テアトル梅田での『そして、私たちは愛に帰る』(ファティ・アキン監督)です。
こういう映画を待っていました。精神的に痛々しかったり刺々しかったりするシーンや台詞はあるのだけれど、ラストは心にかかった靄が晴れていくような、あらためて本作の邦題が心にしみじみと染み入るような、そんな佳品でした。
人生って、かくも皮肉で、そしてかくも愛おしいと思えるものなのですね。(・・・と、珍しく人生を前向きに考える私にさせてくれました。)
story
大学講師の息子ネジャットと、彼を男手ひとつで育てあげ、余生を娼婦と過ごす父アリ。トルコからドイツに出稼ぎし娼婦として暮らす母イェテルと、反政府活動家としてトルコを追われた娘アイテン。友人を救うためイスタンブールに旅立つ娘ロッテと、彼女の身を案じながらも愛情を示せない厳格な母スザンヌ。3組の親子が運命に導かれるままにめぐり合い、別れ、そしてつながっていく――。(story、写真ともcinemacafe.netより )

物語が終盤に来るまでは、どちらかといえば痛々しい。容易には受け入れがたい感情や言動も目の当たりにしたりします。
邦題「そして、私たちは愛に帰る」を引用するならば、そこには、むしろ愛に背を向けようとしている人達が描かれています。
しかし、終盤でこの物語は大きく流れが変わります。
そして、「彼らは愛に帰った」・・・この言葉がしみじみと染み入ります。3組の親子の人生が一つに融合していく様が、決してあざとくなく、実に(本当はそうなるべくしてそうなったのだと言えるように)自然に一つの運命として私には受け入れらました。
人は生きていく上で幾つかの「偶然」に出会うものです。
そういえば私の大好きな作家の一人である川上弘美さんがそういうのを「神が咲かせてくれた小さな花々」っていう言い方で表現されていたなぁって、この映画を観ていてふと思いだしました。
この映画ではそんな偶然が、やがては“大きな花”を咲かせるに至らせてくれるのですが、そこに至るまでの3組の親子それぞれの、互いへの「葛藤」や「許し」の経緯が本当に丁寧に描かれていて、「人の心って変わっていくものなのだなぁ」と改めて深く感じさせられてしまいました。
そしてその変化に介在している「人と人との出会い」の数奇さにも、私はただただ、静かな感嘆の声を上げるのみでした。

特に素晴らしいと思えたのはロッテの母親スザンヌと彼女を演じた女優ハンナ・シグラでした。
「許し」、ただ「愛する」ということの深奥さを見せてくれたスザンヌ。演じたハンナ・シグラは、なんて自然に、そしてなんて力強く普遍の母性を感じさせてくれたのでしょう。
それから、アリの息子ジャネット(バーキ・ダヴラク)が、スザンヌとの会話を通して自分の心に封印していた感情を優しく引き出されていくシーンもとても素敵でした。
父親のかつての言葉「お前を守るためなら、神だって敵に回すさ」に、心を解き放たれるジャネット。親子の愛は“そこ”なのかもしれない。
社会的定義を超えた、本能的で「確か」な揺るぎないもの。
気付き、気付かされるのは、全ては「大切なものを失った」後にそれを乗り越えて新たに得た光によるものだったと思います。
3部構成で成り、全く別々のそれぞれの物語が、瞬間(実は)“交錯”していたシーンに出会わされた時は、思わず身を乗り出してしまったほどでした。
なにより、「ラスト」は心に残る名演出の一つかと。ずっとずっと続く波音に、いつまでもいつまでも包まれていたい、監督の人間性が感じられる「時間」でした。
ファティ・アキン監督、私には未知の名前でした。
監督自身もトルコ系ドイツ人という、本作の背景にある「ドイツの移民問題」を直近に抱えて生きてきた人なのでしょうね。しかし、その移民問題を超えて、本作は普遍的な世界が描かれていたと思います。
さてさて

「若い頃、娘とヒッチハイクでインドまで旅をしたのよ。」と。
インドと言えば、<インドの青鬼>っていうビールを御存知でしょうか。
前ブログで書いたバローケスのスパークリングワインを買いに寄った成城石井で、またもや面白いものを発見したので買って飲んでみました。
<インドの青鬼>(アルコール度数7%)です。


