9月最後の週末、27日(土)は爽やかな風が心地よい好天の一日でした。
映画館に篭ってしまうのはちょっと勿体無いほどの清々しさでしたが、観たかった映画の封切日でしたので前売券を手に映画館へ。
ナビオTOHOプレックスにて『イントゥ・ザ・ワイルド』(ショーン・ペン監督)を鑑賞。
148分の長尺、凄い映画を観てしまいました。
映画館の席を立ってしまうのが惜しいような、暫くはそこに留まって一つ一つのシーンや言葉を反芻したいような、そんな思いがしました。
ショーン・ペンってこんな凄い映画を撮れる人だったのですね。彼の監督作品は『プレッジ』に続いての二作目の鑑賞でした。
実は俳優としてのショーン・ペンはあまり好きなタイプではなかったのですが、本作で観る目が変わりそうです。
こんなに真っ直ぐに人間と向き合う映画を作り、そしてこれほどまでに見事に大自然をカメラに収められる人なのだから、やっぱりどこまでもタフで純な人なのかもしれません。
ちょうど<お題作>の『21グラム』をレンタルしているので鑑賞が楽しみです。

story
すべてを捨てアラスカへと放浪の旅へ出た裕福な青年の心の軌跡を描いた人間ドラマ。ショーン・ペンが監督を務め、原作は冒険家ジョン・クラカワー著のノンフィクション小説「荒野へ」。
大学を優秀な成績で卒業したクリス(エミール・ハーシュ)は車や財布を捨て、自由を手に入れるための放浪の旅に出る。労働とヒッチハイクを繰り返し、アメリカからアラスカへと北上。アラスカ山脈の人気のない荒野へと分け入り、捨てられたバスの車体を拠点にそこでの生活をはじめる。(シネマトゥデイより)
※映画に関する写真は全て映画情報サイトより転載させていただきました。
これは実話だったのですね。
最後に実在した青年のフォトが映され、理想を追い求め続けた純真さと現実が用意した過酷な運命とが、より強く心に突き刺さり涙する思い。
若さゆえの真っ直ぐさ、真面目さ、周囲に少しの歪みや嘘も許せない自己愛。
自らをスーパートランプ(究極の放浪者)と名付け、過酷な旅をすることが成長の証であると信じ続けた彼が、最後に見たものはバスの小窓に切り取られた澄んだ空の青と雲の白でした。

行く先々で様々な人と出会い、その都度彼は自論を優しくあたたかく大きな力で包容し、諭してもくれる意見に耳を傾けます。
「頭でっかちで、お前は未だ若い。」
「怒りや感情を抑えろ。」
しかしそれでも彼は旅を続けざるを得なかったのは、やはり彼は彼自身でその真理に到達したかったからなのだと思います。
“若さゆえ”というのなら確かにそうかもしれません。
どこか痛々しくもあります。
しかし誰がそれを愚行だと信念をもって彼を引き戻せたでしょうか・・・。
苦行にも似た荒野の旅は、たとえクリスと同じ年に戻れたとして考えても、私には出来なかったことでしょう。だけど彼に「それをするな」というにはあまりに自分は非力すぎて。神ではない自分ににはただ彼の幸福と無事を願うことしかできませんでした。
待つ側になった彼の両親、そして出会った幾多の人々の心を(結果的に)苦しめたことに付いては、或いは彼の罪だったかもしれません。
特にロン(ハル・ホルブルック)と交わした最後のやり取りには万感胸に迫るものがありましたし、深い確執のあった父親(ウィリアム・ハート)が最後に見せた天に向かっての慟哭には胸を締め付けられる思いでした。
若者の目線で描き続ける作品というわけではなく、経年の人間の心にも立って描かれていて、味わいの深い作品になっているのはさすがだなと感じました。

一度は戻ろうとしたのに雪解けの劇流が彼の運命を決めましたね。
あれは何だったのでしょうか。
言いようのない大きな力、それが神なのだとしたら、あれも神の用意した試練だったのでしょうか。
「幸福が現実になるのは、それを誰かと分かち合った時だ。」
その真理に到達した彼は、優等生のまま偽りの安全の中で生き続けるよりも幸せだったといえるのでしょうか。それは彼自身があの切り取られた空を見つめながら判断するしかできなかったことなのでしょうけれど・・・。

時間軸が交錯する作りではありながら、放浪の旅自体を一つの人生に置き換え、第一章「出生」から最終章「英知を知る」へ、まるで一遍の小説を読み進めて行くかのように丁寧につむがれていく作品でした。
クリス(エミール・ハーシュ)が語る言葉の一つ一つもある種の攻撃性を秘めながらも非情に澄んでいます。
ペン監督が描いたアメリカの大自然の数々もまた同じ。ある種の危険性を秘めながらも限りなく美しく透明で澄んでいました。時には息を呑むような壮大さも。
幸福の概念は人それぞれですが、絶対的自由というだけでは得られず、そこには家族、隣人といった他者との関わりが必要なんだと語ったトルストイの言葉も心に残りました。
凄いです、ショーン・ペン。

ワイルドといえば、お決まりの流れですがワイルド・ターキーですね。
これは少し前の画です。
(営業再開を待つ祈りを込めて・・・。


私も楽しみにしていた一作でしたが、ホント素晴らしい作品でしたよねぇ。
昔はショーン・ペンといえば、マドンナの暴力夫だとばっかり思っていたのですが、映画好きになってから、彼の人間性には惚れる一方です。
『インディアン・ランナー』も初監督作でありながら、既に素晴らしいセンスを発揮していますし。
本作はそう、決して主人公の若者目線というだけでなく、それを過去のものとして見ることができたり、親の世代の立場で見ることができたりという多彩で寛容なまなざしであったことがとても味わい深かったのでした。
俳優ショーンは『ギター弾きの恋』みたいな役もこなせるところがまた好きですー♪
今日は生まれて初めて(=^_^=)「ナナゲイ」に行って来ました☆
いやー、何とも隠れ家風でアングラな劇場ですたね、、
本作は、ワタシもこそっと気にしてます。
何たっておじいさん役のハル・ホルブルック氏が『ダーティハリー2』でキャラハン刑事の上司を演じてたしとでしたからね。
ショーン・ペンと言えば、ワタシも(上記コメントで)かえるさんが挙げてはる『ギター弾きの恋』が好きでしたね。
フェリーニの『道』をアレしてるような展開だけど、見比べてみるのも一興かな、と。
『アイ・アム・サム』ってのもありましたな。
ああ、忙しい〜
『ギター弾きの恋』、そうでしたね、ショーン・ペンが出てましたね!
あの映画は私も好きです。(*^_^*)
サマンサ・モートンも素敵だったし。
そういえば「自虐的」な部分がいい具合に出ていたのでしたっけね・・?。
>『インディアン・ランナー』も初監督作で
そうなのですね!
私は未見です・・・うぅむ、またもや<お題作>が増えそうです。(^_^)ありがとうございます。
七藝、劇場としてはお気に召したでしょうか。
ハル・ホルブルックさんはとっても良かったです。本作のあのシーンは泣けます、もしもご覧になるのでしたら心の中でハンカチのご用意を。
『アイ・アム・サム』も、一味違うショーンさんでしたね。うぅ〜ん、そう思い出して行ったら結構いい味の役をされてる役者さんなのですけれどね・・・。(^_^)