昨日20日(土)は公開をとても心待ちにしていた『ラースと、その彼女』(クレイグ・ギレスピー監督)をシネリーブル梅田で鑑賞。
人形との恋愛っていう設定だけでワクワク感が一杯ながら、何故か哀感を含んだイメージを抱いていた本作。
そしてそのイメージどおり、ほろ苦い切なさたっぷりの、でもそれ以上に優しい人間愛に満ち溢れた、とっても素敵な作品でした。
story
幼いころのトラウマから人とのつながりを避けて生活し、毎日地味な仕事に従事する青年ラース(ライアン・ゴズリング)。そんなある日、彼はガールフレンドを連れて自分を心配する兄夫婦(エミリー・モーティマー、ポール・シュナイダー)と食事をすることに。しかし、ラースが連れて行ったガールフレンドとは、インターネットで注文した等身大のリアルドールだった。(シネマトゥデイより)
※映画に関する掲載写真は全て映画情報サイトより転載させて頂いております。

吐く息も白く凍る雪景色の街に起こる、とっても温かい物語。
ラースにリアルドールを「彼女だ」と紹介されて唖然とする兄夫婦ガス(ポール・シュナイダー)とカレン(エミリー・モーティマー)。
二人の言動がとにかくとても可笑しくて笑いの連続なのですが、コメディーで終わらない、「人と人との関わりの大切さ」と「トラウマからの脱却と心の再生」に触れた味わい深い作品でした。
とにかく悪い人は出てきません。登場人物全てが好きになってしまう人達でした。
街中の人がラースとリアルドール(名前はビアンカ)を本当の恋人同士として受け入れる姿は、“微笑ましい”という以上に、ラースを支え、心の開放をじっと待とうとする慈愛の心に満ちていて静かに心を打たれます。
そこを「あり得ない」ととるか「そうであって欲しい」ととるかでこの物語の見方は大きく変わってくるでしょうね。

ラースを一人の人間として愛し、見守り、待つということ。
この「待つ」ということがどれほど大切なことかを、私は思い知らされました。
トラウマと共に生きてきた年月が長い分、人は心を開け放つにも長い時を要するのでしょうね。
その人を愛するが故に、信じて待つことが出来る・・・いみじくも冒頭で神父が祈りの言葉として言っていた言葉ですが、やはり「愛こそが全て」なのだと思いますね。

ビアンカはラースの心が作り出したもの。
身体に触れられると「痛い」と感じるラースの心の傷は、母の死の原因や家庭環境がそうさせたもの。
それを分かり、自らの心の痛みとしてラースに添おうとする兄夫婦の愛情も切ないけれど、その兄夫婦の気持ちに応えようとするあまりにビアンカを生み出してしまったラースの心はもっともっと切ない。
自分で作り出した恋人・ビアンカの存在に、彼はきっと「どこかで折り合いを付けないといけないのだ」と思っていたと思うのですね。
そしてそれがビアンカとの別れを導くのですが、その別れのシーンがやっぱりとても切なくほろ苦いのです。
ビアンカとの別れは“過去の心の痛み”と別れるために“新たな今の心の痛み”を伴うものだったはず。
涙を流してビアンカを悼むラースに、観る私も涙しました。
苦い涙の後で、ラストは穏やかな光を感じます。
完全に皆の世界に“追いついた”彼じゃない。
まだまだ後ろの方で歩行器付きで歩きはじめたようなラースだけど、時に立ち止まり振り返って彼がそこに居るのを見てくれている人達に囲まれて、自分のペースで歩き続けていて欲しいなぁって思います。
そっと手を繋いでくれるガールフレンドがそこに居れば、尚一層嬉しいね。

ラースを演じるライアン・ゴズリングは『キミに読む物語』でブレイクした男優だそうですが、私は実はよく知りませんでした。
本作では純でナイーブな、ちょっと風変わりな青年を見事に演じておられました。
私として注目したのは、カレン役のエミリー・モーティマー・・・『Dear フランキー』での母親役が記憶に新しいけれど、本当に不思議な魅力の女優さんです。それから女医役のパトリシア・クラークソン・・・結構出演作を観ているのですが、本作での知性に裏打ちされた静かな優しさを持つ役柄にピタリと合っていたと感じます。
ガス役のポール・シュナイダーもとても良かったですし、あー、そう考えれば、本作に出た俳優さんは全員好きになってしまうかも知れません。
年の瀬にこんなハートフルな作品に出会えたことを嬉しく思います。
さて、映画の後は男女6人が集っての忘年会

