2009年04月07日

ダイアナの選択

 5日(日)、シネ・リーブル梅田にて『ダイアナの選択』(ヴァディム・パールマン監督)を鑑賞しました。

もしご覧になる予定の方は、何かしらの先入観を持ってしまわれるといけませんので(と言いますか、結末に触れる記述もしてしまいましたので)どうぞ読まないでください。そして、もしよろしければ映画のご鑑賞後に再度お越し下さればとても嬉しく思います。

この映画はそういう映画だと・・・観終えた後で思わず誰かに、「私はこう感じたのだけれど?」とそっと胸の内を明かしてしまいたくなるような、そんな“人恋しさ”にも似た感覚にとらわれてしまう不思議な余韻を残す映画でした。

                 ダイアナ.jpg

story
   ローラ・カジシュキー原作の小説「春に葬られた光」を『砂と霧の家』のヴァディム・パールマン監督が映画化した心理劇。
コネチカット州郊外の小さな町の高校で銃乱射事件が起きたとき、17歳のダイアナ(エヴァン・レイチェル・ウッド)は親友のモーリーン(エヴァ・アムリ)と女子トイレでたわいないお喋りに興じていた。そこへ銃を持ったクラスメイトのマイケルが現れ、「どちらかひとりを殺す。どっちにする?」と非情な選択を迫り、ダイアナは「殺さないで」とつぶやくのだった…。15年後、教師をしながら夫と娘と閑静な住宅街に暮らすダイアナ(ユマ・サーマン)は事件の悪夢にいつも苦しんでいた。(※story、作品写真とも映画情報サイトより転載)


  「衝撃の…」、或いは「結末は誰にも言わないでください」的な宣伝文句は、本作については出来れば目にせず(耳にせず)に鑑賞したかったという思いが残りました。どうしても目にしてしまうそれらのコピーに、少なからず“謎解き”のような姿勢で臨んでしまった感が否めなかったからです。(映画の配給会社としてはそこをウリにして宣伝するのは当然のことなのでしょうけれど。)
勿論そこのところも本作の一つのポイントなのかもしれませんが、もっと自然体でスクリーンに見入ることができたなら、もっともっと、受けた衝撃はより一層ストレートで深くなったことと思っています。
そして、結末の如何を度外視したとしても、本作は映画を鑑賞する喜びに“十分に”応えてくれる佳き作品だったと思いますから。

                ダイアナ1.jpg

映画全体を覆う、ミステリアスで何処か危うい雰囲気。
鮮やかな色彩に目を奪われながらも、透明感を常に感じる世界。
現実なのか夢なのか、物憂げな感覚も漂う感じがする中、中盤以降はダイアナの中で生と死がボーダーレスになってくる様子が静かに戦慄を誘います。


「一瞬の生」と「一瞬の死」
「永遠の死」と「永遠の生」
「人生の再生」
「良心」
「幸福」


今、私の中でこんな言葉が巡っています。

ダイアナは、“ある結果”によって永遠とも言える一瞬の生を生き、彼女自身が学び経験したことによって再び“原点”に戻ってきたのだと、今の私にはそんなふうに感じられています。
彼女は一瞬にして“全て”を見てしまったと言えるのかもしれません。
ダイアナが「選択」を決める前と後ろとでは、彼女自身が大きく変化を遂げています。結果の事象としてはどちらを選択していたとしても幸福でない形だったかもしれない、しかし「ある選択」を決めたそこには、ダイアナの“本当の幸福”への願いと意志があったのです。

                 ダイアナ3.jpg      
           
真の幸福は「良心に支えられた人生(劇中の言葉)」でなければ得られないものなのですね。

その幸福への選択をした後の、ラストシーンのダイアナの目。
「これでよかった」と思えたのでしょうか、それとも・・・。
彼女自身が描いた人生を、彼女はその一瞬で再び得ることができたのでしょうか。

シチュエーションは全く違えど、アフター・テイストと言いますかフィニッシュ感に於いて『パンズ・ラビリンス』に通じるものを感じた私です。
現実の時間としての「一瞬」に、ダイアナは何かを学び、何かに気付き、彼女の心は大きく変わった。このことに大きな衝撃を感じるとともに、心が動かされた思いでした。
しかしながら結果的に報われることのない事象に、その余りにも理不尽な命の奪われ方に、言い知れぬ絶望感も拭い去ることはできないのです。
  
                ダイアナ2.jpg


この作品については、できれば誰かと話したい思いに(衝動的に)駆られました。
おそらく、それだけ多岐な解釈が可能な作品だったと思います。それから、見落としてしまっている「キー」となっているはずのシーンや台詞が多分に存在しているはずだ、とも。
もう一度観てみたい、と言いますか、もう一度観ずにはおれない作品ですので、DVD化された時にはきっと手に取ることでしょう。
その時にはもっと違った見方ができるかも知れません。
不思議な感覚を残す、良品です。


  全く大したこと書いてないのに何故かレヴューアップに力尽きました。
先日のサンボアBar(今度はヒルトンホテル・イーストプラザ店)でのジントニックの画を載せて今日のブログを閉じます。

