2008年11月06日

四月の雪(述懐)

 先日、郷里の母と電話で話していた時に何故か男優の話になり、母が「お母さん、谷原章介って好きやわぁ。凄くハンサムやもの。」って言うので、11月1日から谷原章介主演の『ハンサム・スーツ』っていう映画が封切られてるよと教えてあげました。

電話口の向こうで母はタイトルをメモっている様子でしたが、はたしてどうでしょう・・・観に行っても気に入るやらどうやら。

以前、歌(と言っても民謡ですが)の教室に通っている母に良かれと思って「観に行ってみたら?」と薦めた『歓喜の歌』は母に観に行った後で酷評され、またある時には「『最高の人生の見つけ方』を観に行こうと思うのだけど・・・どう思う?」と言うので「いい映画だと思うけど日本人の感覚とは微妙に違うかもよ。」ともしもの時に備えて釘を刺しておいたら、その後観に行った母から「感動したわぁ。とてもいい映画を観たわぁ。」と言われ・・・(そんならもう私に聞かんといてな)^^;。
半強制的に同行させられた父はどっちの作品も「それなりに良かった」と言っていましたが、後でこっそり母が私に言うには「お父さんたら途中で寝てたのよ。」とのことでした。

谷原章介さん好きの母も、かつては(今は?)大のヨン様ファンでした。
空港までの追っかけをするほどではなかったようですが、よくあるケース“冬ソナの為にDVDデッキを買った派”の一人であるようです。
そんな母を喜ばせるために、ヨン様特集の映画雑誌や写真集の類をプレゼントすべく何度か書店の韓流映画コーナーに通ううち、「ここまで多くの熟年女性を虜にするペ・ヨンジュンってどれほど凄い男優なのだろう」と思い、日本で公開された2005年に劇場へ観に行ったのが映画『四月の雪』でした。
母との会話でヨン様のその映画が蘇ってきたのですね。
             
                 四月のTOP.jpg                 
story
  照明監督のインス(ペ・ヨンジュン)は、妻の交通事故の知らせを聞き、病院へ駆けつけた。そこにいたのは見知らぬ女性、ソヨン(ソン・イェジン)。実は、インスの妻とソヨンの夫が、不倫旅行の最中に事故を起こしていたのだ。複雑な想いでお互いの伴侶の看病をする2人。そして、いつしか同じ苦しみや悲しみを持つ者同士惹かれあっていくのだった……。「八月のクリスマス」「春の日は過ぎゆく」のホ・ジノ監督がペ・ヨンジュンを主演に迎えて送る
切ないラブ・ストーリー。
  ※上記story、映画に関する写真、全ては映画情報サイトより転載させていただいております。

                  四月の1.jpg

W不倫の果ての事故、そして残された者同士のこれまた許されぬ愛、と、設定だけ見ればドロドロしたものを想定しがちですが、これはインスとソヨンの心の変化をゆっくりと丁寧に、静かに追い続けた美しい物語であったと記憶しています。
余計な台詞は排除され、二人を取り巻く「空気」と、その二人の「表情」の移ろいがこの作品のキーであったように感じました。

「微笑みの貴公子」と言われたヨン様でしたが、彼のあの黄金スマイルは皆無で、確かホテルの一室でインスが慟哭するシーンでは、声を殺して鼻水まで垂らしてまるで何かを絞り出すように泣いていた渾身の演技が今でも印象に残っています。
俳優としてのペ・ヨンジュンに意外にも好印象を抱いた私でしたが、それはやはり、ホ・ジノ監督の力量が一番にあるのは勿論ながら、私が韓流スターといわれる人達に興味が無かった分、殆ど予備知識を持たずに真っ白な思いで臨めたからかもしれません。
 
                 四月の2.jpg

本作のラストが、また深く静かに長く余韻をたなびかせるものでした。
あの雪が、それから後のインスとソヨンを暗示していたのでしょうか。
2005年のあの時の印象とは、今観ればまた違った「二人の道」をそこに見てしまうかもしれません。 
映画は“生きて”いるのですね。


余談ですが、その頃はまだブログを始めていませんでしたので、付けている日記を読み返してみましたら、『四月の雪』鑑賞日(2005年9月23日)の日記には「・・・映画は良かった。しかし“冬ソナ”から脱却せねばならないと苦悩するヨン様は大変だと思う。」と記していました。

過去の日記を探りつつ(またもや普段飲みのワインで恥ずかしい限りですが)赤ワイン<ボーランド・セラー>のグラスを揺らしています。フルボディでしっかりとコクのある味わいです。
赤ワインを形容する時の、私の好きな“枯れた古藁”の匂いもします。
でも、おとなしく今夜はボトル2/3くらいで終われそうです。

                 ボーランド・セラー 1.jpg

 そういえば昨日、件の母がメールをくれました。
「オバマさんが大統領になって、本当によかった!」と記されていました。
「新しい風が吹く感じだね。でもそこまでオバマさんを応援していたとは知らなかったです。」との私の返信に、再び返ってきた母のメールは、
「だってオバマさん、ハンサムで知的で凄く素敵じゃないの!」と・・・。

昔からどちらかと言えばストレートな性格だとは思っていましたが、年を重ねるにつれ、母も変わったのでしょうか。そんなことを言う母ではなかったような・・・。

しかし、母よ・・・そこまで判断基準をシンプルにしてしまっていいのか・・・!?  


