2008年11月30日

BOY A

公開を待っていた本作。
12月末から梅田ガーデンシネマで公開と思っていたところ、先駆けてシネカノン神戸で29日から公開されることを週末に近づいた某日に知り、予定を急遽変更いたしました。
昨日29日(土)はシネカノン神戸でモーニングショー『BOY A』(ジョン・クローリー監督)を鑑賞。

story
  24歳のジャック(アンドリュー・ガーフィールド)は、子供の頃に犯した犯罪により少年院に入れられ、14年間の刑期を終え再び外の世界へ出ようとしている。ソーシャルワーカーのテリー(ピーター・ミュラン)から仕事とアパートが与えられ、彼は過去を隠し、名前も変え新しい生活を始める。運送業の会社に就職した彼は、同世代の青年クリスとコンビを組むことになる。職場にはミシェル(ケイティ・リオンズ)という気になる女性もいた。ある日ジャックは、クリスに後押しされてミシェルを誘うが…。(goo映画より抜粋)
   ※映画に関する掲載写真は全て映画情報サイトより転載させていただいております。

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 ひどくやりきれない気持ちに、暫く席を立てませんでした。
自分の中で様々な思いが交錯し、いまだ容易に答えを出せないでいるのですが、ジャックとして生きようとした“Boy A”に出会って、ジャックとして生きようとした彼を知って、私の中の「罪と罰」に対する意識が少し変わるように思える今です。
ずっしりと心に残る重量感、“淡い光と影”が混在する神々しさも漂う画、それでいて“瑞々しい輝き”を放つ映像の魅力という点も併せて、今年の私の劇場鑑賞作「BEST5」に入れたい印象深い先品になりました。


脚本家からの「彼が過去に何をしたかを、これからこの映画を観る人には明かさないで欲しい」というメッセージがあります。
「それが最も重要なことなのだから」と。

それなりの大まかな想像はつくのですが、初めに出会った「BOY A」がこの無垢な瞳を持ったジャックであったから、次第に今の彼に感情移入していく私がいました。彼が過去に犯した本当の罪など、もう知りたくはないとさえ思ったほどに。

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それはやがて徐々に明かされていくのですが、彼の犯した罪は「罪」で、そしてそれは「悪」であることは確かであり、それはおそらく彼が一生背負って生きなければいけない罪なのだと思います。
しかし一方で人間の「更正」ということに思いを馳せる時、それを阻むものがこの世に存在することも確かです。
そして私は、それも一つの「悪」なのだと思うのです。

「悪」を形作るものは何なのか。
それは彼らの心の「闇」のようなもの・・・。
赤ちゃんとして生まれた時から悪を抱えている人間なんていないと思うのです。彼らが育っていく途上で、その悪は他者との関わりの中で形作られていくように思えるのです。ソーシャルワーカー・テリーの息子も然り。勿論、フィリップも然り。

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唯一の友人であったフィリップという名の一人の少年。彼が本作の一つの重要な鍵となっています。
フィリップを闇に落としいれ、彼の中に悪を巣くわせたものは何だったのか・・・。
悪の糸をたどって行けば一体どこに辿り着くのか・・・。
昨年『明日、君がいない』(ムルーラ・K・タルリ監督)を観た時に感じたのと同様に“得体の知れない悪魔”の影をふと踏んでしまったかのような、そんな心のざわつく厭な思いが蘇りました。
本当はフィリップがこの世に生きて再生してこそ、本当の意味を持つテーマとなる「BOY A」なのかもしれません。
 
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薄暗い部屋に一条の光が射すような、そんな「希望」を感じさせたオープニングだったから、あれほど悲しく心の痛むラストがあることなど私には想像出来なかったです。
現実から逃れるため電車に飛び乗ったジャック。パーカーのフードをかぶって座席に眠る彼が、まるで疲れた羽根を休めている迷い鳥のように見えたと言ったら、それはやはり言い過ぎになるのでしょうか。
心の底から屈託なく笑える日は永遠に来ないかもしれなくても、今のジャックしか知らない人間にとっては、少なくとも彼は存在し続けるに値する人間だったのだと思います。
だけど過去の罪は・・・?そう問われると、やはり答えは出ません。消せない罪を一生背負うのが「贖罪」なのだとするなら。
              
フィリップとある意味“対極の位置”において重要な鍵となったミシェルの存在は今を生きるジャックにとってとてもとても大きかった。
だから最後に、幻の中でミシェルと向き会えたことが唯一の救いであり、あのシーンがミシェルに聖母を重ねるほど美しいと思えたシーンでした。


