先の土曜18日は、梅田ガーデンシネマにて『画家と庭師とカンパーニュ』(ジャン・ベッケル監督)を鑑賞しました。
主人公がやたらと赤ワインを飲んでいたのに触発され、早速赤ワインを買って帰って飲んでおりましたら、肝心のレヴューアップが遅れてしまいました。
柔らかい光で満ちたカンパーニュの長閑な日々、屋外での風景画の制作、土との触れあい、そしてそこに「言わずもがな」とも言えるの友との語らいと豊潤な赤ワインがあれば、まさに至福の時ですよね。
story
かつての幼なじみ同士が、人生の終局に真の友情を育む人間ドラマ。『クリクリのいた夏』のジャン・ベッケル監督が、アンリ・クエコの小説を基に映画化した。
都会生活に疲れ果て、生まれ故郷カンパーニュの屋敷で田舎暮らしを始めた中年の画家キャンバス(ダニエル・オートゥイユ)。何年も放置された庭を手入れするため庭師を雇うことに。その求人広告を見て屋敷にやって来たのは、なんと彼の小学校時代の同級生ジャルダン(ジャン=ピエール・ダルッサン)だった。仕事への情熱を失い、妻とも離婚調停真っ只中の画家とは対照的に、地元に腰を落ち着け、勤めていた国鉄を退職して念願の庭師の仕事を始めた彼は、愛する家族たちと慎ましくも満ち足りた生活を送っていた。そんな2人はすぐさま意気投合、昔の思い出やこれまでの人生を尽きることなく語り合い、いつしか互いにかけがえのない存在になっていくのだが…。(allcinemaより)
※映画に関する掲載写真は全て映画情報サイトより転載させて頂いております。

この映画は何と言っても、画家キャンバスと庭師ジャルダン(共に愛称なのですが)の会話が心地よいのです。
邦題に添えられている「カンパーニュ」という語から、カンパーニュ地方の長閑な風景をじっくり長回しで撮って流してくれるシーンがあることを(実は)期待していましたが、原題「DIALOGUE AVEC MON JARDINIER / CONVERSATIONS WITH GARDENER」を見ると、作品としては“二人の会話”に重点が置かれたものなのかなと一応の納得はできました。
まあ、言葉を交わす二人の背景には終始、日光を浴びてそよそよと風に揺らぐ草木が描かれていて、それはもう本当に気持ちの良い映像だったので、それで満足といえば満足なのですけれどね。
二人の会話はちょっと可笑しくて、ちぐはぐに何処か咬み合ってなくて、初めはむしろ対極の位置から互いに言葉を好き勝手に投げ合ってる感じもしましたが、でもそれが自然で妙に心地よくて。
何十年ぶりの再会なのだから、もう随分と二人には不可侵の世界が広がっていたはず。
目の前のものを抽象的、概念的に捉えようとするキャンバスと、直接的且つ主観的だけどあるがままに全てを見ようとするジャルダンと・・・。それは全く違う世界で生きてきた人たちだから当然のことですよね。
でもそんなジャルダンにいいように引っ張られ、キャンバスが微妙に“変化”を見せていくところがとても面白くて、微笑ましいのです。
人生、独りでは生きられないのだとしたら、やっぱり最終的に求めるのはありのままを曝け出せる相手、なのでしょうかね。
キャンバスの描く絵まで、何だか変わってきていたのも凄く興味深く見ていました。

変わることで何かを得たのはキャンバスだけじゃない。ジャルダンも然り。
迫りくる死の恐怖と孤独をあれだけ素直に相手にさらけ出せたのは、その相手が悲しい思いなどさせたくない妻ではなく、全てを受け止めて飲み込んでくれると信じた友人キャンバスだったからなのですね。
キャンバスの絵の描き方が変わったのと同様、犬に対するジャルダンの態度も変わったものね・・・。
男女の仲睦まじさとは別次元の、心地よい重なりをそこに感じました。
受け止めるキャンバス(ダニエル・オートゥイユ)の優しくも熱い眼差しがまた素敵でした。
前鑑賞作『ぼくの大切なともだち』でも、全く生き様の違う相手を受け入れ、自身もその包容力を大きく変えていく中年男性を演じていらして、この俳優さんは第一印象を覆してどんどん好きになっていく男優さんです。
都会で名を成した画家でプレイボーイで・・・最初から“さもありなん”風に登場するキャンバス(ダニエル・オートゥイユ)に対して、田舎道を古びた小型バイクで突っ走る素朴で叙情的なジャルダン(ジャン=ピエール・ダルッサン)の登場の仕方はなんとも微笑ましく、「この二人の人生がどう関わっていくのかしら」とワクワク感でいっぱいになった本作の冒頭でした。
何かというと赤ワインを飲むキャンバスに対し、「身体に悪いことはやらない」と毅然と? 言い放つジャルダン。
ジャルダン役のジャン=ピエール・ダルッサンは、昨年の鑑賞作『サン・ジャックへの道』ではアル中男性を演じてて私としてはちょっと親近感なんか感じたりしてたのに(どんな親近感だっ!!)、お酒を注ごうとするキャンバスに「ほんの少しにしてくれ」だなんて、作品が違うから当たり前なのですが何だか可笑しいですよね。
頑固オヤジっぽいけれど妙に律義で愛妻家で、傍に寄ったらあたたかいお日さんの匂いがしそうなオジサマでした。

