2008年11月27日

ユナイテッド93(録画鑑賞)

 
 先日の地上波初放映『ユナイテッド93』を録画撮りしておいたのを、昨夜遅れ馳せながら鑑賞しました。
劇場公開時に観に行けなかったので、字幕版でないのは少し残念ながらこの機に観ておきたかったのです。

そう長くない映画ですが、時間の長短は無関係に、その余りの緊迫感に途中で席も立てずに一気に鑑賞し終えました。
そして鑑賞後は、(細部はどうあれ)結果事象として「実際に起こったことである」という衝撃と、ラストの幕切れの仕方に軽いショック状態になり、これまた暫くは腰を上げられませんでした。
クール・ダウンならぬ、ウォーム・アップが必要でした。
テレビ画面ですらこうなのだから、これを劇場でスクリーン鑑賞していたらどんな状態になっていたでしょうね・・・。

story
アメリカ史上最悪のテロ攻撃事件として記憶された2001年9月11日の出来事を、当事者の視点から再現した衝撃的作。
『ボーン・スプレマシー』のポール・グリーングラスが脚本と監督を手がけ、4番目のハイジャック犠牲となった、ユナイテッド航空93便の乗員と乗客らの姿を描く。
 2001年9月11日。大勢の乗員・乗客を乗せたユナイテッド航空93便は、離陸後にテロリストによってハイジャックされていることが判明する。やがて、その情報は搭乗者のみならず、地上にいる彼らの家族や管制塔にも伝わった。耳を疑う情報が流れ、想像を絶する恐怖に襲われながらも、機内の人々は一丸となってある決断を下す。(シネマトゥデイより)
   ※映画に関する掲載写真は全て映画の情報サイトより転載させて頂きました。

                ユナイテッド.jpg
  
  テロ後7年と少しの時が経過しているのである程度冷静に向き合えたとは思いますが、それでも身体がすぅっと冷えていく怖さを感じました。
ある意味ショックだったのは、テロリストたちもハイジャックされた乗客たちも、どちらもがそれぞれ、共に神に祈りを捧げ、共に地上に残した(テロリストにとっては残すこととなる)家族に「愛しているよ」の声を伝えようとしていたことです。

勿論テロ行為は断じて許されることではないのですが、本作の中で「テロリスト=絶対悪」という図式は見えませんでした。
ドキュメンタリータッチで(ドキュメンタリーではありません、そうでないからこその作品としての良さもあったと思います)あるがままを再現しようとした中で、監督は敢えてどちら寄りでもない描き方をしたのだと思えました。
「テロ行為は悪」であるけれど、視点を変えれば、このテロリストたちも歴史の大きなうねりの中で「何か」の犠牲になったのだということではないのでしょうか。少なくとも私はそう感じました。

                 ユナイテッド3.jpg

であるからこそ、何故、同様に神を信じ祖国を愛し家族を愛している者同士が闘わねばならないのか、暗澹たる思いに陥ります。
信仰の違いはあれど、本来、「愛」を伝え説く「神」は一つであって然るべきなのではないか、、、原点に立てばそうなのではないかと思えるのですが、諸々の事柄が複雑に絡み合った今の世の中で、結果としてこれほどのテロ行為がなされてしまったのは酷く惨いことでとても悲しいです。

 WTCに立て続けに旅客機が激突するシーンは、それを遠景の中に捉えた描き方をしていますが、それでも、起こった瞬間の映像には息を飲みます。起こった事実を知っているのに、「信じられない」という思いに暫し呆然となります。
複数の旅客機が同時にハイジャックされ、次々に自爆覚悟の破壊行為がなされていく中、「危機管理」という言葉の重大さを、そしてその機能が麻痺してしまった時の怖さを、これほど強く大きく感じた事はありませんでした。
想定し得たシミュレーションの範囲を恐らくは大きく超えていたものだったのでしょうか、最終判断は米大統領に委ねられながらも、ようやく得られた「ハイジャック機は撃墜せよ」との命は誤爆を恐れ(空路には4,200機もの飛行機が!)実行に移されることなく終わりました。

  多くの人々が犠牲になりました。
そしてその全ての人が、筆舌に尽しがたい恐怖を味わって死んでいったということに、同じ人間として改めて哀悼の祈りを送りたいです。
人間が真正面に“避けられない死”と向き合った時、やはり大切な人に何らかの想いを言葉で残したいと思うその悲しいまでの純粋な気持ちを、ずっしりと受け止める思いで観ていました。私なら・・・、そして私にとって大切な人がそこに居たのなら・・・。

