2009年02月15日

キャラメル

 14日(土)は今年に入って二度目のシネ・ヌーヴォへ。ここのエントランスはいつも、“別世界への不思議な誘い”を感じさせます。

                 PO20090215_0001.jpg ヌーヴォ・エントランス

昨日の映画はレバノンの映画『キャラメル』(ナディーン・ラバキー監督・脚本・主演)でした。
レバノンの映画という初めての体験と、新進の女性監督の手による作品であるということ、そして「キャラメル」という甘〜いフレーバーがほわっと広がってくるようなイメージから、公開を楽しみにしていました。前売りチケットも買ってしっかり温めていましたよ〜。チケットがキャラメルのように溶けてしまわなくてよかったです。

軽妙に小気味良く、時に切なく紡がれていく物語だと思っていました。 が・・・私にとっては当初抱いていたそのイメージ以上に、“涙と微笑み”をもらえた作品でした。
今年の・・・というより、私の人生の中で「忘れ難い一本」となりました。

                  PO20090211_0000.jpg 前売りチケット

story
  レバノン・ベイルートのヘアエステサロンに集う5人の女性たち。サロンのオーナー、ラヤール(ナディーン・ラバキー)は、不倫中の恋人からの電話を待ち仕事もままならない。サロンで働くイスラム教徒のニスリン(ヤスミーン・アル=マスリー)は婚約中の恋人に隠しごとをしている。長い髪の美しい顧客に心惹かれるリマ。毎日サロンに通うジャマルは、年を重ねる自分を受け入れられないでいる。ローズは年老いた姉を抱えて既に自分の人生を諦めていた。そしてニスリンの結婚式を前にそれぞれの人生が動き始める・・・。
(※storyはチラシより、作品写真はシネマトゥデイより転載)


 キャラメルって、食べるモノとして描かれていたアイテムじゃなかったんですね。
あんなふうに使われるなんて驚きでした。レバノンの女性たちにはオーソドックスなこととか。
でもオープニングで描かれていた、お砂糖を焦がし煮詰めながら作るとろりとした琥珀のキャラメルの画が、そのまんま心の甘味と苦味になって伝わってくるような作品でした。

ベースには「多数の宗派(それによる因習)の存在」や「決して安穏ではない国内情勢」といった国事情はあるのでしょうけれど、それを超えて全ての人間(女性)に共通する感情に訴えるものがあったと思いますね。

サロンに集う5人の女性はそれぞれに、年齢も家庭環境も置かれている状況も、当然ながら物事の考え方も違うのですが、もがき苦しみながらも前を向こうとするしなやかさを彼女たちは等しく持っていた気がします。そしてそれぞれがそれぞれをそっと見守り続けている温かさもありました。

彼女たちが抱える悩みは結局は自分自身で乗り越えていかなくてはいけないことなのですが、そっと見守り、時に寄り添い、時に叱咤し、笑い、泣き合える、そんな仲間がいてくれたら、明日を見失いそうになった自分を奮い立たせられるのかも知れませんよね。

                 キャラメル.jpg

主演はサロンオーナーのラヤールということなのでしょうけれど、5人の女性それぞれにピンスポットが当てられる瞬間があり、それがこの作品を味わい深いものにしている気がしました。

実は最も興味があったローズの件(くだり)は他の4人のそれとは微妙に違うトーンで綴られ、胸を締め付けられるような哀感が漂います。特に、彼女が悲しき決意でメイクを落とすところには涙を止めることが出来ませんでした。何かを捨てることでまた新たな強さを得たのだと思いたいローズですが、そんな彼女にいつかまたきっと紅をさす日が訪れて欲しいという思いでいっぱいです。

