのお供にはジントニックを冷凍庫で凍らせておいたハイボールグラスで。

                 ボンベイ.jpg
posted by ぺろんぱ at 14:54| Comment(10) | TrackBack(1) | 日記
この記事へのコメント
ばんはです。

今日はトンネルをくぐってあちらの世界へ行ってはったんですね(どちらの世界じゃい)

大都会トウキョウを舞台にしたオムニバスなんですか。
面白そう☆

都知事の評価を訊いてみたいもんです(=^_^=) ←きっとまた一蹴するんだろうなぁ・・

私的には1話目にエロティシズムを、2話目にサイコホラー性を、3話目にサッドコメディ(悲喜劇)な空気を感じました。

佳き休日だったようですね。良かった。
Posted by TiM3 at 2008年09月08日 00:05
ぺろんぱさん、こんばんは。
そうでなくても、普段から、映画はロケーションの魅力を押し出してこそナンボ!と思っている私ゆえ、嗚呼・・。

へぇぇ、彼女はスティーブン・セガールの娘なんですかー。
好演していたとは思うけど、何故、このコが主演?!という疑問符もちょいと浮かびました。w
イス化するなんていうアイディアなかはすごく好きだったのですが。
『ポンヌフの恋人』が大好きな私としては、カラックスの作品の出来栄えも残念ー。
ポン・ジュノは才能ある監督だと思いますが、『ほえる犬は噛まない』がとりわけ気に入ってますー。

ぺろんぱさんちのグーグー、かわいいですねぇ。
大島グーグー猫の舞台は吉祥寺なんですよねー。
Posted by かえる at 2008年09月08日 00:41
こんばんは。
Tokyoが舞台の映画と言えば「ロスト・イン・トランスレーション」が
記憶に新しいですが、完全関西人の私には今ひとつ東京のイメージってなんやろう。。。
とピンと来ないのが正直な所です。
ミシェル・ゴンドリー監督がどんな作品を作ったのかは気になるところですが。

これが、神戸や阪神間が舞台となると一気にボルテージ上がっちゃいます。
ちょっと古いですが市川崑監督の「細雪」や村上春樹原作の「風の歌を聴け」等、
何かノスタルジィを感じさせる好きな作品です。

「グーグー」混んでましたかっ。
そんな気がして今日は行き先をテアトル梅田に変えて正解だったかもしれません。
我が家のグーグー、いいですね。(=^_^=) 私もいつか猫のいる生活をおくるぞ!
Posted by ゆるり at 2008年09月08日 00:49
TiM3さん、こんばんは。

>トンネルをくぐってあちらの世界へ行って

ここ2、3ヶ月、3〜4冊の他小説を併読しつつも集中的に春樹小説の再読期に入っていたので、“あちらの世界”の表現に“真面目な意味で”ぐぐっと反応してしまいました。
・・・はい、あちらの世界に行ってきました。(^_^)

「トウキョウ」を舞台にしたといわれながら、実は「トウキョウ」を余り感じられなかったです。
その点をあちらに(どっちじゃい)置いておいて鑑賞するならそれなりに面白かったと思います。

>私的には1話目に…、2話目に…、・・・

ストーリーに付いてはその抱かれているイメージを先ず大切に、いつかご覧になる機会に備えて下さいませ(^_^)。
私的に今回の「それぞれの作品」を“切り口を変えて”表現させてもらうと、第一話「純心と遊び心」、第二話「乱心」、第三話「母性」、といったところでしょうか。ポン・ジュノ監督はまごうことなく男性なのですけれどね。^^; 


Posted by ぺろんぱ at 2008年09月08日 19:50
かえるさん、こんばんは。

「東京」という街が放つ魅力が今一つ、二つ、感じられず仕舞いだったのは残念でしたね。

藤谷文子さん・・・私も伊藤歩さんが結構好きだっただけに、どうして歩ちゃんじゃなくてこの女の子がヒロインなのだろうって思っていました。さりげなさは良かったかと思いますが。舞台とかでは名前が売れてる人なのでしょうか??

