昨日18日(土)は、直前まで二作品で迷って結局こちらを鑑賞しました。『レイチェルの結婚』(ジョナサン・デミ監督)をシネ・リーブル梅田で。
『スラムドッグ・・・』は少し先に取っておくとして、迷っていたのはガス・ヴァン・サント監督の最新作『ミルク』です。
これはサント監督の最新作ということよりも、主演のショーン・ペンの絶賛の演技を観たかったということがありました。何しろ昨年のショーン・ペン監督作品『イントゥ・ザ・ワイルド』で「ショーンって凄い人だよ」って思ったので。
結局「レイチェル・・・」を選択してしまいましたが、本作主演のアン・ハサウェイも意外なほど強烈な「存在感」を放ち、魅せてくれましたよ。
story
ある一家の結婚式を中心に、優等生の姉と問題児の妹の抱える問題や、彼女たちを取り巻く人々の微妙な関係を包み隠さず映しだす。
キム(アン・ハサウェイ)は姉レイチェル(ローズマリー・デウィット)の結婚式に出席するため、依存症の施設から退院する。家に
到着した彼女は結婚式の準備でごった返す家の中を抜け、2階でドレスの着付けをしていた姉と友人のエマ(アニサ・ジョージ)と再会する。彼女たちは屈託なくこれからの準備のことを話し始めるが……。 (※story、作品写真ともシネマトゥデイより転載)

秀作です。
音楽と微笑みと乾杯のグラスの音と・・・、幸せの頂点であるはずの結婚式を前に、良くも悪くも「家族」の形があぶり出されてきます。
家族って幸せの拠り所であると同時に苦悩の原点でもあるような気がします。
時に厄介であり、自由に羽ばたくことへの足枷ともなる「家族」。
でも決して捨て去ることはできないし、もしその関係性が壊れかけたとしても、もう一度修復することができ得ることが家族なのだと思います。
退院して戻った家族の中に、必死で自分の居場所を作ろうとしながらも不安定な精神状態を押さえきれないキム。
キムを穏やかに迎え入れようとするが確執を消せない姉レイチェル。
キムを気遣う余り、父親として強く接せられない父ポール(ビル・アーウィン)。
ポールと離婚後他の男性と再婚し、レイチェルの結婚に久し振りに顔を見せた母親アビー(デブラ・ウィンガー)。
レイチェルの結婚を目前に控えレイチェルの夫となるシドニー(トゥンデ・アデビンペ)の家族や友人も集い、この上なく幸福な瞬間を迎えるはずなのに、不穏な空気が漂い始め、見ない振りをしてきたはずの哀しい過去が頭をもたげて来ます。

キムを薬物依存に導いたある事件。
そしてその事件が隠し持つ“もう一つの”側面。
その“側面”は物語の後半に、突然に予期せぬ形であぶり出されてきます。そのシーンが今思い返しても怖いです。
ある意味、キムの薬物依存よりも、最も取りざたされて然るべきは“そこ”かも知れないし、“そこ”に何らかの決着をつけなければキムの心の開放と再生は永遠に訪れないようにも思えました。
娘キムと実母アビー、二人だけが知るその側面。
レイチェルがそれを知ってか知らずか、全てを飲み込むふうで最後にキムとアビーと親娘三人での力強い抱擁を試みるけれど、キムとアビーの心の糸は結局繋がることがなかったことが、私をひどく哀しい気持ちにさせました。
あの時キムは去っていく母親に何を言おうとしたのか、もし彼女がそれを言えていたら、或いはもう少し何かが変わったかもしれません。
「レイチェルの結婚」というタイトルですが、物語の中心になっているのはキムです。
しかし、このタイトルの持つ意味は大きいです。
レイチェルの結婚で、それまで想い出と言う美しい衣をまとわせて無理やり記憶に封じ込めててきた過去が姿を表し、かろうじて均衡を保ってきたものは瓦解することになってしまった・・・しかしながらかろうじて再生への道筋を付けることができたものもあったのです。
そして何より、「レイチェルの結婚」の瞬間に皆の心が願ったことは“たった一つ”の同じこと、「レイチェルとシドニーの幸福」それだけだったのですから。

結婚式でレイチェルが花嫁として語った言葉が印象深かったです。
父親ポールから、「幸福の基準とはどれだけ人に愛されるかではなく、どれだけ人を愛することができるかということだ」と教えられた、と。