しかし涙と言えば、やはりラヤールやニスリン、ジャマルにもほろ苦く切ない涙を呑むシーンがありました。
ラヤールのシーンでは4人が寄り添う温もりと其処から立ち上がらせる潔さも描かれていて気持ちが洗われるような気さえします。ジャマルのそれは痛々しさも伴うものだったけれど、彼女には彼女なりの着地点を見出していくであろう感も感じられてそっと背中を支えてあげたくもなります。
そしてリマには、やがて心を解き放てる未来が待っていそうな予感が・・・。
彼女たちのまとう服やアクセサリーのカラフルでビビッドな感じも、沈んだ心を上の方へ持ち上げてくれる力がありましたね。


レバノンという全く違う遠い国でも、こんなふうにそれぞれの人生を一生懸命に生きている女性たちがいる・・・ほろ苦く切ない涙も呑むけれど、なんて素敵でなんて愛おしい彼女たちなんでしょう!
苦しみをバネに、なんてしなやかに生きていることでしょう!

ラストには「眩いばかりの希望の光」と「物悲しい諦観に満ちた、暮れなずむ日の名残り」とを感じさせる二つのシーンの対比があり、いつまでもいつまでもスクリーンに居る彼女たちを見守っていたいと思わせるのでした。

心に残る佳品です。



  さて、劇場鑑賞では常にペンとメモ用紙を携帯し、暗転した中で心に残るシーンや台詞を書き留めている私ですが、最近携帯しているのは、昨年末にKさんからN.Y.土産として戴いた、このMoMAのボールペンです。
ビジュアル的にもカラフルで素敵なのですが、どっしりした質感に反してペン先の滑りがとても軽快で滑らか、ほど良い太さと丸みが実に心地よく掌にフィットしてとっても書き易いのです。
映画が始まる瞬間が、違う意味でも楽しみになっています。
Kさん、愛用させて頂いています、ありがとうございます。ぴかぴか(新しい)

                 PO20090215_0006.jpg

 本作には素敵な女性たちが描かれていました。
同じく素敵に生きる9人の女性を描いた映画『美しい人』に関しては、先のブログで録画し忘れたこと悔やむ一文を挙げていた私です。
そしたら先日お邪魔したジャズBAR < Wishy-Washy >さんで、何とママさんが録画撮りソフトをコピーしていて下さいました!ママさん、ご厚意ありがとうございます!ぴかぴか(新しい)
この『美しい人』、早々に鑑賞し、作品のレヴューと共にこの日にお伺いした< Wishy-Washy >でのお酒の話を添えて記事をアップしたいと思っています!

それから、同じくご厚意で同作品のコピーを譲りますよとコメントして下さったゆるりさんにもこの場で再び御礼を言わせて頂きますね。本当にありがとうございました。ぴかぴか(新しい)




posted by ぺろんぱ at 13:00| Comment(6) | TrackBack(2) | 日記
この記事へのコメント
久しぶりに同じ映画でしたね、今週は!(=^_^=)

ぺろんぱさんにとって「忘れ難い一本」となったこの作品、
素敵な映画との出合いをかみしめられている様子が伝わってきました。

中でも印象的なのが、ローズのお話をとりあげられているところです。
ラストシーン、私は未来に向っての明るい象徴ともいえる方の
シーンばかり頭に残ってたんですよ。
でも、その後に二人連れのちょっともの悲しいシーンがありましたよね。
私は、どちらかというとあそこでこみあげてくるものがあり、
無意識に忘れようとしていたのかもしれません。
なんだか悲しい事を引きずる方なので、
意識的に明るいところだけ記憶にとどめるのかも。
こんな事では、ちゃんとしたレビューは書けませんね。トホホ。

女性達の群像劇っていうだけで好物なんですが、
ここに出て来る人達はみんな魅力的で、できればもう一回見たい作品です。
特にナディーン・ラバキーのけなげさと美しさ!
同性の私でもうっとりです。ヾ(〃▽〃)ノ

「美しい人」手に入れられた様でよかったですね! お役に立てずに残念でしたが。(笑)
また、レヴューお待ちしてます。
Posted by ゆるり at 2009年02月15日 19:48
ゆるりさん、こんばんは。
そうでしたね、同じ映画でしたね。(*^_^*)

