友人が貸してくれたDVDから一作。
『クワイエットルームにようここ』(松尾スズキ原作・監督)は、一昨年の公開時に見送ってしまってから遅れること一年、原作小説を買って読み、いつか映画を観てみたいと思っていた作品でした。公開から一年半、漸く鑑賞が叶いました。
原作も興味深く一気に読んでしまったけれど、映画もとても面白かったです。
原作の作者と映画化の監督が同一人物というのも、原作の世界をそのままに、映像化する上でのポイントも作品世界を壊すものではなかったと思います。
story
仕事も恋愛も微妙な28歳のフリーライター明日香(内田有紀)は、ある日、目が覚めると見知らぬ部屋にいた。そこは“クワイエットルーム”と呼ばれる隔離された閉鎖病棟で、ナースから薬物とアルコールの過剰摂取により運び込まれたと説明される。さまざまな問題を抱えた患者たちと出会う中、彼女は自身を見つめ直してゆく。(※story、作品写真ともシネマトゥデイより転載)

Overdose/オーヴァードース(過剰摂取)。
薬物のODは無いけれど、アルコールのODなら経験がある身としては、いつ目覚めた時にクワイエットルームに居て五点拘束されていても不思議はない私なのかもしれません。
薬の摂取とアルコールの摂取・・・両者は果てしなく似ている行為にも思えるし、何かに依存するということにおいては全く同じなのかもしれません。
だから、笑えるところはたくさんあるけれど人事には思えなくて笑えなかったです。勿論殆どがブラックな笑いの場面なのですけれね。
人は常に何かを抱えていて(大抵の人間はそうだと思います)、そのうちの何人かは地面のどこかに埋め込まれた地雷を不用意に踏んでしまって自爆してしまう・・・そんなことがあるのだと思います。
地雷は無差別に埋め込まれていたものもあれば、故意に、敢えてその場所に、埋められているものも(時には)あると思います。
もともと、電極か何かが身体に入ってるかなんかして(地雷的なものを)引き寄せちゃう人も居ると思います。
引き寄せちゃうキケンをはらんでいる人は、他者との関わりは慎重を要します。
他者との関わりが地雷に変わってしまう事だってあるからです。

明日香はそういう人だったのかも知れないなって思いました。
いいえ、明日香だけでなく、あの病院の閉鎖病棟に居た人たちは皆そう人だったのではないかと・・・。
だから、閉鎖病当からも更に隔離された“クワイエットルーム”は、本当は必要な個空間なのだと思いました。
そこで、他者の理念から隔離されて本当に自分を見つめることができるのではないかと・・・ただし、「拘束」は別ですけれどね。
でも勿論永遠にクワイエットルームに居ることはできない。
生きている限り、他者と関わって生きていかねばならないし、そうすることの“いい面”は一杯あるはずなのだから、多分。
でもその“いい面”を肯定的に受け止められるように、あの閉鎖された病棟もしくは隔離された部屋というのも、その前段階を準備しておくものとして「投薬」と同じ意味を持つものなのだろうなぁと思うのです。(くどいようですが、勿論「拘束」は違います。)
あそこは現実と魂の迷路を繋ぐ通路なのでしょう、きっと。
だから私はこの映画を観て、タイトルの「クワイエットルームにようこそ」の言葉を、何だか凄く優しい言葉に感じてしまいました。
ブラックな笑いが満ちているし、突然の“突き落とし”があったり見過ごせない人間の“負”の部分が容赦なく描き出されてはいるけれど、基本的に松尾スズキという人は優しい人で、且つ、もしかしたら彼自身も「(地雷を)引き寄せちゃうキケンをはらんでいる人」なのかもしれないなぁって思いました。

凹むことは大いにあります。
物語が「めでたしめでたし」の終息に向かって欲しい終盤にだって、油断していたらドンと後ろから背中を突かれて階段落ち・・・ってこともあったのですから。
それでも、明日香が前を向いて笑ってる姿が目に焼きついて終わる、そんな温かみの残る映画でした。
今読んでる本をちょっと中断して、またこの原作を読み返してみる積りです。あ、そしたらまた映画を観返してみたくなるかもしれません。暫くはどっぷり浸かりそうです。
病棟仲間のミキを演じる蒼井優ちゃんが凄いです。
彼女はミキの可愛いところ・クールなところ・弱いところ・ちょっとだけ意地悪なところ・ゾッとするほど怖いところ、そして何より、彼女が“孤独の極み”に居ることを、見事に表現していたと思います。女優さんとして拍手をおくりたいです。