まさにここにテーマがあったのかも知れません。
そしてとことん苦しみぬき、苦しんだ後で変わることができたのは、実はこのレイチェルだけだったのかもしれません。
この先、キムとアビー、いいえキムを取り巻く家族全員に、いつかきっと心が通い合う瞬間が訪れることを信じたいし、そう願わずにはいられない思いです。
そうなることが「可能」であること、それが「家族」なのだと思うから。
監督は本作について「世界で一番美しいホーム・ムービーとなった」と述べておられるそうです。
ハンディカメラで捉え続けたこの映画はドキュメンタリーのような仕上がりとなっていて、リアルであるが故にキムを取り巻く空気の淀みを痛いほどに感じ、また、祝宴の席ではレイチェルやキムと共にまるで自分自身までもがそこに集っているような感覚になっていきます。
そしてたとえ様々な苦悩や確執や葛藤が秘められていようとも、レイチェルの結婚式は本当に本当に素晴らしいものとして私の心に残りました。
映画の後は、遠来の友人含め4人集っての早い時間からの酒宴でした。
一軒目に訪れたのはベルギービールの専門店<梅田ドルフィンズ>です。
いろいろと飲み比べて、今回私が好きになったのはコレ、トラピストビールの<アヘル・ブロンド>です。

苦味と甘味の調和が素晴らしく、アルコール度数8度なのに爽やか感も残ります。
そういえば昨日集った4人は全員イニシャルがMでした。(イニシャルトークはできませんね。)
乾杯の度にグラスが触れ合う音は実に心地よいものでした。 楽しい時間をありがとう、3人のMさん。
本作は、今流行りのハンディカメラで撮られていたんですね。
予告編を観る限り、ハッピーエンドな映画だと思ってましたが
実母とキムの仲は最後まで完全に埋まることが無かったところに
興味を持ってしまいました^^
ゴールデン・ウィークになったら伏見ミリオン座に行ってみようと思います。
(ココの手作りブレッドが美味しいのよ)^^
>ハンディカメラ
はい。画面が幾度となくアップになったりズームしたり。
幾つもの会話や音楽や自然の雑音なんかも入っているような感じで、このような手法は本作については全く想定していなかったので凄く新鮮な作り方に感じられました。
>予告編を観る限り
そうなのです。私も初めは、もっとアン・ハサウェイのやんちゃ振りを出した“涙の後に笑顔”っていう作品で、これほど尾を引く作品だとは考えていませんでした。ラストは人によって感じ方はきっと違うと思いますが・・・。
もしご覧になられたら、itukaさんはどうお感じになるでしょうか。
>伏見ミリオン座
ああ、なんだかとってもいい響きの名前ですね。
知らない街の知らない劇場なのに、何処となく郷愁を誘う名前です。
「手作りブレッド」というのが益々よいですね〜。(*^_^*)
こちら(T松)では『ダイアンの選択』も『ウォッチメン』も『レイチェルの結婚』も上映されてないので、次第に凹んだり、不安になったりしてます(×_×)
唯一(?)喜ばしきは「BS2が受信出来た!」ってことかな?
ささやかな癒しです(=^_^=)
本作、アンハサのツッパリぶりが見もの? みたいに感じてますが、どうなのでしょう。
ふー、しかし何だか、全身がだるーい(×_×)
TiM3さん、こんばんは。
BS2のご観賞が叶っておめでとうございます!
ダイアナもレイチェルもウォッチメンもそのうちBS2に登場しますよ!・・・って、ちょっぴり先になるでしょうけれど、それはそれでよいではにでしょうか。
本作は、アン・ハサウェイが“人生ぎりぎりのところで綱渡り”をしていました。
お身体は大丈夫ですか?
ご移転のお疲れが出てきたのではないですか?
G.Wはご愛車でT松中を駆け巡られるご予定かも知れませんが、どうぞお身体も十分に休めて下さいませね。
改めてびっくり!
連休は「ちゃんと劇場で新作を観る」ためだけに大阪に戻ろうかしらん(=^_^=)>
マルコヴィッチのラジオ体操的動作(?)が気になりまする☆
そうなのです、あの『羊たち・・・』のジョナサン・デミ作品です!こういうテイストの違う作品も生み出せるお方なのですね。
>マルコヴィッチのラジオ体操的動作(?)