                 PO20090405_0000.jpg

ああ、ジュニパーベリーの香りが恋しい。




posted by ぺろんぱ at 23:38| Comment(14) | TrackBack(0) | 日記
この記事へのコメント
ぺろんぱさん、こんにちは。
4月初旬は仕事は忙しく、レヴュー書くのが遅くなってしまいましたが、これは私も4月の1本目に観ていまして、思いのほか気に入った一作でした。
メタファーがりりばめられていて、多様に解釈、思考できるところが魅力でしたよねー。

>「一瞬の生」と「一瞬の死」
>「永遠の死」と「永遠の生」

なるほど、そうですね。
現実問題として、その局面ではどう選択すべきかというのは難しい問題だけど、生と死について、哲学的に(ちょっと仏教思想的に)とらえることができるのがとてもよかったですー。
Posted by かえる at 2009年04月08日 11:14
かえるさん、こんばんは。

そうなのですね!ご覧になっていたのですね!
後ほどかえるさんのブログにお伺い致します!(*^_^*)

作品のトーンが何となく好きで引きこまれてしまいました。結末は確かにどうなるのか気になったところですが、結末そのものより、そこに導かれていくステップがとても透明感ある美しい感覚で綴られているところに惹かれました。

>ちょっと仏教思想的に

(私こそ)なるほど、です。

来ていただけて大変嬉しいです、ありがとうございます、かえるさん。
Posted by ぺろんぱ at 2009年04月08日 19:50
こんばんは。

ワタシも未だに自分自身の答えが出てないので、もう一度、観てみたいと思っています。
DVD鑑賞になりそうですが、スロー逆再生とかして徹底検証してみたい(笑)

本作の記事は本当に悩みますよね。ネタばれするしない・・どっちで行こうかみたいな^^

こういう映画は、ある意味オフ会に持って来いですよね(笑)
激論してケンカ別れには注意ですけど(そんな奴おらんやろ)

少なくとも、あの選択に関してはダイアナは自分を納得させることが出来たと思ってます。
ラストのダイアナの目は幸福感に満ちていたように感じました。
夢見る少女という、なんとも可愛いダイアナがそこに見えたんですよ〜^^

なんだか奥が深くて迷路に迷い込んでしまうような映画でした^^;


Posted by ituka at 2009年04月08日 23:10
この作品には、妙に期待値が高まってしまいます。

が、問題は「何処で観られるのやろ?」
ってことでしょうか(・ω・)
Posted by TiM3 at 2009年04月09日 00:04
本当に、これはネタバレ全開で語り合いたい作品でした。

一瞬のうちに起こる彼女の良心を入れ替えた人生。

>「一瞬」に、ダイアナは何かを学び、何かに気付き、彼女の心は大きく変わった。
そこに救いを感じることは出来るのですが、またどうしても親目線の私は、
新たな目標を見つけた時に襲う悲劇ということを感じずにはいられませんでした。
人は気づき、学ぶために生きているんだと改めて教えられました。

Posted by kira at 2009年04月09日 00:41
itukaさん、こんばんは。

はい、私もDVDでメモを取りながら?再鑑賞します。(^^)

初めは結末に触れずに触れずに…と書いていたのですが、結局ズドーンとそこへ話が行っちゃいまして・・・。^_^;

>オフ会

確かにそうですね。(って、オフ会の経験ないですが^_^;)
どういう観方をするのかも其々の「選択」なのでしょうねー。

私もダイアナは納得しての選択だったと思います。
ただ、そこから再び始まるものはあるのでしょうか。
確かに「迷路」。
そして、今でも私、迷路から抜け出せていません。
Posted by ぺろんぱ at 2009年04月09日 21:40
TiM3さん、こんばんは。

>「何処で・・・」

そちらではまだ上映館の詳しい情報まではキャッチされていないのでしょうね。

いっそのこと大阪までご帰郷されるか、さもなくばどちらかのご出張先でご鑑賞?
って、そうはうまく出張が決まったりしませんよね。

でもそうやって忘れかけた頃にふとDVDになったものを見つけ・・・なんていうのも「一つの出会い」の形です。(*^_^*)
Posted by ぺろんぱ at 2009年04月09日 21:43
Kiraさん、こんばんは。

>ネタバレ全開で語り合いたい作品

そうですよねー。
こうやってKiraさんはじめ皆さんがお越し下さってコメントを残して下さることがとても嬉しいです。

Kiraさんの「親目線」と仰っているのも、私はすごく大切な“(作品との)関わり方”だと思います。
それに私も「理不尽な命の奪われ方」というものにやりきれない思いが残りましたから。

だからこそ「死=Nothing」ではないと信じたい(願いたい)、今はそんなふうに思っています。

Posted by ぺろんぱ at 2009年04月09日 21:51
こんばんはぁ。(=^_^=)
先週おじゃましたのですが、おっと!
未見の場合は後でもう一回来た方がよさそうというアドバイスに
忠実に従いました!( ̄▽ ̄;A

