109シネマズHAT神戸にて『愛を読むひと』(スティーヴン・ダルドリー監督)を鑑賞しました。
決して“美しいだけじゃない”愛の形。
社会的ハンディを秘密裏に抱えて生きる一人の女性の、“望まなかったけれどそうなってしまった”人生の形。
誰かを深く愛し過ぎたゆえの喪失感で“自らの未来に望みをも見失ってしまった”一人の男性の人生の形。
両者の狭間に深く横たわるナチス支配体制の罪と罰の形、、、そんなのが見えた気がした。

story
1958年のドイツ、15歳のマイケルは21歳も年上のハンナ(ケイト・ウィンスレット)と恋に落ち、やがて、ハンナはマイケルに本の朗読を頼むようになり、愛を深めていった。ある日、彼女は突然マイケルの前から姿を消し、数年後、法学専攻の大学生になったマイケル(デヴィッド・クロス)は、ナチス親衛隊として無期懲役の判決を受けるハンナと法廷で再会する。 (※story、作品写真ともシネマトゥデイより転載)
かくも長き関わり合い。
出会いと別れは人生において定石であっても、ハンナが自らの身の自由と引き換えにでも守り通したかった秘密と、ナチのホロコーストに対するハンナとマイケルの根本的な見解の相違が、その定石を複雑極まりないなものにしてしまったのだね。と同時に、二人の間に目には見えない深い溝をつくってしまったのだ、とも。
一度ああまで貪欲に互いの肉体を求め合った男女でも、埋められない感情の隔たりが一瞬のうちに生じることはあるのだ。
最後にハンナが取ったあの行動は、彼女の最後のプライドと彼女が自身の人生に着けた決着だったのだと思う。
ハンナがハンディを克服すべく獄中で為した努力とその成果を慮るに、あの決着はあまりに哀しすぎたと思う。けれど、そんなふうに、深く関わり合いながらも結局は何処へも辿り着けない男女というのはこの世に存在するのだろう。

ホロコーストへの鋭い切り込みも興味深かった。
ナチスの頂点にいたヒトラーの名は出てこない。ホロコーストは、ナチスに関わった全ての人間の「個」の中に存在する“善ではない部分”と“弱き部分”が一つの大きなうねりとなって為した結果だと…それら全て、一つ一つを「合法か非合法か」で裁き切れるものではないのだと、そう言っている気がした。 そしてそれは、何より“起こってしまったこと”なのだ。(生き残ったユダヤ女性の終盤での語りは、最も近い位置にいた当事者として史実を語った率直な思いだったと思う。)
物語は、ハンナとの出会いで人生が大きく変わってしまったマイケルの視点で綴られていくが、ケイトが渾身で演じたハンナの“ハンディを背負っているが故の”何ものにも阿らない毅然とした生き様が、物語を超えて我々の心に大きな存在感を残したといえるだろう。
それだけに、ハンナがかたくなに守り抜いた彼女の秘密を、ラスト、マイケルが娘に語り伝えようとしたのは全てを過去のものとして流すようで少なからず淋しい思いがした。

ケイト・ウィンスレットはやはり好きな女優だし、本作で改めてレイフ・ファインズ(時を経て後のマイケル役)を魅力的だと感じた。
ブルーノ・ガンツが出ていたのもサプライズで嬉しかったなぁ・・・(勿論、本作ではヒトラー役ではなかったよ)。
若き頃のマイケルがハンナを伴って自転車の旅に出るところは、胸がきゅーっとなるくらいに哀しくて素敵だった。