その中の一日、友人夫婦がやっている谷九にあるお店<Le Butatama 豚玉>を友人Hさんと訪れた日のワイン。
そういえば、大好きなアキ・カウリスマキ監督の映画の存在を私に教えてくれたのがこの豚玉さんの友人夫婦でした。あ、そういえば最初にワインとジンの美味しさに目覚めさせてくれたのもお二人の御自宅にお邪魔させてもらった時でした。
足を向けて寝れない?存在なのに、お店には年に一度くらいしか行けてなくって本当にごめんなさい。



美味しいお料理(どれも間違いのない美味しさです!)と共に、ボトルで飲んだ赤ワイン(好みを伝えれば凛とした姿が美しいソムリエさんが選んで下さいます)とグラスで飲んだ白と赤のワイン。至福の時でした、御馳走さまでした。
宴席では猫事情でいつもゆっくり出来ない私(なのに時間目一杯しっかり杯を重ねる^^;)で同席の皆様には興醒めのことと思いますが、本人は大満足で帰途に着いております。皆さんいつもありがとうございます。

年の瀬に、佳き映画と佳きお酒と・・・今日も乾杯。
自分も注目大のこの作品、主役が”きみに読む物語”の人と、このブログでわかり、ますます観たくなりましたわ。ありがとうです。(”きみに・・”で何かええ感じって思いつつーライアン・ゴズリングーて名前は把握していませんでした)
それと、ーエミリー・モティマーー出たはるんですね。ぺろんぱさんおっしゃる”Dearフランキー”も魅力的ではありますが、自分思うに、ウディ・アレンの”マッチポイント”での方がそのうまさが際立つ気ィが・・。(地味でおとなしくいい人というポジションの下、結局は欲しいものを手に入れ、夫も意のままに操縦できるしたたかさ?)
わお、当てて頂けましたか!ありがとうございます。(*^_^*)
ライアン・ゴズリングさん、ちょっと危ない役も似合いそうな、七変化が期待出来そうな俳優さんと見ました。きみに読む・・にも興味が湧いてきてます。
エミリーさん、『マッチポイント』にも出ていらっしゃるのですね。
>結局は欲しいものを手に入れ・・・したたかさ?
そういう役をさらっとやってのけられるのは仰る通り“うまさ”を持つ実力派の人なのですね。顔は薄味だけど中身は濃い?? 素敵な女優さんですね。本作でも結構重要なキーキャラを演じておられます。(^_^)
などと間違った連想が働きます。。
そっちは「ラーズ・アル・グール」でしたね(×_×)
はうう、年末の1本に含もうかなぁ・・
悪人の出て来ない映画も、たまには観てみたいっす。
ラーズ・・・おぉ!謙さん!!
あ、でも本作のラースさんとはちょっと違いますね^^;。もしもご覧になる機会がございましたらどうぞ是非に(*^_^*)。
そうなのです、悪い人が出てこないってことはいいことです!
見方によってはかなりのキワモノですが、
ラースの繊細な笑顔と周りの人たちの素直な優しさに映画は救われたような気がしました。
いただいた香水がなかなかうまく出ず、何回も押しているいるうちに、部屋中が香水の臭いで充満してしまいたまりませんでしたよ。でもちょっと幸せ気分でした。
そうですよね、見方によって大きく変わる(多分受け入れられない人には全く駄目な??)本作だと思います。
オープニングで表現されたラースの繊細さがとっても良かったですね。私はそこから引き込まれてしまっていました。(^_^)
初日特典のあの香水!
同じです!私も初め「なかなか出ないなぁ」って思っていたらいつの間にか手首に甘い香が・・・
。
でも「なんでトロピカルフルーツなの???」って思っていましたら・・・keyakiyaさんのブログで解決できました。ビアンカの生まれ故郷の香だったのですね!深く納得している今です。(^_^)
リメイクだの原作ものだのばかりがあふれる昨今、このオリジナル脚本の巧みさには感嘆。
シンプルなのに、こんなに感動的なんて。
脚本がうまいのだけど、場面の画で見せるっていう作りなのがナイスですし、俳優さんすべての存在感がよかったですよね。
悪い人が出てこないというか、悪い人を仕立て上げないところが素晴らしいー
そうですね、仰る通り、脚本がよかったですね。奇想天外なコトなのに自然に入り込めましたし、台詞も過剰ではなくて。やはりシナリオって本当に大切なのですね。(しみじみ)
>悪い人を仕立て上げないところが
なるほど、ですね。そういうスタンスにも愛を感じます。