そして、今日15時の回で観てまいりました。
かなり今、モヤモヤしています。
それというのも、最後画面が真っ暗になってから立ち上がり、
ふと振り返ると「キーワードは。。。。」的な
メッセージが表示されてるじゃあーりませんか。
しかし、読み取れなかった私。。。。

公式HPに行っても、監督なりの答えを見るページに入る
パスワードがわからず、涙。涙。涙。ふぇーん!
もし御存じでしたら教えて頂けますでしょうか?!
もしよろしければ、ご連絡お待ちしております。
Posted by ゆるり at 2009年04月11日 22:09
ゆるりさん、おはようございます。
ご覧になられたのですね(*^_^*)。

パスワードは、確か「選択」だったと思います。・・・が、私はHPでその「監督の答え」に入る事ができなかったんです、、、どうしてなのでしょう。(涙)
「選択!」「選択する」とかにしてみましたが駄目でした。年の為、先ず「選択」で一度お試しください。

しかし多様な解釈があっていと思うので、私は見られなかったこともそれはそれで良かったのかなと今は自分で自分を納得させています。(^^ゞ

しかし後を引く作品ですよね。
DVDになればきっと再見せずにはいられないでしょう、私。
Posted by ぺろんぱ at 2009年04月12日 06:26
ぺろんぱさん、おはようございます。
そして、ありがとうございました!

監督の解釈というものをなんとか見ることが
できました。
ほぼ予想した通りというか、別に意外な
メッセージではありませんでした。ハイ。
ぺろんぱさんが入れないのは、ブラウザの
問題なんでしょうか?! 謎です。。。。

しかーし、なんとなくモヤッとしてた気持ちが、
おかげさまで晴れました。
すっきりした気持でこれから、摩耶の方に
花見に行って参ります。
いつも、いろいろとありがとうございます。
これに懲りずにこれからも、よろしくお願いします。(*^_^*)
Posted by ゆるり at 2009年04月12日 09:11
ゆるりさん、こんばんは。
やはりキーワードは「選択」でよかったのですね、、、私は何故入れなかったのでしょう・・・。またトライしてみますね。

摩耶でのお花見はいかがでしたか?
私も今日は朝から帰郷して花見をしてきました。(*^_^*)
火曜辺りはもう花散らしの雨になるとか・・・ですものね。

こちらこそこれからもどうぞ宜しくお願いいたします!(*^_^*)
Posted by ぺろんぱ at 2009年04月12日 20:51
三たびおじゃまします。( ̄▽ ̄;A

そして、稚ブログにもめちゃ早くコメントをいただき、
ありがとうございました。
いつも、そのササッと素早い行動力を見習いたいと思うんですが、
根が怠けものなのでなかなか。。。。

摩耶の桜のトンネルは初めてだったんですが、
観光地化されていないフツーの雰囲気が素敵で、これはうれしい出逢いでした。
かつて通っていた中・高校が近くだったのでついでに回り道をしたものの、
王子公園駅方面から学校に向う坂道が綺麗な桜並木だった記憶があって
楽しみにしてましたが、ウン十年ぶりに通ると桜の木も少なくなっていて
ちょっとがっかりしてしまいました。残念です。

ぺろんぱさんは帰郷されていたんですね。
レビューを土曜日中にアップされていたのと、
朝早い時間(6時26分!)にレスポンスいただいていたので、
オッ、遠出されてるのかなと思いました。
また、その辺のお話などもお聞かせください。

今日は、なぜか長々とコメントしてしまい失礼しました。
ではでは、また。(=^_^=)


Posted by ゆるり at 2009年04月12日 22:49
ゆるりさん、ようこそです!

>ササッと素早い

いいえ〜、私は昔の某番組ふうに言うと「のろまなカメ」そのものですよ〜。

>観光地化されていないフツーの

桜って“自分だけの名所”っていうの、ありますよね。
私もある公園で一本だけ植わっている桜の木があってそこの下にあった椅子を模したオブジェ?で独り花見をしたことがありました。その時その時の精神状況とかいろいろなものが作用して“嬉しい出逢い”はつくられるのかも、ですね(*^_^*)。

>桜の木も少なくなって

私も友人から聞いて驚いたのですが、桜の中でもソメイヨシノは60年くらいすると寿命を迎えてしまうのですって。
それが本当だとすると各地の桜の名所はどうなっていくのでしょうか・・・。

>朝早い時間にレスポンス

はい(^^)。でもこれは猫に夜中から早朝にかけて必ず起こされるせいでして、いつも寝不足ながらも朝は早いうちから行動していたりするのです。(余りの睡眠不足で意識が朦朧としている時もありますが・・・。)

>その辺のお話なども

郷里は結構桜や紅葉で名が出てるみたいで、観光シーズンともなると情報誌の隅にちょこっとだけ載ったりしています。(あくまで“ちょこっとだけ”、です^_^;)
先日の花見は、はらはらと花吹雪の舞う中で花見弁当を前にお酒を飲んでいました。(昼間っから)
途中、まるで効果音みたいに完璧なまでの鶯の鳴き声が数回聴こえ、至福の時でした。(*^_^*)




Posted by ぺろんぱ at 2009年04月13日 19:47
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