これから心地よさをいっぱい分け合えるはずの二人だったのに、別れはやっぱり悲しいね。
だけど、それぞれの心には互いの存在がしっかり残されているのです。ジャルダンにもきっと。
モーツァルトの曲が優しく癒してくれ、悲しい別れの後にもふわりと柔らかくて温かい陽の光が当たり続けている、そんなラストでした。
さて、赤ワインを中断して、昨日20日は、暫くお休みされていたJazz Bar Wishy-Washyが営業を再開される日でしたので行ってまいりました。
ママさん、ご復帰おめでとうございます。

いつものダイナマイトカクテル<W.W>のあとはバーボン2種を。


リクエストを見込んでちゃんと御用意して下さっていたJazz曲<スティーブ・マックイーン>、聴かせて下さって本当にありがとうございました。
「S.マックイーン」というタイトルのイメージに反して、とても哀切感のあるマイナーラインの曲だったのが意外でした。
切なく哀しくも、佳き曲・・・聴かせて頂いて本当にありがとうございました。

近年、ダルッサン出演作にはよくあたるのですがいい俳優さんですよね〜。
決してダンディな2枚目ではないのに惹かれます。
画家と庭師の人生が交わるステキな会話映画でありました。
個人的には映像で見せきってくれる映画がより好きなのですが、これはこれで心温まりー。
フランス映画はやはりワインが美味しそうなのがまた魅力ですよね。
ダニエル・オートゥイユは『ぼくの大切なともだち』と似た感じの役でしたね。
あっ、ちゃんと友達のいる所が違うけど。
彼に関しては、コミカルな役を演じている時が好きなんですよぉ。
特にお気に入りなのは「メルシィ!人生」です。
もしもまだご覧になっていなければ、ぜひ観て下さい!
趣味の押し付けになりそうで恐いけど。( ̄▽ ̄;A
ジェラール・ドパルデューとのやりとりが、ものすごく笑えます。ヾ(〃▽〃)ノ
私もダルッサンの“へんこな”オジさん振りには惹かれました。
「今日はコレだけ」、「残りはまた明日」、みたいなのんびりした(のんびり過ぎる!)仕事の段取りも“らしく”て・・・。
確かに、映像で見せてくれる作品の魅力には叶わない部分があったかもしれませんね。
言葉は台詞としても側面も出てくるので難しいところもあるし・・・。
「ワイン=水」の感覚を再認識できたのは嬉しい収穫でした。(^_^;)
同じ作品で、でも日付が違ったのかしらと、ちょっと淋しい想いです。
『メルシィ!人生』ってタイトルは聞いたことがあります。でも未見ですので<お題作品>に追加しました!(*^_^*)
ダニエル・オートゥイユさん、、、実は私の中ではコメディータッチの役よりシリアス路線のイメージが勝っていたのです。(作品は具体的に未見なので、あくまで感覚で、ですが。)
なので今年は「ダニエルさん再認識」の年になっています、良い意味で。(*^_^*)
カメラのボケぐあいがとても爽やかで、自然の中に暮らすことの豊かさが伝わりました。
映画に登場する絵描きさんの絵はずいぶんとヘタクソで魅力ないなぁと思って観ていました。
でも、ラストの個展の絵は、素直になれたのでしょうか、自然の生命感が溢れていました。生き方が変わると絵は変わるんです。
「生き方が変わると絵は変わる」・・・
なるほどです、keyakiyaさまならではのお言葉ですね。「カメラのボケぐあい」という御表現も面白く拝読しました。
人生で本当に“枷”を外せる時がいつかは訪れるのかな・・・と、この先の生き方の変化に(自分自身で)期待です。