「アルコール度数が高く、ホップをふんだんに使ったインディア・ペールエールは、18世紀の英国で、長く過酷なインドへの航海の為に、劣化し難いビールとして造られました。・・・驚愕の苦味と深いコクで飲む者を虜にします。“魔の味”をしってしまった熱狂的ビールファンの為のビールです。」(缶背面に記された商品説明)とか・・・。
確かに苦いです。
しかも爽快な苦味というよりは、薬膳酒的な苦味に感じました。しかしそれが“魔の味”なのかもしれませんね。
あ、本作にはまたもや、あのラルス・ルドルフが出ていたような気がします(書店の元のオーナー役で)。
ちょこちょこ、面白い役で活躍されてるのですね。ニッコリ。
このブログ読ませていただいて、昨日から読み始めたー恩田陸ーの小説に出てきた「巡り合わせ」て言葉に反応して、しばし「もんもん」となった自分を思い出してしまいました・・。
ファティ・アキンは注目の大好きな監督の一人なのです。
どうぞよろしく。
偶然の出来事からドラマを広げていくのがとてもウマいのですよ。
そうですね。前半が痛々しかったから、その静かな着地に感動ひとしおでした。
こういうテーマを待っていたんだよ〜ってかんじで♪
風邪、お大事に〜。
観たいと思ってた作品のレビューを、上映最初の週に
ぺろんぱさんがupされてると「あーっ、じっくり拝見したいけど、
みてから、みてから」と、心の中で葛藤が。。。。( ̄▽ ̄;A
さらっとだけ目を通した感じすごく良さげな感じで、
早く観たいですねぇー。ヾ(〃▽〃)ノ
ラルス・ルドルフ→明るい瞳の木こりさんですか?!
それは気になる。やっぱり観なきゃっ。(=^_^=)
最近、変わりダネ(?)のお酒の所を拝見するのも
楽しみ(!)になってきた私です。
風邪はよくなってきていると思います。
>ー生姜のまるかじりーをお勧め
ありがとうございます(*^_^*)。さる御方より「赤ワインを使った“秘薬”」も伝授を受けました。丁度生姜もありますので今夜ダブルで試してみます!これで明日はスキップしながらの出勤間違いなし!です。(*^_^*)
恩田陸さんの小説は読んだことがありませんが、その「巡り合わせ」という言葉にビイルネンさんがどのような経緯で“もんもん”とされたのか、伺ってみたい思いです。
(えへへ、実は「めるはば」の意味が分からなくてネットで調べまして、このワードも知りました。勉強になりました。(*^_^*))
>ファティ・アキンは注目の
おお、流石はかえるさん!そうだったのですね。
はい、私もしっかり御名をインプットしました。
>偶然の出来事からドラマを広げていく
他作品もこの手の展開と、静かで温もりのある物語が期待できそうですね。ちょっと調べてみたら『愛より強く』なんていうのが面白そうでしたが。(*^_^*)
御心配をお掛けしました(>_<)。そうですね、前回のコメント時よりはかなり良くなりました、ありがとうございます!
あ、この作品は観に行かれる御予定なのですね。
御予定通りご覧になられた際は是非またお越し下さいね。私もゆるりさんのレヴューがアップされるのを楽しみにしています。
そうです、あのきこりさんです!
『わが教え子、ヒトラー』に続いての、「あ、見つけた!」でした。(*^_^*)
(独特の風貌ですものね〜。)
変りダネのお酒、また探しておきます!
取り敢えず、最近は成城石井が楽しいです。(~o~)
ワタシの会社でも、体調不良の方が続出した先週でした。
ご自愛くださいませ。
小品も観に行きたいのですが・・なかなか足を運べてません(×_×)
そうそう。
アルコール度数の高いビール、と言うのは面白そうですね。
ふにゃふにゃした(物語性のない)作品をスクリーンでゆったり眺めながら、強いビールを・・ってのも楽しそうですね(・ω・)
ありがとうございます、もう大丈夫です!(・・・多分^_^;)
>なかなか足を
いえいえ、TiM3さんはいつも精力的にブログを更新されていて、頭の下がる思いです。
ここ何日か、御邪魔させて頂いて各記事を拝読させて頂いているものの、コメンを入れられてなくてスミマセン。
>ふにゃふにゃした(物語性のない)作品を
ゴクンと飲み込んでスクリーンに向かって(心の中でだけ)「喝ーッ!」と叫ぶとか・・・!?
私も娯楽作(物語性はあっても肩肘張らないで観れるやつです)を観ながらゆっくりビールをと思うのですが、間違いなく私、眠ってしまいますのでなかなかトライできませーん!
こんな辺りは如何でしょう?(=^_^=)
『マルホランド・ドライヴ』
『ルル・オン・ザ・ブリッジ』
『ソラリス(←ソダーバーグ版)』
ご記述の3作品のうち、観たものは『ソラリス(ソダーバーグ版)』のみです。
『ソラリス』はタルコフスキー監督の『惑星ソラリス』とどうしても比較されてしまいますから、
あの哲学性に比して“ふにゃふにゃ”って感じなのでしょうね、きっと。
クルーニーさんはなかなかシブかったのでですが。
『マルホ…』はあのリンチ監督作品ですし(ナオミ・ワッツさんも出てる!(*^_^*))、『ルル…』はなかなか豪華なキャスト陣のようですから、それらが“ふにゃふにゃ”と仰るのは、TiM3さんなりの「カーツッ!!」の定義に引っかかってしまった何かがあるのでしょうね、きっと。^_^;
最近なかなか新作が観られなくて自分の中で軽い焦燥感があったんですよー。
やー、でも良かったです。
私もファティ・アキン監督作品は初めて観ましたが、
死と再生の物語をいい意味で上手く描いてはるなぁと思いました。
確かに話自体は悲惨なんですが、底辺に流れる何か飄々とした空気感が
作品に柔らかさを与えていた気がしました。
とりあえず、同監督作品でベルリン国際映画祭金熊賞の『愛より強く』を
近いうちにDVDで観るぞ!(キッパリ!)
有休とって映画!
ワクワク感増大のシチュエーションですね!(*^_^*)
後ほど楽しみに貴ブログにお伺い致しますね。
「柔らかさ」と仰るのには、なるほどなぁと深く頷いて読ませて頂きました。
「許す」心を得たあとのスザンヌの、「母としての深い愛情」がその柔らかさを醸し出していたところもあるのかもしれませんね。
>『愛より強く』
おお!私も観てみたいです。
しかし先ずはゆるりさんのレヴューを楽しみにさせて頂いてよろしいでしょうか?(*^_^*)
これからも更新頑張ってください。
ありがとうございます。
拙いブログですが、どうぞ宜しくお願い致します。