本来なら恐らくジャンルやストーリー的にスルーしたであろう本作ですが、切り口が割と好きな某映画評論家氏が「とにかくオモシロイ」との寸評を本作に寄せておられたことで、タイトルだけは記憶にとどめていた私です。で、先日「そう言えばあの映画はいつから公開?」と思い情報誌を見てみたら(関西では)12月20日から公開で京阪神での上映はナント<シネマート心斎橋>のみというではありませんか。
この“一館限定上映”的な背景にいたく刺激されてしまいまして、心斎橋まで行って参りました次第です。

今週末は予定が錯綜しており、急きょ23日(祝)に向かった私ですが、折しもこの日は例のマクドナルド御堂筋周防町店の<新商品クォーターパウンダー初上陸日>だったらしく、何も知らずに心斎橋に降り立った私は映画館前のそのマクド店まで延々続く長々々々蛇の列に唖然茫然としたものでした。(3日間限定でその新商品のみが記念Tシャツ付きで販売されたらしいです。)
結局あの長蛇の列の何割かはマクドナルド側がアルバイトとして並んでもらっていた「サクラ」だったということですが、広告戦略を間違えたとしか言えませんね。
完全に水面下で済めば「演出」といえたのかもしれませんが、一旦表に出れば「偽装」でしかないですよね。真っ当に並んでいた人たちの怒りは当然のことと思います。
それにしても、「日本って平和だなぁ、日本人って限定ものが好きなんだなぁ」って行列を見ながら思っていた私ですが、私自身も「限定上映」につられてシネマート心斎橋に来てしまったことを後で思い出しました。
・・・で、映画のお話。
この映画は実話に基づいて作られているというから驚きです。
細部は別としても、骨子は9割がた事実だそうです。
恐るべし、英国王室スキャンダル。そしてさらに恐ろしいのは、やはり「お金は人間を変える」という普遍的事実と、そこに暗躍する闇組織の存在でしょうか・・・。

story
1971年、ロンドン。とある銀行の地下金庫に強盗団が侵入、数百万ポンドにも及ぶ現金と宝石が強奪される事件が起こった。事件は数日間トップニュースとして報道されたあと、突如打ち切られた。それはイギリス政府からのD通告(国防機密報道禁止令)によるものだった……という実話を基にしたクライム・サスペンス。
イースト・ロンドンで中古車ディーラーを経営するテリー(ジェイソン・ステイサム)は、知り合いの女性マルティーヌ(サフロン・バロウズ)から銀行強盗の話を持ちかけられる。「一生に一度のチャンス」と説得され、計画実行を決意する。テリーは総勢7人の実行メンバーを集め、地下トンネルを掘り金庫への侵入に成功する。しかし、その盗んだ貸金庫の中には、犯罪組織はもちろん、イギリス政府や警察、王室までもが関係する秘密が預けられていたのだった。(goo映画情報より)
※映画に関する掲載写真は全て映画情報サイトより転載させて頂いております。
こういう映画を作って全世界に配信することがよく許されたものだなあと先ず思ってしまいました。
本作の制作は御当地イギリスなのですから。
関わった人たちの実名は変えて作られたとのことですが、実行犯は別として、王室スキャンダルや裏社会組織と繋がる腐敗した警察内部なんていうのは時代から推察すれば誰が当事者だったか暴露されているようなものです。特に王室スキャンダルは、いくら「開かれた王室」としてのイメージが定着している英国といえど開かれすぎじゃないのかと、他国事情ながら気を揉んでしまいました。

映画としてはどうでしょう。
扱われている素材は非常に“デリケート”なものながら、作品性は“エンタテイメント”の世界に仕上げられています。
特に後半、銀行強盗が実行されたあとからの展開がとてもスリリングでぐいぐい引き込まれていきます。狙う者と狙われる者との図式が単純ではないため、駆け引きが幾重にも絡み合って息をつかせない感じ。
時代はもう40年も前の頃ですから、犯罪の手口やそれを摘発する側の手法も一昔前のほど良いレトロ感に溢れ、いかにも“手仕事”的な雰囲気を楽しめました。
連絡を取り合うのに公衆電話とか無線トランシーバーとかのアイテムも登場して、犯人たちのやってることは“悪いこと”なのだけれど何だか妙に“人間らしさ”を感じてしまったり。今流のハリウッド映画だったらそれこそ超ハイテクノロジー技術・武器のオンパレードで“機械的”な印象は否めませんものね。
最も見どころであるのは、四面楚歌状態だったテリー達が、最後で一気に巻き返しを図り逆転して優位に立つという、ある意味爽快な?ストーリー展開でしょうか。
あの「コトの運び方」までもが実話なのだとしたら、本当に凄いです。運が味方してくれたとしか言いようがありません。
MI5やMI6(英国情報局)の人たちの「王室のスキャンダルを揉み消せたさえ、あとはどうでもいい」という“非常にシンプルな任務遂行精神”が功を奏したところも大いにあるでしょうね。
そう・・・だからこの物語は、「小悪党の犯罪」に「もの凄い大悪党」と「もの凄い雲上人」が絡んでいるところが面白いのでしょう、きっと。