  前レヴューの『ユネイテッド93』の時と同様、ウォーム・アップが必要でした。
観終わった後は近くのスタバへ。

                 BOY A スタバ.jpg

温かいラテを、抱きしめたい思いに駆られたジャック役のアンドリュー・ガーフィールドと共に。
posted by ぺろんぱ at 06:08| Comment(6) | TrackBack(0) | 日記
この記事へのコメント
マイ・ネーム・イズ・ジョーの人(ピーター・ミュラン)が出たはったんですね。上の写真で見る限り、やはり年月を感じましたです。(人のことは言えんやろっ!)

で、タイトル見て即”少女 A”を思い出してしまい・・・いつもこんなコメント許してちゃぶ台。
Posted by ビイルネン at 2008年12月04日 02:50
ビイルネンさん、ようこそです。

そうなのですよ。本作は「ケン・ローチ印」的なイメージのものとして世に出されています(あくまでイメージ、ですが)。なので、ローチ監督の『マイ・ネーム…』のピーター・ミュランさんが準主役で出ておられたのも何となく頷けました。私は未見ですので、益々『マイ・ネーム…』を観てみないとなぁって思った次第です。

>タイトル見て即”少女 A”を
>こんなコメント許してちゃぶ台

いえいえ、まさしくコレは「少年A」ですから「少女A」の持つ意味合いと同じです。(^.^)
ただ、明菜ちゃんの「少女A」と違って日本で「少年A」というとあの神戸での事件を想起してしまいますけれどね。

ビイルネンさんの「ちゃぶ台」、久々に拝見しましたぁ!(*^_^*)
これからもどんどんコメントしてちゃぶ台ませ。


Posted by ぺろんぱ at 2008年12月04日 12:52
ぺろんぱさん、こんにちはん。
やるせない物語で下が、味わい深い秀逸な映画でしたよね。
エモーショナルな感触が気に入りました。
私は近年、あまり善悪という物差しをもたないようにしていたりもするので、ぺろんぱさんがたびたび悪に言及されているあたり、興味深く読ませていただきました。
断罪するとしたら、まずは報道あり方かなぁ。

上目使いに盗んで見ている青いあなたの視線がまぶしいわぁ♪
って彼は外国人?
Posted by かえる at 2008年12月06日 12:35
かえるさん、こんいちは。
私も、(やるせない内容ながら)感覚的に非常に気にいった作品です。

>悪に言及

私なりに考えて記してはいるのですが、もしかしたらそこに何らかの不遜さが入ってしまっているかもしれません。自分は“こちら側”にいる人間だというような驕りも。かえるさんのコメントでハッと気付く思いもありました、ありがとうございます。
まっさらな気持ちでこれからも考えていきたいです。

少女A! 
>彼は外国人?
ホントにそう思っちゃいますよねぇ。^^;
しかし視線を「青い」と言いのけちゃう少女っていうのも怖いですねぇ。^^;
Posted by ぺろんぱ at 2008年12月07日 11:00
やっと観ましたよー。
見ている最中に、いろいろと想像力を働かせてしまい気が休まりませんでした。
ジャックやフィリップやテリーの息子の幼少期とか家庭環境とか、いろいろと。
冒頭で登場するジャックの表情からは、彼が悪意を持って一線を超えたとは
とうてい思えなかったし、そうではなかったと思います。

人が人を裁くというのは、とても難しい事ですね。
そこに間違いの生じる可能性はおおいにありますし。
陪審員制度か。。。。正直、私は自信無いです。
そうも言ってられへんけど。( ̄▽ ̄;A
アンドリュー・ガーフィールド、彼の痛みが伝わってくるようで、
心がチクチクしました。

Posted by ゆるり at 2009年01月04日 23:03
ゆるりさん、こちらにもお越し下さりありがとうございます。

そうですね・・・フィリップの家庭環境が、フィリップのみならずジャックの人生にまで影響を及ぼすことになったことを考えると、胸ふたぐ思いです。
だから、結局はフィリップの事に蓋をしてしまっては語れないこの物語なのですね。その点が今も気になっているところです。

>人が人を裁くというのは、とても難しい

私も同感です。
裁判員制度の始まりと、それがもたらす様々な現象がちょっと怖い気がします。
Posted by ぺろんぱ at 2009年01月05日 20:39
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