2008年10月26日

ベティの小さな秘密

 日曜の今日ですが、終日仕事で出ておりました。いつものオフィスワークと違ってのイヴェントの仕事、、、多少の気疲れも今は赤ワインで復活、急ぎレヴューを綴っております。

昨日25日(土)はテアトル梅田で『ベティの小さな秘密』(ジャン=ピエール・アメリ監督)を鑑賞しました。昨日のうちにレヴューをアップすればよかったものを、昨夜は某チャンネルでの「某バトル」に熱くなってしまって(オメデトウ!次はNS!)いましたので、レヴューは今になってしまいました。

story
 ベティ(アルバ・ガイア・クラゲード・ベルージ)は想像力豊かで暗闇と幽霊が苦手な10歳の女の子。大好きな1歳年上の姉アニエスといつも一緒に遊び、楽しい毎日を送っていた。ところが新学期を迎え、姉は寄宿学校へ入ってしまい、一方の両親は離婚寸前で、すっかり孤独なベティ。そんな彼女の心の慰めは、近所の檻に囚われている犬のナッツだったが、その施設の管理人は今週中に引き取り手がないと安楽死にすると語る。父親に相談するものの相手にされず、学校でもふとしたことから辛い目に遭ってしまう。そんな中、父親が院長を務める精神病院から脱走してきた青年イヴォン(バンジャマン・ラモン)と遭遇したベティは、彼を庭の小屋に匿い、世話を始めるのだが…。(allcinemaより)
    ※映画に関する掲載写真は全て映画情報サイトより転載させて頂いております。

               ベティ1.jpg

タイトルの何処か甘酸っぱい響きから想像するもの以上の、これは小さな少女には一生のトラウマにも成り得る出来事の数々。健気に、というより純粋に自分の力で救おうとしているベティに気高い母性すら感じます。

近年出会った「少女を描いた作品」には何故かハズレが無い事を嬉しく感じます。本作は、観終わってた直後は素直に、本年劇場鑑賞作の十指に入れたいものだと感じたほどです。
確かに、かなり昔に鑑賞して心に残る映画となった『ミツバチのささやき』のあの痺れるほどの陶酔感や、昨年のマイベスト作『パンズ・ラビリンス』の息苦しいまでの哀感とドラマ性、そしてまだ記憶に新しい『落下の王国』の斬新さに比せば、ややインパクトに欠ける感は否めません。

しかし、幼な子が抱く大人世界への違和感や恐れ、一歩間違えれば危険なまでの騎士精神、真直ぐな心といたいけな少女にも備わる純粋な母性等をゴシックな映像美の中に写して少女期の“危うさ”を描いている点では決して引けを取らないものであると感じました。
何よりも主役のアルバ=ガイア・クラゲード・ベルージの黒く濡れた大きな瞳と、風に遊ばせた髪のおくれ毛が美しく、その存在感は新鮮且つ華々しいとも言えます。
               
                  ベティ.jpg

先述の通り、ベティを取り巻く環境や一連の出来事は単なる通過儀礼とは言い切れない衝撃的なものでした。

特に転校生の男の子とのエピソードは辛辣です。
精神的にも物理的にも双方に傷を負った子どもが、必ずしも他人の痛みを分かり人に優しくなれるわけではないのだという「人生の厳しい現実」を突き付けれるベティが非常に辛いです…まるて胸をえぐられる思いです。私としては、あの男の子とのエピソードについて何らかの監督としての決着を付けてほしかったなあ という思いが残りました。

イヴォンとベティとナッツの3人(2人+1匹)で辿り着いた<不思議の館>は、まさにベティの心が行き着く「なにものも彼女を脅かし貶めることの無い」世界なのです。
そこに辿り着くまでの、夜空に輝く月と星、手と手を取り合った道行きは、まさにベティが願った“理想の美しい世界”だったのです。あの夜空の下での道行きの描写が、私は本作中最も美しいと思え、また最も好きだと思えるシーンでした。

                  ベティ2.jpg

決して全てが解決されたわけではなく(少なくともベティの両親の問題の"コト"はそんな単純なものではないので)、「全てOKよ」と手をだすベティの両親には、今まで自分たちのことだけで精一杯だった割りにはちょっとイージーな気もしましたが、私がそれを斟酌する以前に、ベティの手がしっかりとイヴォンにつながれていたことで、この物語は十分に観る者に「あたたかい血流」の存在に気付かさせてくれたと言えるのじゃないかと思いました。

エリザベス、、、ベティと呼ばれていたって貴女は立派で素敵なレディーです。
そして、こういう作品はやはり何だかとても素敵です。


 今日の赤ワインは、またしても普段飲みのものですが<サン・ラファイエット ボルドー>です。
メルロー種の優しい癒しで今夜は眠ります。

                 サン・ラファイエット2.jpg


posted by ぺろんぱ at 21:20| Comment(7) | TrackBack(1) | 日記
この記事へのコメント
おおっ! 今週も同じ作品でしたね。
そうそう、休日出勤お疲れさまでしたぁ。
私の方は土曜出勤だったのでバタバタしてたんですが、
今日見に行ってよかった!
ぺろんぱさんのレヴューを読んで、私もニマニマしています。(=^_^=)