                 ユナイテッド1.jpg

本作で描かれたユナイテッド93便の乗客・乗務員たちは、自分達は避けられないであろう「犠牲」を少しでもそれ以上広げまいとテロリストたちに向き合い、闘い、テロリストたちの目的を完遂させることなくペンシルバニア州シャンカヴィルの地表に散っていきました。
誰もが死を予感したであろう何十分間、そしてだれもがその死から逃れられないと悟ったであろう何分間、そして大きく迫り来る平野が視野に入った死の直前の瞬間、人々の胸に去来するものは何だったのでしょうか。

「愛している、それだけを伝えたかった」・・・乗客が家族に残した言葉が胸を突きます。
             
最後に、本作に関してウィキペディア(Wikipedia)に記載されている内容を一部下記に転載させて頂きます。
「アメリカ同時多発テロでハイジャックされた4機のうち、唯一目標に達しなかったユナイテッド航空93便の離陸から墜落までの機内の様子を、残された資料や証言などにより可能な限り再現、製作されたノンフィクション映画である。製作には遺族のほとんどからの了承を得ている。出演者は無名俳優が中心に選ばれた。また、リアリティを追求するために、パイロットや客室乗務員役にはその職業の経験者を起用。特に管制官役の一部は、事件当時実際に勤務していた管制官が本人役を演じている(CASTでは「As Himself」と示されている)。また、空港との無線等には、事件当時の実際の音声が一部使用されている。」

                ユナイテッド2.jpg

  一連の事件に関連して亡くなられた全ての方々のご冥福を祈ります。


このテロのあった2ヵ月後、何をおいても祝福したいある夫婦の結婚を祝うためアメリカへ旅立ったことを思い出しました。
確かに飛行中、脳裏の片隅に不安がなかったといえば嘘になりますが、それ以上に明るい未来を感じたい自分がいたことは確かでした。
そして現地に無事到着し、多くの知人友人たちに祝福され幸せに包まれた二人の笑顔を見た時は、「あぁ、本当にここに来て良かった」と心から感じました。「この地に確固として生きて、この地で新たに家族を成し、この地で新しい営みを形作っていく」・・・そんな、人間としての「底知れぬ力」を眩いほどに感じたことも確かです。
破壊はあっても再生の力がどこかで生まれることを信じたい・・・。

本作はつらい映像の連続でしたが、観たことは私自身のプラスになると思いたいですし、今後忘れられない映画になると思います。



  一夜明けてのウォームアップ。

                     tHAq.jpg 

寒くなってきましたね、バーボン<フォア・ローゼズ>を 1:1 のお湯割りで。
ふわーっと広がるアルコールの浸透感を感じています。

posted by ぺろんぱ at 20:35| Comment(2) | TrackBack(1) | 日記
この記事へのコメント
ばんはです。

本作、ワタシも(公開当時、劇場で観たのに続き)2度目の鑑賞でした。

またコメントしてみようと思います。

最初に後ろから刺された方が、気の毒で気の毒で仕方なかったです。

ディスプレイ(レーダー)上では機影が「ピッ」と消えてしまうだけの「変化」なのに・・

あんなに大きなドラマが「現場」では起こっていたのですね、悲しみや怒りと共に・・
Posted by TiM3 at 2008年11月27日 23:54
TiM3さん、こんばんは。
本作、いろいろ「プロパガンダ作品・・・云々」等の酷評も目にしていたのですが、全くそういうものは視野に入りませんでした。
素直に、(つらい映像だったけど)観ることが叶って良かったと思っています。
TiM3さんは公開時にも観に行かれたのですね!

私もあの「消えたぞ・・・」の瞬間、そこに起こったことを思うとゾッとする思いでした。

>最初に後ろから刺された方が、気の毒で

そうですね・・・意味も分からぬままの突然の出来事でしたよね、ご本人にとって。
自分の死の意味に何らかの整合性を持つことも叶わず苦しんで死んでいかれたことを思うと、遺族としては涙を禁じえませんね。
どうしたらいいんでしょうかね・・・この世の中を。

Posted by ぺろんぱ at 2008年11月28日 20:56
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映画「ユナイテッド93」
Excerpt: 原題:United 93 あの日、帰宅してテレビを観たとき、まるで映画のワンシーンのよう、まるで映画のセットのよう、まるでスローモーションのよう、とても現実だとは・・ 2001年9..
Weblog: 茸茶の想い ∞ 〜祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり〜
Tracked: 2009-01-10 12:06