昨日・8日(土)は中崎町のプラネット・スタジオ・プラスワンへ『美しきセルジュ(原題:LE BEAU SERGE)』(クロード・シャブロル監督)を観に行ってきました。
これは1958年に撮られたモノクロームの作品で、11月21日からの<第15回大阪ヨーロッパ映画祭>の協賛企画として<ヌーヴェルヴァーグから遠く離れて>と題された回顧上映の一本です。

件の映画祭のパンフレットを読んでいて本作が目に入り、監督のクロード・シャブロルや主演のジャン=クロード・ブリアリやジェラール・ブランについて調べていくうちにどんどん期待が膨らんでいってどうしても観たくなりました。
当初は昨日封切の邦画を観に行くつもりだったのですが、いつの間にかすっかり私の頭は「セルジュ」モードになってしまっていました。
で、ひんやりと冷たい風が吹く中、中崎町に行って参りましたよ、中崎町ブルースを歌いながら。・・・あ、失礼、あれは中崎町ならぬ「伊勢佐木町ブルース」でしたね。
ドゥドゥビ ドゥビドゥビ ドゥビドゥヴァ〜 ♪
すみません、プラネット・スタジオ・プラスワンに行くのも初めてながら、中崎町駅で降りるのも初めてでしたのでちょっと気分が高揚していました。

プラネット・スタジオ・プラスワンはこんな感じの空間です。
スタッフさんに了解を得て写真に撮らせて頂きました。
で、『美しきセルジュ』。
story
フランソワ(ジャン=クロード・ブリアリ)が病気療養のため、パリから故郷の村に帰ってくる。
バスで村の広場に到着したフランソワはカフェの2階の小さなホテルに落ち着くが、そこで幼なじみのセルジュ(ジェラール・ブラン)がアル中になって、悲惨な夫婦生活を送っているのを目撃する。セルジュは建築家志望だったのだが、恋人のイヴォンヌ(ミシェル・メリッツ)が妊娠したため、上京を断念し村に残っていた。しかし、最初の子供は死産、妻は現在二人目の子を宿しているが、セルジュは妻をかまおうとはしないばかりか、妻の妹マリー(ベルナデット・ラフォン)とも関係を持っていた。
※上記story および 映画に関する掲載写真は全て映画情報サイトより転載させて頂きました。

ヌーヴェルヴァーグとは「広義においては、撮影所(映画制作会社)における助監督等の下積み経験無しにデビューした若い監督達による、ロケ撮影中心、同時録音、即興演出などの手法的な共通性のある一連の作家・作品を指す(Wikipediaより)」ということですが、本作はその代表的監督の一人であるクロード・シャブロルの長編デヴュー作品です。
今でこそロケ撮影中心というのは当たり前の手法になっていますが、当時では斬新で画期的手法だったのでしょうね。映画の冒頭で「(この映画が撮影されたクルーズ県サルダン地方の人々に)深く感謝する」という言葉が映し出されたことに、新鮮な感銘を受けました。

第一作目ということが予備知識であったせいかもしれませんが、作品にはどことなく「若さ」が感じられました。
全身がナイフのように尖ったセルジュも、そんな彼を必死で救おうと苦悩するフランソワも、両方共に監督自身の投影であるかのように感じました。
傷付け合いながらも関わり合おうとする、まさに“青春の群像”というイメージでした。そしてそこに、“映画を革新しよう”と意気込む監督自身の熱情のほどばしりも強く感じられました。
特に、「偽善」や「傲慢」という言葉を使ってフランソワと神父が痛烈に相手を批判し合う件りは、監督の「藝術活動についての“自身への問いかけ”」とも受け取れるものでした。

タイトルの意味と共に、ラストシーンについては深く考えてしまいました。
ラストに見せたセルジュの笑顔が「美しい」のであれば、あのラストは本来の自分を取り戻すであろうセルジュの未来が描かれていると言えますが、果たしてそうなのか否か・・・。
そう信じてあのラストシーンを観ていたのですが、セルジュの顔が徐々にぼやけてゆき、笑い声のこだまする中、ぼやけた白い輪郭に浮かぶセルジュの残像がとても不気味に変化し始め、背筋に寒いものが走った気がした私です。
あそこで何故セルジュの笑顔をそのまま残さなかったのか・・・あのラストシーンの持つ意味を「希望」と取りたい私ですが、本当のところはどうなのか、複雑に尾を引いている今です。

作品は公開時には商業的に大成功を収めたそうです。
撮影にあったアンリ・ドカのカメラワークを賞賛する声も高いようですが、私としてはジャン=クロード・ブリアリの繊細な感じの魅力も功を奏していたと思いますし、何より映画についての革新的な風がそこに吹いていたからなのでしょうね。
フランソワとセルジュの幼い頃の関係がもう少し何らかの形で描かれていればもっと現在のセルジュの荒廃が理解できたのにと思ったの点が残念だったのと、肺の病で静養にやって来たというフランソワなのにやたらと煙草を吸ってて、またその吸殻をどこにでもポイ捨てしている彼の行動が凄く気になったのですが(細部にもうちょっと気を配って欲しかったです)、この映画は新しい輝きを放っていたヌーヴェルヴァーグの時代の原点に触れて、その息吹を感じるっていうことで十分なのじゃないでしょうか。
さて、上映後にシアターの細い階段を下りて外に出ると、街は黄昏色の中で幾つかのネオンが灯り、夜の装いをまとい始めていました。