転校生の男の子についてはまさにイヤな予感が適中!って感じでした。
個人的にはもうちょっと後味のいいものが良かったですねー。
それと、ラストの家族揃って(何故お姉ちゃんまで?)の登場には正直、
ちょっと唐突さを感じてしまいましたよん。

でも、しかーし、忠実な犬と純粋な心を持った青年と一緒なら、
美しい星空の下で野宿するのも素敵。ヾ(〃▽〃)ノ

Posted by ゆるり at 2008年10月26日 23:08
ぺろんぱさん、こんばんは。
今週もフランス映画で嬉しいです。
世間一般的には地味な作品かなぁと思いましたけど、繊細さが素晴らしかったですよねー。
明るすぎず可哀想すぎず、リアル過ぎずメルヘン過ぎず。
不思議の館の存在、よかったですねー。

先日私は特集上映で「エル・スール」を初劇場鑑賞しまして、その際も美しい映像で綴られる多感な少女の思いにキューンとなったのでした。
Posted by かえる at 2008年10月27日 00:15
ゆるりさん、こんばんは!
ゆるりさんは日曜の御鑑賞だったのですね。(^_^)

あの男の子、、、画的に“含みのある”撮り方をされてるシーンがあったので私もちょっと厭な予感はしていたものの・・・あれが単なる幼少期のイタズラ心(好きな子は苛めたくなる、とかの)ならいいのですが、そうでないなら彼には「いつの日かの改心」を期したいですよね。

>家族揃って(何故お姉ちゃんまで?)

お姉ちゃん、、、どうせ登場するなら一リアクション欲しかったですよね。

でもしかーし(←真似てみました)、あのナッツはイケメン犬ですし、私も夜空を眺めつつイヴォンとナッツとなら“川の字”で?眠るのもいーかも、と思っています。(*^_^*)
Posted by ぺろんぱ at 2008年10月27日 21:02
かえるさん、こんばんは!

はい(^_^)、邦画が続くと映画で外国語、特にフランス語の響きが恋しくなったりしますぅ〜。
本作は期待満々で臨まなかった事が私には却ってよかったのかも知れません。(^_^)

『エル・スール』・・・
おお!ビクトル・エリセですね!
私は「敬愛する監督」欄に名を挙げているくせに未見です・・・しゅん。(恥)
きっと美しい映像なんでしょうね・・・(うっとり)。

かえるさんの仰る通り、ローズさんがよかったですね!『アメリ』をまた観返してみたくなりました!
Posted by ぺろんぱ at 2008年10月27日 21:10
犬さん出演もあるしで、観たくなってきました。

けど、この回で一番反応してしまったのは、青年役のーバンジャマン・ラモンーて名前・・。何か心に去来するもんありで・・しばらくしてヒラめきました!今年行った数少ない劇場鑑賞の一つ”ぜんぶ、フィデルのせい”でフィデルの弟役したお子の名前がーバンジャマン・フィエーていうための反応でありました。(な、な、なんちゅう可愛い子ぉやねん!と心の隅にその名をインプットしていたみたい・・)

関係ない話かんにん。けど、小さいとき可愛かった子ぉほど大きくなってからは・・ウゥッ。(何の話や)(すまん)
Posted by ビイルネン at 2008年10月28日 15:13
あほなまちがいしてしまいました!(めちゃ恥ずかし)
”フィデル”は”カストロ”のことやっちゅうに何でかーフィデルの弟ーて書いてしまいました。
ー主人公アンナの弟役ーです。(すまん)
Posted by ビイルネン at 2008年10月29日 02:43
ビイルネンさん、こんばんは。

はい、犬クンが登場しますよ。(^_^)
でもこのナッツ以外にも、不憫にも繋がれて来たるべき時を待つ犬クンが数匹登場します。ちょっと胸が痛みます。でもこのナッツくんは名優です!とてもいいです!

『ぜんぶ、フィデルのせい』のアンナちゃんも可愛かったですが、本作の主演のベティちゃんももの凄く可愛かったです。
そしてアンナちゃんの弟役のバンジャマン・フイエーくん・・・“可愛い+中々賢い”役柄で注目の男の子でしたね。バンジャマンという名前ってそうそう耳慣れた名前ではないですが、私は『ぜんぶ、フィデル・・・』の男の子役の名前はすっかり忘却の彼方でした、さすがはビイルネンさんですね!(^_^)

あ、、、でも外国のお子様は仰る通り結構成長と共に変わりますよね。子役時代の顔が“デフォルメ”されて描かれたみたいに。^_^;
フイエくんの愛らしさがずっと守られ引き継がれますように、、、ですね。(*^_^*)
Posted by ぺろんぱ at 2008年10月29日 20:01
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Excerpt: 監督:ジャン=ピエール・アメリス (2006年 フランス) 原題:JE M'APPELLE ELISABETH 【ストーリー】 姉の寄宿学校行きと両親の離婚危機を受け、...
Weblog: ゆるり鑑賞 Yururi kansho
Tracked: 2008-10-26 22:48