 

  
posted by ぺろんぱ at 21:42| Comment(8) | TrackBack(0) | 日記
この記事へのコメント
刻(とき)とは残酷なもので、

美人が美人でなくなってゆくように、
ハンサムもハンサムじゃなくなっていくのですね・・

そして・・最期にものを言うのは「心の美しさ」です。





・・ああ、言うこと言うてスッキリした(=^_^=)
Posted by TiM3 at 2008年11月06日 23:25
自分も上記の赤ワイン、バリ気に入っておりますが、”枯れた古藁”ときましたかぁ・・さすがっ!ぺろんぱさん!(書きながらついケビン・クラインとメグ・ライアンの「フレンチ・キス」も思い出しました)

それと、TiM3さんのコメントに心打たれたりなんかして・・。(ウゥッ)
Posted by ビイルネン at 2008年11月08日 03:54
TiM3さん、こんにちは。

>最期にものを言うのは「心の美しさ」

しみじみ・・・TiM3さんて、ほんまはええ人やったんですねぇ・・・。(ほんまはとは何だっ!失礼な!)
そして心の美しさはやがて顔にも出ますよね。そういえば、20?、30?、40?過ぎたら自分の顔は自分の責任って言いますものね。

美醜を超えた問題として、「あるがままを受け入れ、あるがままの自分を生きるってことは、実はある意味“悲しみを伴う選択、悟り”であるのだ」というようなことをある本で読んだことを思い出しました。
そういうステージに到達した人に“孤高さ”を見るのかもしれないな、と今ふと思いました。
Posted by ぺろんぱ at 2008年11月08日 10:36
ビイルネンさん、こんにちは。

私としては、「枯れた古藁」の他に「湿った古藁」という感じの赤も大好きです。(湿った藁って・・・それってもしかして品質の劣化か?? ^^;)

それから『フレンチ・キス』ですが、私もどこかの劇場(在りし頃の大毎地下劇場???)へ観に行った記憶があるのですが、このワインの件りと、その映画がビイルネンさんの中でどうリンクしたのか、いろいろ考えてみたのですが分かりません。
年を取ってからの自分達を形容する台詞が結構キツかったという記憶は残っていますが、そんなところでしょうか??? でも分かりません。(なさけない・・・しゅん。)
よければまたお教え下さいね。

でもビイルネンさんも同じワインをお気に召されているとか・・・何だか嬉しいです!(*^_^*)
Posted by ぺろんぱ at 2008年11月08日 10:47
ぺろんぱさん、こんにちは〜
ホ・ジノ監督の『八月のクリスマス』に衝撃を受けて韓国映画を観るようになったので、
『四月の雪』も楽しみに観たことを思い出しました。
台詞にしない心の言葉を観せる監督ですよね。
それにしても素敵なお母様ですね!
本質の問題はしまっておいて、ハンサム評を遠くに住む娘と語らうお母様、素晴らしいです。
それに答えるお嬢様も優しい♪
とても嬉しい元気を頂いて、
老いて娘と語り合うのも良いのかも…と思えて来ました。
Posted by fizz♪ at 2008年11月08日 13:36
すんません、説明が足りんで・・。
いや、そない大したことないことなんで申し訳ないんですが、

ー劇中、ケビン・クライン(ワイン農場主の息子て設定やったと記憶する?)がメグ・ライアンに次々とワインを味見させ、その風味を表現させるというシーンがあり、メグさんがそれにすっと答えてゆく様が”かっちょよろしなぁ!”と感じたー

ていうの思い出した、てだけなんです・・。かんにん。
Posted by ビイルネン at 2008年11月08日 15:29
fizz♪さん、こんにちは、ようこそです。

衝撃を受けられたと仰る『八月のクリスマス』を、ならば私も是非鑑賞して衝撃を受けたいものだと思っています。佳き作品であると聞きかじりつつ未見の私です。

うちの母はちっとも素敵じゃないし、私も優しくなんてないのですが^^;、何といいますか、同性でこそ語れる話ってありますものね。
「嬉しい元気を・・・」だなんて言って頂けて私の方が凄く嬉しいです、ありがとうございます。

fizz♪さんにお嬢様がいらっしゃるなら、将来の映画談義が楽しみですね(*^_^*)。

Posted by ぺろんぱ at 2008年11月09日 16:04
ビイルネンさん、こんにちは。

ご説明ありがとうございます!
なるほど、そういう繋がりだったのですね。

私もそんな風に、さらりとオリジナルな表現で(しかも的確に)お酒の味を表現できるようになりたいです。(*^_^*)

メグ・ライアンはいいですね、好きな女優さんの一人です。
Posted by ぺろんぱ at 2008年11月09日 16:07
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