花散る夜を惜しむよに 伊勢佐木あたりに 灯りがともる ♪
(※くどいようですが、ここは伊勢佐木町じゃなくて中崎町です。)
ネオン灯る夕暮れの街を梅田まで歩き、先に集まって飲んでいるという飲み友達・Hさん、Cさん、Mさんに合流させてもらって、あったかいお酒のあと、黒糖焼酎<喜界島>をオン・ザ・ロックで。

ドゥドゥビ ドゥビドゥビ ドゥビドゥヴァ〜 灯がともる ♪
(YouTubeで聴いてからヘヴィーローテーションです。)
地下鉄は利用せず、茶屋町からちょぼちょぼ歩きでよく通ったものです。練習のあとは、もち居酒屋(やはり梅田)で生ビールっ!(なつかしい・・)
「ヨーロッパ映画祭」ですかぁ、むむっ。ーはずしましたー
早々にコメントをくださっていたのですね、ありがとうございます。(凹むことがありましたが、気力、復活です。)
円さんの音楽スタジオってリハーサルスタジオのようなものですか?
練習って、ビイルネンさんは何の楽器をどのような形で演奏されていたのでしょうか??よろしければお教え下さいね。
練習とか労働とか、そんな後の一杯のビールは美味しいですよね。(^_^)
私も学生時代に学外の某演劇集団に入ってて、集会後に居酒屋で打ち上げ!ビール!っていうのを思い出しました。
>ーはずしましたー
ああ、予測して下さっていたのですね。(*^_^*)
でも当初観る予定をしていた映画にしていたらきっと当てて下さっていたような気がします。
今後とも引き続き宜しく?お願いいたします。(*^_^*)
と言うのも、ヨーロッパ映画祭、リサイタルホールの方は前売り買ったものの、
ヌーヴェルヴァーグの方、すっかり忘れてましたよー。
最近、1つの事をするともう片方を忘れるという老化現象が甚だしい。。。。。
ヌーヴェルヴァーグの中でも、この監督さんにはあまり馴染みが
ありませんでしたので、余計に興味深く読ませていただきました。
なんだか当時のアツイ息吹きが伝わってきた様な気がします。
そうそう、青江ミナさんってなんか色っぽいなぁと、子供心に思ってましたよ。
和製ジーナ・ローランズ!?
で、譜面まったくダメやっちゅうに、な、なんとフュージョンバンドのキーボードやっとりました。(正味でたらめキーボードですが・・キッパリ)
ぺろんぱさんのー某演劇集団ーちゅうのもめちゃ興味深いっ!大スクープであります!!
(またいろいろ聞かせて下さいね)(主役はったはったとか・・その美貌やし・・)
リサイタルの前売り、もう御購入されたのですねー(さすが!)(*^_^*)。
私はちょっと迷ってまして、多分行くのは一本だけになりそうです・・・興味ありの作品は3本あるものの…。(ゆるりさんとのニアミスなるかっ!?)
私もこの監督作品は(監督されたものとしては)どれも未見でした。
本作も、実は見応えと言う点においては冷静に判断するに「やや期待外れは否めず」でした。しかし、ゆるりさんも仰っている通り「当時の息吹」を体感する意味においては良かったです。
青江三奈さん(調べて「三奈」って漢字が分かりました・・・ゆるりさんとは同じ世代なんですね、私はきっと)、、、私もゆるりさんと同様、子どもながらにあの放たれた色香?には圧倒されていたように思います。あの髪型にも。
今回、「なかざき」→「いせざき」つながりでイメージしてしまって、Youtubeでちゃんと歌詞を確認しながら聴いてみたらすっかりヘヴィロテになってしまいました。なかなか深い歌です。
困るのは朝の通勤電車の中で突然にヘヴィロテが始まることですが・・・。^^;
>ジーナ・ローランズ
『グロリア』ー!!
似てますね、確かに。(*^_^*)
えぇーっ、フュージョンバンドのキーボード!?
それこそ大スクープですね!極めてこられたのはJazzだけではなかったのですね。(Jazzとフュージョンはリンクしているところはあると思いますが・・・)
当時の勇姿を是非拝見してみたいです。(*^_^*)
私はとある募集で集まった、学生から社会人までの個性的な面々でしたが、あっけなく数ヶ月で解散の運びとなりました。
>その美貌
・・・・・?????
ビイルネンさん、冗談は「堺引越センター」だけにしてください。(^^ゞ
一度きりの公演で、私は「裏方」やって終わりましたよ。でも演劇は好きでした。
ジャン=クロード・ブリアリってどっかで何かで見た名前やと思ってたのが、ようやく解決・・エリック・ロメールの”クレールの膝”に出たはった人でしたわ。(思い出すのおそっ!)(最近こんなんばっかし・・トホホ)
『クレールの膝』!
そうなのです、その作品も今回の<ヌーヴェルヴァーグから遠く離れて>の回顧上映の一作としてプログラムに組まれています。
ロメール監督も同派の一人なのですね・・・。
ブリアリって、私の持っている『外国映画の男優名鑑』によりますと、「整ってはいるがハッとするほどの美男ではなく、平凡且つ無難な個性・・・云々・・・」ということで、当時のヌーヴェルヴァーグの監督さん達(シャブロルやゴダールとか)から「」ブリアリに任せておけば安心」と重宝がられていたそうです。
私は、その雑誌のそういう評価の姿勢ってどうかと思いますし、第一、別に“無難”とは思いませんでしたが・・・。
当該誌の掲載写真なんて、甘くセクシーでどことなく危なっかしさも漂っていて中々素敵なお顔でしたし。(*^_^*)
結構いろんな作品に出ておられるみたいです。
私も何作か鑑賞していたようですが、肝心のブリアリさんの役柄が思い出せないのです。
(私もこんなんばっかりです・・・トホホのホです)