カラックスファンでいらしたのですよね。

私は「第二話」について、監督の何らかの寓意があったのだろうかと今も尾を引いています。
『ボーイ・・・』『ポンヌフ・・・』ではドゥニ・ラヴァンの“尖ったナイフのような、そしてその刃先で自分自身をも傷付けてしまいそうな”痛々しさが印象に残っているのですが、実は監督の「カラックス・その人」に付いては殆ど何も知りません。
今回、久々に「カラックス」という名に触れて、改めて過去作のイメージが蘇ってきた次第ですが、やはり第二話は“悩んだ”一作でした。はぁ〜。

かえるさん、機会があればいろいろと教えて下さいね。

我が家のグーグー、誉めていただけて嬉しいです。(←親バカです)
吉祥寺・・・また訪れてみたくなりました。
Posted by ぺろんぱ at 2008年09月08日 20:07
ゆるりさん、こんばんは。

『ロスト・・・』は私も好きです。
思い出す時はビル・マーレイ、スカーレット・ヨハンソンに加え、必ずセットでマシュー・南も蘇ってきちゃいますが・・・。^^;

私も東京の東京たるものについては何も知らなくて偉そうな事は言えないのですが、何となく“独立した孤の世界”を感じるのです。良い意味もその反対も含めて。
慣れているし、いろんな意味で快適なのは阪神間なのでしょうけれど、東京は「一度暮らしてみたい」と思える街ではあります。

ゴンドリー監督のは、終盤“別もの”に変わったような印象を持つ作品でした。その終盤の“遊び心”がもっと全編にほどばしっててもいいかなぁと思いましたよ。

春樹の『風の歌を聴け』は、是非また新しい感覚で別監督で別バージョンで「再制作」してもらい気もします・・・そしたらボルテージ最高値にして観に行きたいものですね!

今回はゆるりさんとニアミスはなかったみたいですね。
しかし、いつかゆるりさんが猫とお暮らしになる暁には「ニャミリー」「猫ダチ」ということで、宜しくお願い致します(*^_^*)!
Posted by ぺろんぱ at 2008年09月08日 20:24
もうこの映画も始まってしまいましたね、観たいと思っていて気づいたら....ということも良くあるので、なんとか観に行く機会を作りたいです。

外国の人にとっては日本って色々な意味で不思議な国のようですね、逆も真ですが。

是非、観に行きたいと思います。

ちなみに私は「ソラリス」で首都高が未来都市として現れていたのが何か心に残っています。未来とは明るいものではなく、ある意味薄汚れた現実味のある景色として映っていました。

PS キョンキョンのグーグーも観たいですね。大入りではしばらく機会を探らないといけないです。PCの前にチラシを置いて忘れないようにしているんで、もう少し様子見します。
Posted by west32 at 2008年09月09日 21:31
west32さん、こんばんは。
ミニシアターでは上映期間も短いですしタイムテーブルもすぐ変わっちゃいますものね。先ず観たい映画の時間に合わせてスケジュールを組む、ということもしばしば。のんびりしたい週末が意外と緊迫感たっぷりになってしまうことも。(>_<)

『惑星ソラリス』では東京の高速が出てきたのでしたねー。道路が上下に交錯してる感じが未来のイメージだったのでしょうか。
確かにピカピカの未来ではなかったですね。
監督は本当は最初、大阪万博を使いたかったのだそうです。でも何らかの事情で撮影叶わず首都高になったのだとか。
どちらにせよ“あくまでイメージ”の世界ですよね。仰る通り、互いに“不思議な世界”なのでしょうね。

週末は他劇場鑑賞は見送ることになりそうです。(T_T)/~~~
ご覧になられましたら貴レヴューを楽しみにしております!
Posted by ぺろんぱ at 2008年09月10日 20:17
こんばんは。
「TOKYO」みてきました。
思い当たるイメージはありますが、特に東京でなくてもいいのではとも思いました。2話の『メルド」のテロはひどいですね。サリン事件を思い出させます。
エンディングの音楽にエレベーター内の音が入っていました。哀しいくらい機械的で孤独に聴こえました。でも一面とてもメッセージのはっきりしている内容です。ふむふむ。

彼ら三人が大阪や京都をイメージしたらどんな映画になるんでしょうか。でもあの調子でしたら、ちょっとこわいですね。
Posted by keyakiya at 2008年09月27日 00:51
keyakiyaさん、こんにちは。
ご覧になられたのですね。
確かに、私も「東京」という限定した街のイメージはあまり感じられませんでした。
『メルド』は監督の「それでも敢えて撮った」意図を知りたいです。

>哀しいくらい機械的で孤独に
そうですね。
孤独、というのは私が東京に持つイメージの一つです。

大阪や京都・・・そうですね。
イメージは自由だから思いっきり飛んで欲しい気持ちも在りますが、やっぱり怖いですね。^^;
Posted by ぺろんぱ at 2008年09月28日 11:41
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