結局、被害にあった額は400万ポンド以上とされ、被害者の約1/3以上がその被害申告を拒否したということですから、いかに裏社会の人間たちが貸金庫に“暴かれては困るもの”を預けていたかが想像できますね。
そうは言っても、そうではなかった“真っ当な”被害者もいたわけで、テリーの仲間の何人かが無残に消されたことも記憶につらく、それを考えるとあのラストのクルーザーシーンはちょっと“いただけなかった”です。テリーの笑顔は本来は見たくはなかったものとしてインプットされていたと思います。
もう少し違ったラストショットを用意してくれていたらもっと良かったのになぁというのが、しみじみ残念なところでした。

それにしても、小悪党だったはずなのに後半はバリバリに恰好いいテリーを演じたジェイソン・ステイサム・・・声の渋さに聞き惚れてしまいました。
そしてマルティーヌを演じたサフロン・バロウズ・・・“キラー”ですね、バロウズさん。その容貌の美しさと魅惑の眼差しにすっかり見惚れてしまいました。素敵な女優さんです。
こういうハラハラドキドキの作品で一年を締めくくるのもいいのではないでしょうか。
日本人は限定ものに弱いって上から目線で書いちゃいましたね、私。
しかし目の前にはしっかりこのボトルが・・・。<麒麟/期間限定プレミアムビール・ビアショコラ>です。
一度飲んでみたかったのです、これ。 限定ものとはいっても、これを買うのにはちっとも並びませんでしたよ。


では次回ブログで「08年 My Best 12」を選んで今年の拙ブログを締めくくりたいと思います。
には興味津々です(=^_^=)
いつも運転してる印象が強いもんで・・
「クルマから降りたら死ぬんじゃ」的な・・(←バイク小僧かよっ!)
捨て勇む・・・って変換されてしまいました、何だか深い・・・ステイサムさん。(深くないっ!)
車にも乗っていらっしゃいましたが、降りても生きてらっしゃいました。
本作では、“小悪党”という設定のはずなのに、後半部で奥様にあることを問い詰められた時に見せた生真面目な一面に「何だかとってもいい人」って思ってしまいました。(*^_^*)
この先いつかBS等で放送される折には運転がメインでないステイサムさんを是非ご覧下さい。
ジェイソンったら、結構ステキですよね。
ハリウッドのアクションスターほどにゴテゴテマッチョじゃなく、ほどよく人間味があって。
そうそう、声もいいのです。
サフロン・バロウズも魅力的でしたよねー。
ハリウッドのアクション映画のヒロインなんかには首をかしげちゃうキャスティングが多いけど、このきれいなお姉さんはよかったなぁ。
本作はヘンに奇をてらわない構成、演出が好感触でしたよね。
切り口が割と好きな某映画評論家氏って、どなたでせうー??
で、実話ベースと思うと、面白さが自然にあっぷあっぷ。
ジェイソンさん、はい、なかなかの好印象でした。(*^_^*)
>ヘンに奇をてらわない構成、演出
そうでしたね。ベースとなっている「実話」がそれだけでかなりのドラマ性があった故、ストレートに見せてくれただけで自然に引き込まれてしまいました。
映画評論家さんは、全国区の人ではないかも知れませんがミルクマン斉藤というお人です。最近ちょくちょく名前を見ます。結構毒舌なのですけれどね^^;。あ、でも「全く相容れない意見」を述べておられる時も勿論あります。
>結局、被害にあった額は400万ポンド以上とされ
当時の400万ポンドは日本円の換算したら幾らになるのかが気になったところです^^
最後はクルーザーでの優雅なシーンでなく
全額、元に戻すという行動に出れば男が上がったテリーかも(ありえませんね)
「当時の400万ポンド以上」というのは私も気になっていました。
で、ネットで調べてみますと、当時は固定相場制から変動相場制に移行する頃だったようで、ざっと1ポンド=1,000円というところではないかと。とすると・・・「40億円以上」ってことになりますね。当時のその額は(今でもですが)、凄いですね、やっぱり。
「男が上ったテリーさん」はやはりあり得ないなと思うものの、しかし最愛の息子に、将来彼はどう説明するのだろうってチラッと思っちゃいました。
前半ののんびり感と後半のスピード感が対照的で、興奮しました。
脚本がすばらしい!の一言。
海のシーンで始まり、海のシーンで終わるシニカル感がいかにも
ヨーロッパ的で、ボク的にはばっちりです。
ホント、後半は手に汗握りました。(^_^)
どこまでが実話なのか境界が表立って分からないものの、最後の最後で気分良く事を成立させられたのはやはり緻密な脚本の力量によるものなのでしょうね。
>海のシーンで始まり、海のシーンで終わるシニカル感
なるほど、です。
私は先ず「残念だなぁ」っていう思いが立ってしまったのですが、やはりいろんな感じ方があるのですね。(^_^)だから面白いのですね、映画って。
素敵な御意見をありがとうございました。(*^_^*)