2006年12月03日

暗いところで待ち合わせ

 すっかり冬らしくなってきましたね
風邪を引いてしまいましたが余りじっとして居れないたちで、今日日曜は頑張ってシネリーブル神戸に『暗いところで待ち合わせ』(乙一原作・天願大介監督)を観に行ってきました。
先週は小川洋子さん原作、今週も日本の作家の原作・・・今作は邦人監督による邦画ですが、乙一さんは『死にぞこないの青』を読んで以来、気になる作家の一人でしたから今作品も楽しみにしていました。
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       シネリーブル神戸前 X'マスのオブジェが・・・。             
                  
story
3年前の事故が原因で両目の視力を失くし、実の父親(岸部一徳)も病気で亡くしたミチル(田中麗奈)。世間から取り残されたように1人静かに暮らしていたある日、ミチルの家の近くにある駅のホームで印刷会社に勤める松永(佐藤浩市)が線路に突き落とされるという殺人事件が起こる。
やがて、容疑者の青年アキヒロ(チェン・ボーリン)がミチル家に逃げこみ、奇妙な同居生活が始まってしまい……。 (シネマトゥデイ)


 ・・・自分がもし後天的に全盲になってしまったらどうなのでしょう
私は死後に献体する事は厭いません。が、何故か「目」だけは残してもらいたいというような、ある意味「視力が奪われることの恐怖」を底知れない恐怖と考えて恐れている人間なのです。私は視力はいいのです・・・でも何故か「目を奪われる」ことが絶対の恐怖と感じてしまうのです。

映画から帰り、自宅に入ってドアを閉じ、暫くじっと灯りを点けずに目を閉じてみました。
猫が出迎えに来てくれた事もあってすぐ我に帰りましたが、それがほんの数分の事で済むと認識すれば耐える事も出来ますが、一生続くかもしれないと思う暗闇は、やはり気が狂うほどの恐怖と孤独になって私に迫ってきたと思います。

・・・それで、そう言う点で、ミチルの全盲生活が、余りに美しく達観した感じに描かれていたのが少しリアリティーが欠ける感じがしました
後天的、ましてそれが3年前の出来事ということで、もっと怖さや苦悩、何気ない言動にもっと絶望感が漂っていても決して不思議ではないと・・・
田中麗菜さんの透明感ある演技はそれはそれでとても良かったと思いますが、少し綺麗過ぎて・・・

けれど、観てよかったと思える作品、原作を読んでみたいと思わせる作品であることは確かですよ
全盲で一人暮らしのミチルも、中国と日本人のハーフで単身日本に労働者となって来ているアキヒロも、負けてはいけないと抗うものの、この日本社会ではやはり弱者なのです。

乙一という作家は、そういう「意志ある弱者」の描写に長けた人だと(まだ何作も読んでいない私が僭越ですが)感じます。

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ミチルが友人との喧嘩のあと、「一人だって生きていける」と呟くシーン。
でも本当の本当に一人ぼっちでは生きられないよ・・・そう心の中でミチルに呟かずにはいられませんした。
現に、ふとした出来事でミチルはアキヒロに救われるのですが、救ってくれた見えない相手に向かってミチルが「ありがとう」と言うシーンは、「独りであることの孤独」を味わった人ならきっと胸の熱くなる思いはあったと思います。

アキヒロもミチルと出会うことで「自分の存在を許してくれる人が居る」ことの幸せを初めて感じるのです
本当に・・・自分の存在を大切に思ってくれている人がいるということの幸せは、筆舌には尽くしがたいものではないでしょうか。

意味は違っても“隠れた生活”をしていた二人が外に出る・・・杖を付きながら怖々歩くミチルが頼るのはアキヒロの腕でした。
このシーンもよかったですね。

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何にせよ、やはり人を殺めるのはよくないことと哀しく思いますが本件については違う結末が用意されていて、ラストシーンは明るい希望の光が垣間見えるようです。
(別に存在していた「殺める人間」のつらい背景はあるんですけれどね。)

殺められる人間を演じるのは佐藤浩市さんですが、今作では本当に“イヤな奴”の役柄で、凄い役者さんだと思うのにある意味残念にも思いましたが、観ているうちに“本当にイヤな奴”に見えてきたのも彼の「役者力」によるものなのかしらと関心しています。
しかし不思議なことですが、観終った後に思いだされる俳優さんの表情・・・佐藤浩市さんの“それ”が多かったのはやはりその存在感によるものなのでしょう。そう言う意味では、主人公のチェン・ボーリンは、何となく存在感に於いて負けていた気がします。素敵な俳優さんなのでしょうけれど。


 さて、今宵、以前友人から「赤エビスビール飲んだ?出たんだよ。」って聞いて気になっていた赤いエビスビールを飲んでみました。遅ればせながら、出てすぐに知人から戴いていたボージョレ・ヌーヴォの味わった時の感想も含めて、今日ここに記してみたいと思います。

まずは<ボージョレ・ヴィラージュ・ヌーヴォ 2006>
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やはりヌーヴォの赤は綺麗な透明感の溢れるベリー色ですね。
フレッシュな軽やかな感じです。「フレッシュさの中にもコクがある」との商品コピーでしたが、日頃ワインでもフルボディー、へヴィーでダークなものを好んで飲んでいる私にはやはり“フレッシュさ”が前面に感じられるのが特徴ならぬ「特長」でしたね。
おいしゅうございました。(*^_^*)

それから<赤エビス・・・正式名称は<琥珀エビス>。
              琅珎エビス.jpg

エビスは好きなビールですが、これはより一層の麦芽の深い味わいが、より一層の琥珀色の泡立ちとも相まってアルコール度数は5.5%止まりですが、食後にでも静かにゆっくり飲めるビールだと思いました。

暗いところで待ち合わせ・・・なかなか素敵なタイトルでしたね。



posted by ぺろんぱ at 20:54| Comment(2) | TrackBack(1) | 日記
この記事へのコメント
最近、シネリーブルさんや他の名画座?で映画を見ると必ずこの予告編が上映されていて気になっていた作品です。
うーん、他にも見たい作品があるんだが....これも見たくなりました、特に佐藤浩一さん。
どうしようか??

それと映画を(みる前ではなく)観てから乙一さんの原作も読みたいですね。
Posted by west32 at 2006年12月09日 21:14
west32さん、こんにちは。
昨夜コメントをインプットしたはずが何故か反映されておらず、再度打っています。

観たくなったと言ってくださるのは大変嬉しい事ですが、観終わって約一週間経過後の今は「特別強くお勧めできる程に心には残っていないかも」と言うしかない状況です。お気持ちを削いでしまったらごめんなさい。でも、もしwest32さんがご覧になったら是非ブログを拝読しに伺います!!

乙一さんの原作は、今読んでいるものが終われば読むつもりです。(^^)
Posted by ぺろんぱ at 2006年12月11日 12:41
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映画「暗いところで待ち合わせ」
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Weblog: 茸茶の想い ∞ 〜祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり〜
Tracked: 2007-12-06 02:02