暫くの間ブログをお休みします。
映画鑑賞の際は鑑賞作品名の記録だけでも記載予定です。また、皆さんのブログにはお伺いしてコメントも入れさせて頂くつもりです。

そして拙ブログ再開の際は、またどうぞ宜しくお願い申上げます。
本作、監督名を貴ブログで改めて知り、
「観ようか!」と考え始めてます。
>暫くの間ブログをお休みします。
>映画鑑賞の際は鑑賞作品名の記録だけでも記載予定です。
>そして拙ブログ再開の際は、またどうぞ宜しくお願い申上げます。
あら、残念です(×_×)
でもまた、ステキなブログを再開下さいね。
いつまでもお待ち申し上げております☆
おー!そうでしたね! たしかTiM3さんは同監督の『リトルダンサー』も『めぐりあう・・・』も
両方ともご覧になったのですよね!私は『めぐりあう・・・』のみです。
本作もよければご覧になってみて下さい。
>いつまでもお待ち
ありがとうございます。
早く再開できるようになればいいなぁと思っています。
映画の鑑賞も、叶うならば取り敢えずは、現・カリフォルニア州知事の昔日のお姿?を拝見しに行かねば!と思っておりまする。(*^_^*)
なんていうか、理屈じゃなくこちらの感性に響く様な
映画で今、余韻を楽しんでいます。
原作も読みたくなりました。
ぺろんぱさんのレヴューをしばらく拝見できないのは残念だけど、
また稚ブログにもおいでくださいませ。(=^_^=)
鑑賞して参りました!
前半の雰囲気がとても良かっただけに、だんだんドンヨリして行く作品世界が、残念ではありました。。
終盤ではレナ・オリンさんが存在感を発揮し過ぎてますた!
あのしと、こはひ!(=^_^=)
いつも楽しみに拝見しておりましたのに
でも 続けるのも結構大変ですものね〜
お疲れ様でした
充電後ぜひ再開してください
待っています
せっかくお近づきになれたばかりなのに・・・と
愚痴を言ってはいけませんね。
寂しいですが,お帰りを首を長くしてお待ちしてます。
さて,この映画ですが,なんともいえず切なく感動しました。
鑑賞後はマイケルの気持など考えてモヤモヤしていたんですが
ぺろんぱさんの記事を拝読して納得しました。
>深く関わり合いながらも結局は何処へも辿り着けない男女・・・・
そっかぁ,このなんとも言えない切なさは,そのせいか!
年齢差,階級差,教養の差・・・、二人の間を阻むものはもともとたくさん存在してたけど
やはり決定打は,ナチスの罪に関しての意識のズレでしょうね・・・
釈放前の二人の面会シーンの会話や表情を観ていて
互いをこんなに思いやりながらも,決して完全には理解し合えない二人の間の空気が
とっても切なかったです。その後の彼女の行動も。
私も時折幾つかのシーンが甦っていまして、原作を読んでみたくなっています。
今は『重力ピエロ』を読んでいますので、終われば手に取ってみようと思っています。
カムバックの際には宜しくお願い致しますね。(意外とカムバックが早かったら恥ずかしいですが・・・。^_^;)
本作の記事は勿論のこと、今後のゆるりさんのレヴューも楽しみに、時折お邪魔させて頂きますね。(*^_^*)
先程ちらとお邪魔させて頂きました。
後ほどゆっくりと拝読のうえ、コメ入れさせて頂きたく思っています。
>だんだんドンヨリして
私はその後半部の世界にむしろ惹かれたのですが・・・。
私の心がドンヨリしているのでしょうか・・・^^;。
>終盤ではレナ・オリンさんが
あのシーンのあの語りは、息継ぎを忘れるくらいにスクリーンに釘付けになってしまった感じでした。あの眼差し・・・いかなる反論(反論などあり得ぬ論でしたが)をも阻むものがありましたね。
The Lonely Oneさん、こんばんは。
ありがたいお言葉ありがとうございます。
ブログの更新自体は楽しみでもありましたが、ちょっと事情があっての“いっときのお休み”です。
あ、けれど休んでいるうちに放電してしまうかもしれませんね!(実はそれが怖い・・・^^;)
でも再開の節はどうぞまたお越し下さいませね。
ななさん、こんばんは。
ありがとうございます!
ではななさんの首が伸びてしまわないうちになんらかの形で再開させて頂かねば!(*^_^*)
お休み中も近いままでいて下さいよ〜、お願い致します。(^^)
一度関わってしまったこの二人。一方的に去られたことで、どっちかといえばマイケルの方がずっとずっと引きずっていたのでしょうね。
再会後の彼の心中での葛藤は如何ばかりであったかと思います。
テープを送りながらも手紙を添えなかったり面会にも行かなかったり、ずっと彼の心の中では彼女の全てを許して受け入れられるか否か、せめぎ合いが続いていたんではないかと。