『バーン・アフター・・・』ですね。
鼻血出してるブラピも気になるところですが。(^_^)
>「ちゃんと劇場で新作を観る」ためだけに
それはそれで凄くカッコイイ過ごし方ですよね。
いやー、本当に結婚式に参列しているような気分になりましたよね。
ルメットの娘の脚本もまたお見事で、姉妹の間にある複雑な関係性、そこにある思いにハラハラドキドキ、心痛んだりの連続でした。
でも、ホント、ステキなウェディングでしたよね。
ガーデンパーティでずっと生演奏なんて最高ー
「ミルク」もぜひぜひご覧くださいましー
そうですね、デミ監督の手腕も勿論のことながら、脚本が自然な感じで見事だったのでしょうね。
>ハラハラドキドキ
観ている私まで“きまず〜い”感じの空気に包まれてしまい^_^;、ハンディカメラのズームや引きが繰り返されるのにも何やら心をかき乱される感じでした。
しかしこのウェディングパーティ―は、そんな心の負の部分を凌駕する?ハレ・パワーがありましたよね。胸が熱くなりました。
結構実際に活躍しているミュージシャンも出ていらしたみたいですね。鑑賞の着目視点は多岐に渡りそうな作品のようです。
『ミルク』・・・そうなんです。以前にスルーしたままになってしまってます。
こんなこっちゃアカンっ!(>_<) ショーン・ペンの演技も観ておかないと!
やっとこさ鑑賞できました^^
最後に三人で抱擁するところで
アビー「いいパンチだったわ」
キム「ママこそ!」
レイチェル「なになに?何があったの?」
こんな展開を期待したのですが、これだと作品全体が
軽くなってましたね^^;
ラストはアレで良かったのかもしれないと思いました。
後味は良くないですが、
キムに自分で答えを見つけるチャンスを与えたのだと解釈しました(゜ё゜)
>アビー「いいパンチだったわ」
>こんな展開を期待
はい。しかし、うんと時を経て、本当にそんな会話が交わされる時が来てもいいなぁって思います。(*^_^*)
ラストは・・・そうですね。
今はアレでよかったのかもしれませんね。
キムを送り出した後のレイチェルの“(彼女の中で)何かが変わった”という感じの表情が印象的でした。
みんな、自分で答えを見出して行くしかないのですものね。
そう,まさに傑作というよりは秀作,と呼ぶにふさわしい作品ですね。
静かにじんわりと感動するような・・・。
>家族って幸せの拠り所であると同時に苦悩の原点でもあるような気がします。
ほんとそうだわ〜
家族だから我慢してるってこともあるし
家族だから放り出せない,ってことも!
でもおっしゃるように,崩壊しても修復の可能性があるのも
家族ならではの機能なんですよね。
そういう複雑なテーマをひとつの結婚式を通して見せてくれた本作は
よく出来ていたと思います。
で,ベルギービールにも反応しちゃいました〜
外国のビールで一番好きなのがベルギービールなの。
トラピストのビールは味が濃くって美味しいですよね。
でも,田舎だから需要がないのか,最近行きつけの酒屋に置かなくなりました,ベルギービール(泣)
恋愛もそうでしょうけれど、「家族」のあり方って家族の数だけ違う形があると思うので、家族を題材にしたものにはつい興味を抱いてしまいます。「次はどんな“形”が提示されているんだろう」っていう感じで。
映画としての終わり方もいろいろで、終わり良ければすべて良しと思わせてくれるようなハッピーなものも勿論いいのですが、本作みたいに“可能性を秘めつつも複雑な空気を含んだまま”で終わり、観る者に委ねるっていう結び方もいろいろ考えさせられて見応えがありますよね。
>行きつけの酒屋
おお!このお言葉でななさんとの距離がまたぐっと縮まった気がして喜んでおります(*^_^*)。
好んでいたものが店頭からある日忽然と姿を消してるのって淋しいですよねー。
お店に声色変えて10回くらい連続で「ベルギービールありますか?」って電話してみるとか・・・同一人物とバレてもそこまでする必死さに気圧されて仕入れを再開してくれるかも・・・って、そういうおバカな事を考えるのは私だけでしょうね〜。失礼しました。^_^;