ビアンカの肉を切りわけてる↑2枚目のシーンですが
てっきり、ビアンカの口に投入するんだなと思ってましたが違ってて安心しました^^
また、例の“ピンクの部屋”が妙にエロティックに見えて仕方なかったです。
>時に立ち止まり振り返って彼がそこに居るのを見てくれている人達に囲まれて、自分のペースで歩き続けていて欲しいなぁって思います。
う〜〜ん、このフレーズ好きです。
>てっきり、ビアンカの口に
私もあのシーン、一瞬の“ハラハラドキドキ”がありました。違ってて安心しました、はい。^^;
>例の“ピンクの部屋”
もともとは何の為にとってあった部屋なのでしょうね? 女性客用のゲストルーム?? あ、もともとはお母さんが使っていた部屋だったとか?? 気になってきました。
>このフレーズ好きです
恐れ入ります、でも素直に嬉しいです、ありがとうございます。
そして私自身も無理をしないで生きていきたいなぁって改めて思いました。
お姉さん役、エミリー・モーティマーってわからなかったんですよ。なんか可愛くってね。
あまり色気のない才女のイメージ(イギリス人っぽい?)やったんで、
こういう役やるのが意外でもあり嬉しくもあり。
パトリシア・クラークソンさんも素敵ですね。
他にはどんな作品に出てはるのかさっそく調べてみます。
愛にあふれてるのはもちろん、とても可愛い映画ですね。
きれいな雪景色の中の小さな家や教会、手編みのブランケット等。
マーゴのテディベアをラースが復活させるシーンもキュートですよね。
ビアンカに渡した花を「造花だからずっと美しい」みたいな事を言う
シーンも印象的でした。
そうですね、本作でのエミリーさんはとってもチャーミングでしたね。
私は『Dear フランキー』で名前をインプットした女優さんだったのですが、『Dear・・・』では化粧気のない、あどけない顔立ちながら表情に淋しさの漂う役柄でした。
パトリシアさんは、最近では『幸せのレシピ』に御登場だったようです。
そうそう、テディベアの蘇生シーン、仰る通り素敵でした。
ラースのような人にとっては生花より造花の方が“安心できる”ところがあるのかもしれませんね。
昨年からの宿題だった本作、やっと観て来ましたのでTBしちゃいますね♪
ちょっとふざけたところもあるコメディかな〜とも思っていたんですが、
笑いも柔らかな、とっても素敵な作品でしたね〜。
エミリー・モーティマーの泣き笑いみたいな表情が、この役にピッタリでした。
医師のパトリシア・クラークソン、とっても味があっていい雰囲気でしたね♪
果たして自分だったら、、、あのような対応が出来るだろうか?
優しさを試されているような感じを出だしから受けての観賞でした(uu;
“柔らかい笑い”・・・そうですね、素敵なご表現ですね。(*^_^*)
そうなのですよね、「自分だったら」と考えると難しいところです。でも、あの村人や兄夫婦の対応を肯定的に捉え「自分もああでありたい」と思えたならば十分意味はあるのではないかと・・・。
あのオープニングは私もとても好きです。
P.S 上記(8日付)ブログでKiraさんのお名前を勝手に登場させて頂きました。事後承諾になってしまってゴメンナサイです。でもホントに感謝です。(*^_^*)
またレビューを仕上げてみます。
ご覧になられたのですね、、、レヴューを楽しみにしております!(*^_^*)
隣県のミニシアターで今頃上映していたので観てきました。
登場人物がみんな優しくて愛にあふれていましたね。
「君に読む物語」は観た覚えがあります。
ライアン・ゴズリングさんはずっと痩せてカッコよかったけど
やはりナイーブな演技が光っていましたね。
エミリー・モーティマーも,いろんな作品を観ましたが
この作品の兄嫁役が個人的には一番好きですね。
心の傷はじっと時間をかけて再生を見守ることも大切なのだな,と思わせてくれた物語でした。
そうですね、素敵な物語でした。
勿論それなりに自問自答することもありながら、総体的に「観て良かったなぁ、いい映画だったなぁ」という余韻に身を委ねられるのはいいことでした。(*^_^*)
其々の登場人物がみな魅力的で、其々に確かな存在理由を感じました。
私は『君に読む物語』は未見です。そのうちに観ておきたいです。
ひとの心って凄く繊細で、でも時に逞しい蘇生力をも発揮するものなのだなぁ・・・なんて思ったりしました。(*^_^*)