切ないですね。
お言葉嬉しいです。
itukaさんのレヴュー、やっと久々にコメントさせて頂ける題材に出会いました。後ほどお伺いしたく存じます。
お休み中も貴レヴューを楽しみにしておりますよ〜(*^_^*)。
ブログを暫くお休みされるのですね。(ToT)
かなり淋しいですが、再開されるとのことで安心しました。
実は私の方も、暫くは鑑賞メモ程度の記載になるかと・・・
復活の日には、またアレコレお話させてくださいね?
楽しみにしています♪
さて映画についてですが、先日ターミネーターと梯子で観てきました。
ケイト、レイフ・ファインズ、デヴィッド君が素晴らしいですね。
少ない台詞ながら表情で見せる心の推移は絶妙!
鑑賞後は押し寄せる切なさで泣くに泣けない状態に陥り、
モヤモヤした想いを抱えて劇場を後にしたんですが
ななさんと同じく、ぺろんぱさんのレビューを拝読して納得!(感謝です)
>何ものにも阿らない毅然とした生き様が、物語を超えて我々の心に大きな存在感を残したといえるだろう
まさにその通りだと思います。
自転車の旅のシーンも本当に胸がキューッとなりましたね。
重力ピエロ同様、これも原作を読んでみたいと思います。
この映画の原作「朗読者」はいいですよ。
美しい文章です。
気持ちが、入り込みました。
ドイツでは、教書的小説らしいです。
ぺろんぱさんの文章よみたいですよ。!
まっています。
あたたかいお言葉をありがとうございます。
復活の日(←懐かしい(*^_^*)、この映画、観に行ったんです。)にはこちらこそどうぞ宜しくお願い致します。
Anyさんも暫くはレヴューをコンパクトにされる由、それでも貴記事アップを楽しみに致しておりますよ!
配役が良かったですね、本作。
ケイトには何故か惹かれます。
感謝だなんて勿体ないです!
いつもレヴューをアップし終えた後でも、「でもそうじゃなかったかなぁ・・・」とか自分の書いたことに自信の持てない私です。
本作については、“重なりつつもやっぱり一つにはなれない哀しさ”を感じました。
私も原作を読んでみたく思っています。
T−4は私も先週末に観てきました。(^_^)
鑑賞記録だけでもそのうちアップしたいと思っています。
「朗読者」、是非読んでみます。
“美しい文章”というご表現に惹かれるところ大です。
あたたかいお言葉も本当にありがとうございます。(*^_^*)
是非またkeyakiyaさんに拙ブログにお越し頂けるよう頑張ります。
ブログ休止はかなり寂しいです。
お帰りをお待ちしてます…。
お言葉、ありがとうございます。
少し前に観た『T−4』を真似て「I'll be back!」と言いたいところですが、あんなにカッコいいもんじゃないですね。^_^;
そう遠くなく再開したいと思っています。その時はどうぞ宜しくお願いいたします。
そして....ぺろんぱさんのこの記事をみて「愛を読む人」も観たくなりました。どっちをさきにしようか???
PS ここでしばらくお休みの宣言しておられてのですね。気づきませんでした。
一緒の時期にはじめた映画のブログ、ぺろんぱが戻られるのを、首を長〜〜くして待っています。
映画の後から『朗読者』も読み終えましたが、どちらにも其々の良さを感じました。
原作の、行間に秘められた深い思いに静かに感動し、原作で淡々と綴られていたところが映画では膨らみを持った丁寧さで描かれていたり。
どちらが先になるかで、もしかしたら微妙に感じ方は変わるかもしれませんが、どちらもお楽しみ下さいね。
暫くのお休み、近いうちに再開できればと思っています。
またどうぞ宜しくお願い致しますね。
男の子の思い、同感しました。
この本で日本人とドイツ人色々違うなぁという思いがありました。私たちは戦争に関してどう対応しているのだろうか?と疑問も。
映画は機会があれば拝見したいと思います。本で感じたあの自転車のシーンを観たいです。
>男の子の思い
男の子の心は、真には男の子にしか分り得ないのかも、ですね。
自転車のシーンを、是非ご覧くださいね。
後に迎える二人の行方を知っているだけに、今は深い「哀」の心を抱いて反芻してしまうシーンです。
ドイツ人と日本人は気質が似ているって言われますが、そうでもないのでしょうか。民の気質は経てきた歴史が作るのだとしたら、やはり他国との違いは大きいのかも知れません。
認識度合いにブレがあるという点も否めないのではないでしょうか。
そう言うことを考える機会を得たことも、映画がもたらせてくれた「功」なのですね。