2023年08月13日
ブエノスアイレス からベトナムへ… 青いパパイヤの香り ( BS録画鑑賞 )
今月に入ってからアルゼンチン、ベトナムと旅をして来まして…って、タイトルに「録画鑑賞」って書いてるやん! BS松竹東急で放送されていた両作を録画して鑑賞しました。
『 ブエノスアイレス 』は < 世界の名匠シリーズ ウォン・カーウァイ監督作品特集 >の4作品(恋する惑星・天使の涙・ブエノスアイレス・花様年華)連続放送のうち、本作のみ未見だったので録画。
『 青いパパイヤの香り 』は、トラン・アン・ユン監督のデヴュー作で、『 ノルウェイの森 』を観た時から興味を抱いていて今回録画。
どちらもタイプは違えど‘映像と音’の世界に酔えました。
◆『ブエノスアイレス』(ウォン・カーウァイ監督、1997年制作)
<story>
愛し合いながらも別れを繰り返してきたウィン(レスリー・チャン)とファイは(トニー・レオン)関係を修復するためイグアスの滝へ向かうが途中で道に迷って言い争いそのままケンカ別れしてしまう。その後ブエノスアイレスでドアマンとして働いていたファイのアパートに傷ついたウィンが転がり込んでくる。仕方なくウィンを居候させるファイだったがケガから回復したウィンはファイの留守中に出歩くように。そんな中、転職して中華料理店で働きはじめたファイは同僚の青年チャンと親しくなる。 ※映画情報サイトよりの転載です。
自己破滅型の人間を好きになってしまったら酷い目にあうって事なのかと思いながら観ていましたが、そう単純なことではなくて、後半はウィンの、自分で自分をどうすることもできない苦悶が伝わってきて何だか悲しかった。
振り回されていたように見えたファイが新たな出会いによってポジティブな自分を取り戻し、辿り着いた旅先でのとある邂逅によって希望を感じさせるエンディングはカーウァイ監督らしいスタイリッシュなカッコ良さでした。
でも私的にはそれもそう単純なことではないように思えて…。例えチャンとの新たな展開があるにせよ、あぁファイはこれから先もやっぱりウィンのことを想い続けるんだろうなぁ…とちょっと切なくもありました。世の中はやっぱり複雑だから。
俯瞰でとらえたイグアスの滝の映像に圧倒された事と、エンディングに突然「ハッピー・トゥゲザ―」が流れたことがゴキゲンで(レニングラード・カウボーイズがらみで好きな曲なので)印象に残る一作となりました。
レスリー・チャンは壮絶な自死から丁度今年で20年なのですね。少し前には『 さらばわが愛/覇王別姫 』がリバイバル上映されていました。改めてご冥福を祈ります。
◆『 青いパパイヤの香り 』(トラン・アン・ユン監督、1993年制作)
<story>
サイゴンのある資産家の家に、10歳の少女ムイが奉公人として雇われて来た。その家には優しい女主人と根無し草の旦那、三人の息子たち、そして孫娘を失って以来二階にこもりっきりのお婆さんがいた。ムイは先輩女中に教えられ、一家の雑事を懸命にこなしていく。そして彼女は、ある日長男が連れてきた友人クェンに恋心を抱く……。 ※映画情報サイトよりの転載です。
映画って 映像の作品 なのだと改めて感じました。
カメラが捉えた命あるもの全ての息遣いが伝わってくるようで、少女ムイが汗して働き、黒髪が濡れて肌にはりついているいる、その姿にさえもムイの 生 が感じられて美しかったです。肌を重ねるシーンなんで一つとして無かったのにどこかしら官能的で不思議な世界でした。
そして音。暮らしが営まれているあらゆる音、日が暮れて響く虫の鳴き声。台詞は殆どなくて、たまに語られるベトナム語が柔らかなBGMのようでした。
ムイの奉公先は裕福だけれど不穏な空気も孕んでいて、心に屈折したものを抱えていたような次男はやがて家を出ていったらしく、ムイを好いていたのに典型的な‘好きな子を虐める’タイプでしかなかった幼い三男坊も、その後はどうなったのか全く描かれていません。名の知れた商家だったと想像しますが、没落していく様も影を落としていました。
そんな中で、献身的に働き小さな喜びを完全な幸せとして心と身体に刻んできたようなムイの半生が 世俗とは一線を画した神秘的なもののように描かれていたのが観終わってみれば印象深かったことです。
幼い頃のムイも成長したムイもどちらも、演じた女優さんは不思議な魅力を放つ女優さんでした。あとで知ったことですが、成長したムイを演じた女優さんは監督の御夫人だとか。
先週末に実家に帰って空を見上げた際、 あぁ夏の空だぁっ! って思って思わずスマホで撮った一枚です。
真ん中の大きな雲、見ようによっては 笑ってる‘ガラモン’の横顔 に見えなくもない。笑ってるガラモンなんて見たことないけど…可哀想な最後だったのが記憶にあるだけで。
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「ブエノスアイレス」は観てませんが、「青いパパイヤの香り」はかなり前に観てて良い印象が残っています。
10歳のムイがあまりに可愛かったので、成長したムイを見てーちょっとちゃうんちゃう?ー感を持ってしまい少しガックシきた記憶があります。けどまあ観たのが17年前らしく(昔の日記にメモあり、BSで観たのかTで借りたのかは思い出せず)今観たらまた違う感覚になるかもしれません…。
自分の大事にしている本の一つに「シネマ厨房の鍵貸します 1996年発行」(映画に出てくる料理を作る本)というのがあるのですが、そこでの青いパパイヤの香りレシピは、ー焼いたなすといんげんのサラダーと―海老のベトナム風炒めものーでした。
ほなまたです。
台風7号はこちら方面は大丈夫でした、そちらも大丈夫でしたよね? ご心配ありがとうございます(^^)。
成長したムイは子供の頃のムイと顔立ちは似ているなぁと私は思いましたが、ただあの10歳の時のムイが放っていたオーラは唯一無二のものだったかもしれませんね。
ところで 映画に出てくる料理を作る本!
実は私もソレではないのですが同様の『映画を食卓に連れて帰ろう』という本を持っていて(友人がプレゼントしてくれたものです)、ビイルネンさんのコメントを受けて私の本にも『青いパパイヤ…』に出てくる料理が載っているかもと久々に本を見てみたら…『青いパパイヤ…』のは載っていなかったのですが なんと『ブエノスアイレス』関連料理が掲載されていたのです!何だかシンクロしてる感じがして嬉しかったです(*^-^*)。(因みに「トマト麻婆豆腐・チリビーンズ麻婆豆腐」の二品でした。アルゼンチン料理じゃないのですが。)
『青いパパイヤ…』の中でムイが作る料理はどれもエキゾチックでした。野菜を刻む音、色どり等々、まさに五感を刺激する料理たちだったんですねー。