ローズの物語は確かに他の4人と違うテイストでしたよね。でも彼女を見守っていた4人の優しい眼差しはとても素敵で、、、だから余計哀しさが募っちゃいました。
仰る通り、先ず明るい面を捉えることが大切なのかもしれません。どうしたって、どんな場面にだって、やっぱり哀しい部分は秘められているものなのかもしれませんものね。
そして・・・ゆるりさんのレヴューはいつだって素敵です。

ナディーン、美しかったですねー。
それとあの黒髪の女性も!
あのシャンプーのシーンには私もうっとりでした。
あの一連のシーンだけはとっても優しく甘い調べのピアノが奏でられていたような・・・。(*^_^*)

>お役に立てずに

とんでもないです!
またゆるりさんのご好意にすがる時が来るかも知れません。その時は宜しくお願いいたします!
Posted by ぺろんぱ at 2009年02月15日 22:03
ぺろんぱさん、こんにちは。
ステキな映画でしたねー。
監督の才色兼備っぷりに驚嘆。
女性監督ならではのアプローチが快かったです。
本当にみんなしなやかに生きているんですよねー。
ローズのくだりはですねぇ、それほどに哀しき場面と私はとらえなかったかもしれません。
泣く泣くあきらめたというんでもなく、選択したという感じで。
せつないけれどもその心意気は気高く温かくー♪
Posted by かえる at 2009年02月16日 20:47
いつかはゆきたいシネ・ヌーヴォ。

乗り違えちゃったよシネ・ヌーヴォ。

ってことで、以前に出かけた際はJR西九条駅で降りてしまい、
お目当ての作品の上映開始時間に、全然間に合わずすごすご帰宅したのでした・・(×_×)

あ、『美しい人』を入手されたようですね。
また、レビューを楽しみにしています(=^_^=)
Posted by TiM3 at 2009年02月16日 23:24
かえるさん、こんばんは。

ナディーン・ラバキーさん、女優一本の人生でも十分なくらいの人なのに監督としてのこの力量!本当にすごいですね、素敵です。

>女性監督ならではの

本当にそうですね。優しさも然り、そして、ジャマルがオーディションの最中に次第に負の感情を欝積させていくところなんかは、まさに女性でしか表現し得なかったような気がします。

>選択

そうですね。
だからあのラストにつながるのかも知れません。
より一層“しなやかさ=強さ”をまとったローズでしたね。

優秀作品というのじゃないかも知れないけれど、今後の人生で何度も観返したく思う作品でした。(*^_^*)



Posted by ぺろんぱ at 2009年02月17日 21:15

TiM3さん、こんばんは。

間違ってJR西九条駅で!? それは大変でしたね! ご落胆、お察し申し上げます。
でも“すごすごと”ご帰宅されたとのことですが、私ならきっと西九条で暴れていたと思います。^_^;

いつかは行ってねシネ・ヌーヴォ〜♪。

『美しい人』、観賞が楽しみです。
今からでも観ようかなと思っていますが、、、睡魔に勝てるでしょうか。(*^_^*)
Posted by ぺろんぱ at 2009年02月17日 21:18
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『キャラメル』
Excerpt: 渋谷のユーロスペースで上映してるレバノン産映画『キャラメル』を観てきました。 映画を見始めた時に間違って併設の『愛のむきだし』を上映してるスクリーンに入ってしまって、3分くらいそのことに気付かなかっ..
Weblog: cinema!cinema! ミーハー映画・DVDレビュー
Tracked: 2009-03-08 23:15

キャラメル
Excerpt: http://www.cetera.co.jp/caramel/ ポスターの写真で「エステサロン」だなとは思ったが、タイトルの「キャラメル」の意味が想像できない。何とも艶っぽい女の表情が魅力..
Weblog:  Art- Mill  
Tracked: 2009-03-24 00:01