そんなわけで、久し振りに飲んでみたくなって買ったチンザノ・ドライをロックで。
勿論“オーヴァードーズ”は無しで。
マトリョーシカがあそこでパカッと割れてたら・・
物語の進行も多少(=^_^=)変わっていたかも知れませんね。。
劇場鑑賞がなつかしいです。
先のコメント、名乗り漏れておりました。。
本作では、大竹しのぶさんの「あなどれなさ」も
なかなかでしたね(⌒〜⌒ι)
http://tim3.cocolog-nifty.com/blog/2007/11/post_22bd.html#comments
ここの「2007年11月 4日 (日)」にレビューがありますた。。
そうなのでしたね、かつてのTiM3さんのレヴューに(映画は未見ながら)コメントさせて頂いてたのですよね。(*^_^*) その節はあたたかいコメント返しをありがとうございました。
やっと鑑賞が叶いました!(*^_^*)
>大竹しのぶさんの「あなどれなさ」も
はい。患者・西野さんも確かにどす黒い怖さを感じさせて、演じた大竹しのぶさん、強烈でしたね。
コモノ君・・・名前の通りコモノのままで終わりましたが軽いノリがツマブキ君には却って合っていたのかもしれません(・・・と、ファンの皆様から殴られそうなコメントですね)。
クドカンはさすがの上手さでしたね。
そしてマトリョーシカが割れてたら・・・考えると怖いですねー。明日香の再生の旅立ちは拘置所通いになってたのでしょうか。
御記憶にあるか否か分かりませんが、金原さんが明日香に言った「(女優の)安達ゆみさんですよね?」の台詞は、原作では「伊藤かずえさんですよね?」でした。映画化に際して変えられたってこと、伊藤かずえさん御本人はきっとショックだろうなぁって思いました。
連休中の劇場鑑賞は叶わず、、とぼとぼと高松に戻って参りました(×_×)
>やっと鑑賞が叶いました!(*^_^*)
コングラです!
>患者・西野さんも確かにどす黒い怖さを感じさせて、
>演じた大竹しのぶさん、強烈でしたね。
ウィッグを着けたはるんでしたっけ、、
>ファンの皆様から殴られそうなコメントですね)。
どうにも和製フリーダでした(=^_^=)
>御記憶にあるか否か分かりませんが、
>金原さんが明日香に言った「(女優の)安達ゆみさんですよね?」の台詞は、
>原作では「伊藤かずえさんですよね?」でした。映画化に際して変えられたってこと、
>伊藤かずえさん御本人はきっとショックだろうなぁって思いました。
あ、そやったですか、、
私的には伊藤かずえさんの方が好きですけどね(⌒〜⌒ι)
かつてのトレンディドラマ『もう誰も愛さない』の最終回で
いきなり&あんまりな退場をされてたの懐かしいです(×_×)
今日からお仕事再開ですよね、T松からの「妄想配信」も再開ですね。(*^_^*)
>ウィッグを
はい、“ウィッグ・西野”でした。
それから、私も伊藤かずえさんのほうがよいです。
でも映画化に際して万人に分るように安達ゆみちゃんにしたのかなぁって…そんなふうに考えるとどうにも伊藤かずえさんが不憫でした。
『もう誰も・・・』って、吉田栄作さんが出てらしたドラマですよね。(観ていませんでしたが)
かずえさん、今はあまりメジャードラマでお見かけしませんものね。
”ポニーテールはふりむかない”観てました。(古っ!)
数年前かつてのコンビ(?)松村雄基と昼メロに出てはった気ィが・・・。
(観てたんかいっ!)(いやぁ、それほどでも・・)
>ポニーテールは・・・
>松村雄基と昼メロに
あ、どっちも観てません。先述の『もう誰も…』も観てませんし・・・。しゅん、ですね。
考えてみたら伊藤かずえさんのドラマって思い浮かびません。重ねて、しゅん。
イメージとしては、女優然とした振る舞いよりも明るく豪快にワハハハハと笑ってらした印象が残ってる女優さんです。どっちかというと“男前!”的な女性でしたね。…って、まだ生きてらっしゃるんですけどね。^_^;
ぺろんぱさんの人生が垣間見えるような
含蓄に富む読み応えのある文章ですね。
(勝手にスミマセン)
でも、オーヴァードースは映画だけにしましょうね、
お互いに。
>含蓄に富む
とんでもないです。拙人生、まだまだちっとも深淵に到達・・・いえ、触れてさえもいません。
“何かに臆病になる”みたいなところに同じ匂いを感じただけかも、登場人物に。(^_^;)
>オーヴァードースは映画だけに
はい。心がけます。
「お互いに」って仰るのは、もしかしてジョーさんもお酒がお好きなのでしょうか(^_^)。(←こちらこそ、勝手にスミマセン)